国際看護学入門 第2版
国際看護を広く、そして具体的に知る1冊
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21年ぶりの改訂。在日外国人・訪日外国人の増加に伴い、国際看護学が途上国で看護活動をするためだけではなくなったことを反映しつつ、初版同様、執筆者らの経験に基づく実践的な内容が盛り込まれている。また、生活に焦点を当てた看護の視点から展開される国際看護を十分に記しており、看護職者にも看護学生にも、さらに海外でも国内でも役立つだろう。
編集 | 日本国際看護学会 |
---|---|
発行 | 2020年08月判型:B5頁:228 |
ISBN | 978-4-260-04078-5 |
定価 | 3,080円 (本体2,800円+税) |
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- 目次
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序文
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第2版のまえがき
初版の発行から21年が過ぎ,このたび念願の改訂版発行の運びとなりました。1999年以来14刷までの増刷の際には,できるだけ新しい内容を掲載したいと少しずつ修正を重ねてきましたが,その間の国際看護と関連分野の発展に十分対応しきれていませんでした。
国際協力活動に参加する看護職は増え続け,世界の共通目標(持続可能な開発目標:SDGs)の達成を意識しながら技術協力や緊急援助に従事してきました。在日外国人および訪日外国人数は急増し,医療機関での外国人対応の必要性が高まってきました。経済連携協定(EPA)などにより,日本で看護師として働くことを目指してアジア諸国から看護師候補者が入国し,日本の看護師が外国人看護師と協働する機会が増えました。もはや国際看護学は途上国で看護活動をするためだけに必要な分野ではなくなりました。このような変化を反映し,看護学校や看護系大学では保健師助産師看護師養成所指定規則の改定を踏まえて国際看護に関するさまざまな内容を教授するようになりました。
初版の編集を担った国際看護研究会も国際看護学の発展のためには学会化が必要であると考え,設立から21年経過した2017年4月に日本国際看護学会として再出発しました。日本国際看護学会が第2版の編集を担当し,引き続き国際看護学発展のけん引役を務めることができたのは望外の喜びです。
本書の初版は,将来は国際協力活動に携わりたいと願う看護職者を念頭に作成されましたが,国際看護学の体系的な理解のために教科書としても使えるようにと総論,対象論,方法論に分けた構成となっており,第2版もそれを踏襲しています。また,本書は看護職者のみによって書かれたため,一貫して看護の視点が貫かれていることが大きな特徴です。
改訂の機会を与えてくださった医学書院の皆様,なかでも初版の企画段階から一貫して見守ってくださった北原拓也氏,初版からかかわり改訂への道を切り開いてくださった藤居尚子氏,改訂版編集・制作をじっくり担当してくださった木下和治氏,内田純氏,そしてすべての執筆者の皆様に厚くお礼申し上げます。
2020年6月
日本国際看護学会を代表して
理事長 森 淑江
初版の発行から21年が過ぎ,このたび念願の改訂版発行の運びとなりました。1999年以来14刷までの増刷の際には,できるだけ新しい内容を掲載したいと少しずつ修正を重ねてきましたが,その間の国際看護と関連分野の発展に十分対応しきれていませんでした。
