JRC蘇生ガイドライン2020
救急蘇生の現場で奮闘するすべての人へ
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日本蘇生協議会による救急蘇生のガイドラインが、5年ぶりに改訂された。編集委員会、作業部会による徹底した議論によって検討され、まとめられた本書は、蘇生現場のコンセンサスとしてまさに必携の書。すべてGRADEによる評価を採用した国際基準のガイドライン。
新たに「妊産婦の蘇生」「海外での課題」の章を追加し、補遺にはCOVID-19への対応をまとめた。
監修 | 一般社団法人 日本蘇生協議会 |
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発行 | 2021年06月判型:A4頁:532 |
ISBN | 978-4-260-04637-4 |
定価 | 5,500円 (本体5,000円+税) |
更新情報
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2022.01.07
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2021.09.10
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2021.07.15
- 序文
- 目次
- 書評
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序文
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序言
5年に1回のJRC蘇生ガイドラインの改訂が無事終了し,刊行に至ったことに関係者の方々のCOVID-19蔓延下でのご尽力に深謝したい.日本蘇生協議会(Japan Resuscitation Council:JRC)は,JRC蘇生ガイドライン2020のパブリックコメント用のドラフト版の一部(急性冠症候群)を2020年10月22日に国際蘇生連絡委員会(International Liaison Committee on Resuscitation:ILCOR)の心肺蘇生に関わる科学的根拠と治療勧告コンセンサス(International Consensus on Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care Science With Treatment Recommendations:CoSTR)2020とともに同時発表した.本来は,全ての作業部会のドラフト版を発表する予定であったが,COVID-19による感染対策のため,多くの作業部会員が対策の第一線で懸命な診療にあたり,ガイドライン作成の作業が遅延した.それでも遅々たる作業であったが3月末には全てのドラフト版が揃い,多くのパブリックコメントをいただき修正作業を行い,ここに最終版である書籍版が完成した.
蘇生ガイドラインはエビデンスに基づき国際標準化された世界でも数少ないものであり,それにはILCORのこれまでの活動によるところが大きい.ILCORは2005年にCoSTRを発表し,このCoSTRに基づき,各地域や国の実情に合わせてガイドラインが作成された.その後ILCORとその参画蘇生協議会は5年ごとにCoSTRとガイドラインを発表してきた.
わが国の心肺蘇生の普及には,欧米の取り組みに比べて約30年の遅れはあったが,進歩はめざましく,その遅れを取り戻し,海外をリードする領域も見られるようになった.その要因には,JRCの設立,日本を中心としたアジア蘇生協議会(Resuscitation Council of Asia:RCA)の設立とILCORへの加盟,CoSTR作成への関与,市民への自動体外式除細動器(AED)使用の解禁などの蘇生活動による救命意識の向上,さらには地域ウツタイン登録から全国登録による院外心停止大規模データベース解析からの国際発信,またそれを支える科学研究費による支援,そして体温管理療法や胸骨圧迫のみのCPRに関するわが国からの発信などが挙げられる.これらの活動をもとに,わが国においても2010年,2015年と国際連携による世界標準のJRC 蘇生ガイドラインを作成することが可能となった.
2017年にILCORは迅速な対応をするため方針を以下のように変更した.
重要なトピックごとにエビデンスの網羅的検索(SysRev)と評価が行われ,その結果は,解析チームによりその都度論文化し,作業部会(タスクフォース)によりCoSTR作成が行われる.1年ごとにCoSTR集として発表されることになり,5年を待つのではなく重要なトピックについて迅速な推奨と提案がなされることになった.このILCORによるCoSTR発表を受けて,その都度ガイドラインを改訂する(update)方法と,これまでどおり5年ごとに改訂する方法のいずれを選択するのかは各国あるいは各地域の蘇生協議会の判断に委ねられることになった.また2015年から採用された国際的なガイドライン作成方法であるGrading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation システム(以下GRADE)は継続して使用され,本ガイドライン作成にもGRADEを使用した.
JRCは,RCAの方針に沿ってその都度のCoSTRを翻訳し,内容についてJRCの解釈を加え,ガイドライン変更の必要性をホームページで公開することとした.その理由として,ガイドラインの作成とその実践にかなりの時間,努力およびリソースが必要であること,また,ガイドラインの頻繁な変更によって生じる可能性のある混乱を考慮した.最終的にはこれまでどおりJRCガイドラインの発刊は5年ごとに行うことにし,今回のJRC蘇生ガイドライン2020作成に至った.
ILCORではふれられていないが,脳神経蘇生,急性冠症候群を2015年に引き続いて取り上げ,さらに今回から妊産婦蘇生を加えた.
本ガイドラインを,わが国での救命率のさらなる向上のために,蘇生科学の進展,市民と医療従事者への救急蘇生の標準化と普及啓発に役立てていただくことを切望する.COVID-19感染対策で多忙を極める中,日夜問わずガイドライン作成にご尽力いただいた,編集委員をはじめとした作成委員の先生方,外部評価をいただいた学会からの専門委員,市民代表委員,法律家,利益相反委員,御指導いただいたGRADEワーキンググループのメンバーである相原守夫先生はじめGRADEエキスパートの先生方,またGRADE Tokyo CenterとなったMINDSの先生方のご指導に感謝申し上げる.この間,作成支援を日夜いただいた医学書院の方々に,またJRC 事務局として長年支えていただいた公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院の五十嵐久美子様に深謝する.
