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レジデントのための小児感染症診療マニュアル

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小児の特徴“Children are not just miniature adults” をふまえた感染症診療の原則、考え方、プラクティスを示し、「感染臓器とそこに感染した微生物を考える」診療を実践していくために最適な1冊。「発熱へのアプローチ/感染臓器/検査/原因微生物/治療薬/予防接種」の各章で、エビデンスに基づいた記載とともに、臨床現場で実際に使えるマニュアルの簡明さも備えている。小児感染症診療の新しいスタンダード!

シリーズ レジデントマニュアル
編集 齋藤 昭彦
発行 2022年03月判型:A5頁:884
ISBN 978-4-260-04294-9
定価 9,900円 (本体9,000円+税)

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  • 序文
  • 目次
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 このたび,本書『レジデントのための小児感染症診療マニュアル』を発刊することとなった。この題名からおわかりのように,本書は青木眞先生がご執筆・ご編集され,国内の感染症診療のバイブル的存在である『レジデントのための感染症診療マニュアル』(医学書院,初版は2000年,第4版は2020年刊)の小児版をコンセプトに企画された。
 青木眞先生は私の小児感染症専門医の道を開いて下さった師である。出会いは私が聖路加国際病院の小児科研修医で,多くの小児血液腫瘍の患者を担当する中で感染症診療の難しさを実感し,その壁を乗り越えるためならどんな些細なヒントでも切望していた時期であった。そんな経験の浅い研修医の前に,何の前触れもなく,米国から帰国後に聖路加国際病院に赴任されたのが青木先生だった。先生が行った,研修医を対象とした感染症診療の系統的な講義はまさに目から鱗が落ちるほど鮮烈なもので,自分の感染症診療の考え方が根本から変わっていくのを実感した。また,抗菌薬の基本を勉強するため,「Mayo Clinic Proceedings」(1991)で特集が組まれていた抗菌薬各論のReview Articles を小児科のグループで精読した時には,的確なアドバイスを頂戴した。さらには,治療に困っている患者について相談すると,コンサルタントとして病棟に気軽に足を運んで親身に相談にのってくださるなど,青木先生からは多くのご指導と愛ある叱責をいただいた。
 その後,私は米国で小児科,小児感染症のトレーニングを受け,米国の小児科専門医,小児感染症専門医・指導医となった。米国の大学で指導医として,そして研究者としての仕事を終えた後,2008年に国立成育医療研究センターで感染症科を立ち上げ,コンサルテーション業務を中心とした小児感染症の診療を開始した。また,日本小児感染症学会で企画した若手育成の教育プログラムなども功を奏し,小児感染症を志す有志が多く誕生することとなった。現在の新潟大学に異動後も,国立成育医療研究センター(宮入烈先生,現・浜松医科大学),都立小児総合医療センター(堀越裕歩先生)を筆頭に,その診療スタイルによる小児感染症教育が定着し,10年以上たった今では,小児感染症を専門とする多くの若手小児科医がそれぞれの医療施設で活躍している。日本小児感染症学会が主導する小児感染症専門医制度も発足し,小児感染症専門医の活躍の場は今後も大きく発展することが期待されている。
 ところで,小児の感染症は成人のそれと比べて大きな違いがあることは,読者の皆さんはご存知のことと思う。“Children are not just miniature adults.”(子どもは,大人の単なるミニチュアではない)という箴言は,小児感染症の診療においても当てはまるのである。実際の臨床では,対象となる児からの病歴聴取,身体診察,検体採取などが困難なことから,その臨床上のデータは乏しく,わからないことが圧倒的に多い。独立した学問として歴史が浅く,またこれまで本領域において定番となる日本語テキストが見当たらなかったのも,それが一因であろう。そのようなわからないことが多い小児感染症の診療について,本書では第一線で活躍する医師が「わかっていること」と「わかっていないこと」を明確にしながら執筆し,子どもたちの診療に役立つ内容となることを心がけた。
 最後に,本誌の執筆に関わってくれた25名の小児感染症医の仲間たち,そして,本誌の立案,編集において,多大なご協力を頂いた医学書院の西村僚一氏に感謝の意を表したい。
 繰り返しになるが,小児感染症の診療は,わからないことが多い分だけ伸びしろが大きく,今後さらなる発展が期待できる領域である。微力ながら本書がわが国の小児感染症診療を底上げする一助となり,今後も読者の皆さんのご意見をいただきながら,内容を磨き上げていきたいと考えている。