国際協力活動に参加する看護職は増え続け,世界の共通目標(持続可能な開発目標:SDGs)の達成を意識しながら技術協力や緊急援助に従事してきました。在日外国人および訪日外国人数は急増し,医療機関での外国人対応の必要性が高まってきました。経済連携協定(EPA)などにより,日本で看護師として働くことを目指してアジア諸国から看護師候補者が入国し,日本の看護師が外国人看護師と協働する機会が増えました。もはや国際看護学は途上国で看護活動をするためだけに必要な分野ではなくなりました。このような変化を反映し,看護学校や看護系大学では保健師助産師看護師養成所指定規則の改定を踏まえて国際看護に関するさまざまな内容を教授するようになりました。
初版の編集を担った国際看護研究会も国際看護学の発展のためには学会化が必要であると考え,設立から21年経過した2017年4月に日本国際看護学会として再出発しました。日本国際看護学会が第2版の編集を担当し,引き続き国際看護学発展のけん引役を務めることができたのは望外の喜びです。
本書の初版は,将来は国際協力活動に携わりたいと願う看護職者を念頭に作成されましたが,国際看護学の体系的な理解のために教科書としても使えるようにと総論,対象論,方法論に分けた構成となっており,第2版もそれを踏襲しています。また,本書は看護職者のみによって書かれたため,一貫して看護の視点が貫かれていることが大きな特徴です。
改訂の機会を与えてくださった医学書院の皆様,なかでも初版の企画段階から一貫して見守ってくださった北原拓也氏,初版からかかわり改訂への道を切り開いてくださった藤居尚子氏,改訂版編集・制作をじっくり担当してくださった木下和治氏,内田純氏,そしてすべての執筆者の皆様に厚くお礼申し上げます。
2020年6月
日本国際看護学会を代表して
理事長 森 淑江
目次
開く
I 総論
1 国際看護の概念
a 国際協力と国際看護
b 国際協力の目指すもの
c 世界のなかで看護職の果たす役割
d 国際看護に必要な視点
2 国際看護と異文化看護
a 異文化看護の視点
b 異文化看護における文化についてのアセスメント
c 異文化看護の理論
3 なぜ国際看護が必要とされるのか
a 世界のなかのさまざまな格差
b 国際看護の必要性
4 国際協力と開発の思想
a 日本が受けた援助
b 開発とは何か
c 国際協力と開発思想の変遷
5 日本の看護職による国際協力
a 第2次世界大戦以前の歴史
b 第2次世界大戦以後
II 対象論
1 世界の人々の健康にかかわる諸要因
a 国際看護における対象のとらえ方
b 人口学的要因
c 生物学的要因
d 文化的要因
e 社会的要因
f 環境要因
2 保健医療の現状と分析
a 母子保健
b 地域保健
c 感染性疾患
d 非感染性疾患
3 保健医療の現状への対策
a プライマリヘルスケア
b ヘルスプロモーション
c 保健医療制度
d 国際協力にかかわる機関
4 災害と難民
a 災害
b 難民
III 方法論 基本編
1 国際協力に一般的に必要とされる能力
a 国際協力という仕事
b 異文化への対応
c コミュニケーション能力
d マネジメント(管理)能力
2 途上国で必要とされる看護の知識技術態度
a 途上国における看護の概念と看護職の役割
b 要請される活動に必要な知識技術態度
3 文化の違いを考慮した看護
a 異文化看護の2つの側面
b 基本的な看護技術
c 発熱の看護─ミクロネシアの病院で─
d 産育習俗(慣習や生活様式)と看護
e 伝統医療や信仰と看護
4 地域での看護活動
a プライマリヘルスケアとヘルスプロモーション
b 地域での活動の概要
c 母子保健
d 感染性疾患
e 非感染性疾患
IV 方法論 応用編
1 技術協力
a 地域
学校保健
b 病院
c 看護教育
d 政策
2 緊急援助
a 災害支援
事例:兵藤悦子
b 難民支援
3 在日外国人の医療と看護
a 在日外国人と訪日外国人
b 在日外国人の健康問題
c 在日外国人と災害
d 外国人への具体的対応
医療通訳
4 在外日本人の医療と看護
a 在外日本人の現状
b 在外日本人の健康問題と看護
5 外国人看護師との協働
a 看護師の国際的移動
b 外国人看護師との協働のための配慮と調整