2021年6月
一般社団法人日本蘇生協議会代表理事
JRC蘇生ガイドライン2020作成編集委員長
野々木 宏
目次
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序文
1 JRC(日本版)ガイドライン2020までの作成経過
2 わが国の心停止の状況
3 JRC蘇生ガイドライン2020の特徴:救命の連鎖と各作業部会の概要
4 今後の課題
5 利益相反(COI)管理委員会の設置とCOI管理について
JRC蘇生ガイドライン2020作成の方法論
略語一覧
第1章 一次救命処置(BLS)
1 はじめに
2 BLSのアルゴリズム
3 アルゴリズムの科学的背景
4 異物による気道閉塞の解除
第2章 成人の二次救命処置(ALS)
1 はじめに
2 心停止アルゴリズム
1 はじめに
2 一次救命処置(BLS)
3 二次救命処置(ALS)
4 ROSC後のモニタリングと管理
3 気道と換気
1 基本的な気道確保と換気
2 心停止中の高度な気道確保
3 気管チューブの気管内留置確認
4 気道確保下の換気
4 循環
1 胸骨圧迫
2 薬物
3 体外循環補助を用いたCPR(ECPR)
5 電気的治療
1 CPRと電気ショック
2 VFと無脈性VTへの除細動戦略
3 波形とエネルギー量
6 特殊な状況下の心停止
1 溺水による心停止
2 肺血栓塞栓症による心停止
3 オピオイド中毒
7 心拍再開後の集中治療
1 呼吸管理
2 循環管理
3 ROSC後のPCI
4 体温管理療法(TTM)
5 ROSC後のてんかん発作の予防と治療
6 その他の治療法
8 予後評価
1 心停止中の生理学的予後評価
2 ROSC後の神経学的予後評価
9 2020年未評価のトピック
第3章 小児の蘇生(PLS)
1 はじめに
2 院外心停止の防止
3 院内心停止の防止
4 小児の一次救命処置(pediatric basic life support:PBLS)
5 小児の二次救命処置(pediatric advanced life support:PALS)
6 徐脈・頻拍への緊急対応
7 特殊な状況
8 ショック
9 体外循環補助を用いたCPR(ECPR)
10 ROSC後の集中治療
11 予後判定と原因検索
12 2020年に見直されなかった項目
第4章 新生児の蘇生(NCPR)
1 はじめに
2 2020年版NCPRアルゴリズム
3 新生児蘇生の流れ
4 検討された22のトピック
5 今回の改訂で検討できなかった重要なトピック
第5章 妊産婦の蘇生(Maternal)
1 はじめに
2 2020年版妊産婦蘇生アルゴリズム
3 レビューが行われた妊産婦蘇生のトピックス
第6章 急性冠症候群(ACS)
1 はじめに
2 ACSの初期診療アルゴリズム
3 ACS診療システムへの病院前からの介入
4 ACSへの病院前の処置
5 ACS診断のための心筋バイオマーカー
6 再灌流療法に関するSTEMIの治療戦略
第7章 脳神経蘇生(NR)
1 はじめに
2 脳神経蘇生への病院前からの介入
第8章 ファーストエイド(FA)
1 はじめに
2 急な病気に対するファーストエイド
3 急なけがに対するファーストエイド
4 JRC蘇生ガイドライン2020で見直さなかったCQ
第9章 普及・教育のための方策(EIT)
1 はじめに
2 教育効果を高めるための工夫
3 普及と実践,チーム
4 救命処置に関する倫理と法
第10章 海外での課題
1 はじめに
2 CoSTR2020で検討されたCQ
補遺 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策
1 COVID-19感染リスク
2 COVID-19流行期の心停止対応
索引
書評
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心肺蘇生のバイブル『JRC蘇生ガイドライン』
書評者:小林 欣夫(千葉大大学院教授・循環器内科学)
心肺蘇生は待ったなしです。心肺蘇生の開始が1分遅れるごとに救命率が10%低下すると報告されています。このために的確な心肺蘇生を行い,命を救わなくてはなりません。しかしながら,それだけでは不十分です。命を救うとともに,高次脳機能障害などを起こさせない,またはなるべく軽くしなくてはなりません。このために心肺蘇生を行う人の技量・知識が非常に重要です。
日本蘇生協議会(JRC)は,医学系の18の学術団体と救急・蘇生教育を推進する関連5団体の計23団体で構成されている救急蘇生科学に関するプロフェッショナル集団です。2002年に設立され,心肺蘇生法に関する世界的なガイドライン作成の日本の窓口として国際蘇生連絡委員会に参画しています。国際蘇生連絡委員会は蘇生関連のトピックに関してエビデンスを網羅的検索・解析し,国際的なガイドライン作成方法であるGRADEシステムを用いてガイドラインを作成しており,これは国際標準となっています。日本蘇生協議会もこれに基づいて2010年,2015年にガイドラインを作成し,この度5年ぶりの改訂版の出版となりました。
一次救命処置(BLS),二次救命処置(ALS)はもちろんのこと,一般の医療者においては馴染みの少ない新生児,小児,妊産婦の蘇生も詳細に記されています。蘇生領域で非常に重要な急性冠症候群,脳神経蘇生の項目も充実しています。また,ファーストエイド,普及・教育のための方策,さらには昨今問題となっている新型コロナウイルス感染症への対策まで,蘇生領域の全てが網羅されています。
本書は一目でわかる非常に実用的な蘇生のアルゴリズムが,それぞれの状況ごとに示され,アルゴリズム内の項目ごとに詳細な解説がなされています。また,臨床の現場で問題となることがクリニカルクエスチョンとして提示され,これに対する推奨と提案が記載され,引き続きエビデンス,JRCの見解,今後の課題が示されています。救急蘇生の全てが理解できる,最新の国際標準の蘇生ガイドラインです。
本書は蘇生のバイブルとして,初学者からエキスパートまで幅広く役立つものであります。わが国における救命率の向上のために,一般市民,医療関係者における心肺蘇生の標準化・普及啓発のために,多くの方に本書をご活用していただけることを望んでいます。
正誤表
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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。