6 調査研究評価
a 参加型アクションリサーチ─住民とともに変化をもたらすための調査研究
b プロジェクトサイクルマネジメント─プロジェクトの計画評価
c ロジックモデル
付録 国際協力にはどのような道があるか
索引
1 国際看護の概念
a 国際協力と国際看護
b 国際協力の目指すもの
c 世界のなかで看護職の果たす役割
d 国際看護に必要な視点
2 国際看護と異文化看護
a 異文化看護の視点
b 異文化看護における文化についてのアセスメント
c 異文化看護の理論
3 なぜ国際看護が必要とされるのか
a 世界のなかのさまざまな格差
b 国際看護の必要性
4 国際協力と開発の思想
a 日本が受けた援助
b 開発とは何か
c 国際協力と開発思想の変遷
5 日本の看護職による国際協力
a 第2次世界大戦以前の歴史
b 第2次世界大戦以後
II 対象論
1 世界の人々の健康にかかわる諸要因
a 国際看護における対象のとらえ方
b 人口学的要因
c 生物学的要因
d 文化的要因
e 社会的要因
f 環境要因
2 保健医療の現状と分析
a 母子保健
b 地域保健
c 感染性疾患
d 非感染性疾患
3 保健医療の現状への対策
a プライマリヘルスケア
b ヘルスプロモーション
c 保健医療制度
d 国際協力にかかわる機関
4 災害と難民
a 災害
b 難民
III 方法論 基本編
1 国際協力に一般的に必要とされる能力
a 国際協力という仕事
b 異文化への対応
c コミュニケーション能力
d マネジメント(管理)能力
2 途上国で必要とされる看護の知識技術態度
a 途上国における看護の概念と看護職の役割
b 要請される活動に必要な知識技術態度
3 文化の違いを考慮した看護
a 異文化看護の2つの側面
b 基本的な看護技術
c 発熱の看護─ミクロネシアの病院で─
d 産育習俗(慣習や生活様式)と看護
e 伝統医療や信仰と看護
4 地域での看護活動
a プライマリヘルスケアとヘルスプロモーション
b 地域での活動の概要
c 母子保健
d 感染性疾患
e 非感染性疾患
IV 方法論 応用編
1 技術協力
a 地域
学校保健
b 病院
c 看護教育
d 政策
2 緊急援助
a 災害支援
事例:兵藤悦子
b 難民支援
3 在日外国人の医療と看護
a 在日外国人と訪日外国人
b 在日外国人の健康問題
c 在日外国人と災害
d 外国人への具体的対応
医療通訳
4 在外日本人の医療と看護
a 在外日本人の現状
b 在外日本人の健康問題と看護
5 外国人看護師との協働
a 看護師の国際的移動
b 外国人看護師との協働のための配慮と調整
6 調査研究評価
a 参加型アクションリサーチ─住民とともに変化をもたらすための調査研究
b プロジェクトサイクルマネジメント─プロジェクトの計画評価
c ロジックモデル
付録 国際協力にはどのような道があるか
索引
書評
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国際看護を総合的に学べる1冊
書評者: 二見 茜 (東医歯大病院助教・総合診療科)
グローバルに活躍する看護職のためのバイブルである,『国際看護学入門』の待望の第2版が初版から21年を経て発刊された。
著者の先生方は,看護大学の教育カリキュラムで国際看護学が必修化されるずっと前から,国内外で貧困や難民など社会的弱者と呼ばれる人たちの支援に取り組んでこられ,日本の国際看護の発展を担ってきた。
今回の改訂では内なる国際化にも目を向け,在日外国人,紛争や迫害を受けて日本に逃れてきた難民,災害時の被災者の支援に関する項目が追加された。在日外国人,訪日外国人の増加に伴い,日本全国どの地域の病院であっても,外国人患者が受診し,看護ケアを提供する時代になった。海外での医療支援に関心がないという看護師でも,日本の病院で外国人患者に対応し,言葉の壁,多様な文化や宗教,生活習慣に配慮した看護ケアを提供することになるだろう。
日本国内でも,海外でも患者に最も近い存在である看護師は,患者の多様な価値観や文化,生活習慣を理解するよう努め,できる限り尊重する姿勢を持つことが重要である。本書では,対象者の生活や文化を大切に尊重し,看護師の視点で生活モデルから国際看護のプロジェクト展開について詳細に説明されている。
例えば,本書で紹介されている伝統医療・民間療法(アーユルヴェーダや中医学など)では,西洋医学とは異なる人体の理解,病気の説明の理論があり,その活動は社会的に認知されており,医師養成機関も確立しているのだという(本書p.49より)。このような多様な医療のあり方を知ることは,看護師としての視野を広げ,海外での医療活動のみならず,日本の医療機関を受診する外国人患者の生活背景や患者にとっての理想の医療を理解する上でも役立つだろう。
評者が本書の中で特に好きなところは,海外の医療支援の現場での経験を基に書かれたエピソードの数々だ。「成功体験」だけでなく,文化の違いや教育の違いによって「苦労したこと」や「うまくいかなかったこと」についても実体験が記載されている。これらのストーリーを読みながら,国際看護学の著名な先生方も,試行錯誤し時には悩みながら,キャリアを積み重ねてきたのかと感嘆した。
本書には,大先輩たちが築いてこられた国際看護の歴史や伝統,経験がぎゅっと詰まっている。国際看護を目指す看護師・看護学生のためのマイルストーンである。バトンを受け取り,次世代の看護教育に活用していきたい。
書評者: 二見 茜 (東医歯大病院助教・総合診療科)
グローバルに活躍する看護職のためのバイブルである,『国際看護学入門』の待望の第2版が初版から21年を経て発刊された。
著者の先生方は,看護大学の教育カリキュラムで国際看護学が必修化されるずっと前から,国内外で貧困や難民など社会的弱者と呼ばれる人たちの支援に取り組んでこられ,日本の国際看護の発展を担ってきた。
今回の改訂では内なる国際化にも目を向け,在日外国人,紛争や迫害を受けて日本に逃れてきた難民,災害時の被災者の支援に関する項目が追加された。在日外国人,訪日外国人の増加に伴い,日本全国どの地域の病院であっても,外国人患者が受診し,看護ケアを提供する時代になった。海外での医療支援に関心がないという看護師でも,日本の病院で外国人患者に対応し,言葉の壁,多様な文化や宗教,生活習慣に配慮した看護ケアを提供することになるだろう。
日本国内でも,海外でも患者に最も近い存在である看護師は,患者の多様な価値観や文化,生活習慣を理解するよう努め,できる限り尊重する姿勢を持つことが重要である。本書では,対象者の生活や文化を大切に尊重し,看護師の視点で生活モデルから国際看護のプロジェクト展開について詳細に説明されている。
例えば,本書で紹介されている伝統医療・民間療法(アーユルヴェーダや中医学など)では,西洋医学とは異なる人体の理解,病気の説明の理論があり,その活動は社会的に認知されており,医師養成機関も確立しているのだという(本書p.49より)。このような多様な医療のあり方を知ることは,看護師としての視野を広げ,海外での医療活動のみならず,日本の医療機関を受診する外国人患者の生活背景や患者にとっての理想の医療を理解する上でも役立つだろう。
評者が本書の中で特に好きなところは,海外の医療支援の現場での経験を基に書かれたエピソードの数々だ。「成功体験」だけでなく,文化の違いや教育の違いによって「苦労したこと」や「うまくいかなかったこと」についても実体験が記載されている。これらのストーリーを読みながら,国際看護学の著名な先生方も,試行錯誤し時には悩みながら,キャリアを積み重ねてきたのかと感嘆した。
本書には,大先輩たちが築いてこられた国際看護の歴史や伝統,経験がぎゅっと詰まっている。国際看護を目指す看護師・看護学生のためのマイルストーンである。バトンを受け取り,次世代の看護教育に活用していきたい。