 本書が子どもたちの感染症の診療に役立つことを祈って。

 2022年2月
 新潟大学教授・小児科学
 齋藤 昭彦

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第1章  小児感染症診療の総論
 A 小児感染症診療の原則
  A-1 診断の原則
  A-2 治療の原則
 B 小児の免疫の特徴
 C 小児の感染症の特徴
 D 小児感染症の診断
 E 小児感染症の治療
  E-1 小児のPK/PDの特徴
  E-2 小児のTDM
  E-3 小児の抗菌薬の副作用,薬物相互作用
  E-4 小児の抗菌薬の予防投与
  E-5 小児における薬剤耐性菌の現状
 F 新生児の感染症の特徴
 G 小児の免疫不全者の感染症の特徴
 H 小児で感染症と鑑別が必要な疾患
 I 医療関連感染の予防

第2章 発熱へのアプローチ
 A 小児の救急外来
 B 病棟における小児の発熱へのアプローチ
 C PICU(小児集中治療室)

第3章 感染臓器からみた小児感染症
 A 中枢神経感染症
  A-1 細菌性髄膜炎
  A-2 無菌性髄膜炎,ウイルス性髄膜炎
  A-3 急性脳炎
  A-4 中枢神経系の局所的な化膿性感染症(脳膿瘍,硬膜下膿瘍,硬膜外膿瘍,頭蓋内血栓性静脈炎)
 B 頭頸部感染症
  B-1 中耳炎
  B-2 乳様突起炎
  B-3 鼻副鼻腔炎
  B-4 外耳道炎
  B-5 頸部リンパ節炎
  B-6 深頸部膿瘍
 C 呼吸器感染症
  C-1 咽頭炎,扁桃炎
  C-2 扁桃周囲膿瘍,咽後膿瘍
  C-3 喉頭蓋炎,クループ,細菌性気管炎
  C-4 細気管支炎
  C-5 肺炎,肺炎随伴性胸水,膿胸
 D 血管内感染症
  D-1 感染性心内膜炎(IE)
  D-2 カテーテル関連血流感染症(CRBSI)
 E 腹部感染症
  E-1 ヘリコバクター・ピロリ感染症
  E-2 胃腸炎(嘔吐・下痢症)
  E-3 急性虫垂炎
  E-4 腸間膜リンパ節炎
  E-5 腹膜炎
  E-6 腹腔内膿瘍
  E-7 胆囊炎・胆管炎
  E-8 Fitz Hugh-Curtis症候群
 F 皮膚軟部組織感染症
  F-1 表面の限局した病変
  F-2 皮下組織感染と膿瘍(筋炎,化膿性筋炎,壊死性筋膜炎を含む壊死性軟部組織感染症)
  F-3 外傷に伴う感染症,汚染創,動物咬傷
 G 腎・泌尿器感染症
  G-1 総論
  G-2 疾患各論
 H 骨・関節感染症
  H-1 急性骨髄炎
  H-2 化膿性関節炎
 I 性感染症
 J 海外渡航後の小児の感染症

第4章 小児感染症の検査
 A 培養検査
 B 血液検査
 C 尿検査
 D 髄液検査
 E その他(胸水,腹水,関節液)
  E-1 胸水
  E-2 腹水
  E-3 関節液

第5章 原因微生物からみた小児感染症
 A 細菌感染症
  A-1 A群溶血性レンサ球菌
  A-2 B群溶血性レンサ球菌
  A-3 肺炎球菌
  A-4 インフルエンザ菌
  A-5 黄色ブドウ球菌
  A-6 コアグラーゼ陰性ブドウ球菌
  A-7 腸球菌
  A-8 大腸菌
  A-9 マイコプラズマ,クラミジア
 B ウイルス感染症
  B-1 サイトメガロウイルス
  B-2 ヒトヘルペスウイルス6型,7型
  B-3 EBウイルス
  B-4 単純ヘルペスウイルス
  B-5 アデノウイルス
  B-6 インフルエンザウイルス
  B-7 RSウイルス
  B-8 ヒトメタニューモウイルス
  B-9 ヒトボカウイルス
  B-10 パラインフルエンザウイルス
  B-11 コロナウイルス
  B-12 ロタウイルス
  B-13 カリシウイルス(ノロウイルス,サポウイルスなど)
  B-14 エンテロウイルス
  B-15 パレコウイルスA
  B-16 肝炎ウイルス(A,B,CおよびE型)
  B-17 麻疹ウイルス
  B-18 風疹ウイルス
  B-19 水痘・帯状疱疹ウイルス
  B-20 ムンプスウイルス
  B-21 パルボウイルスB19
  B-22 HIV
 C 真菌感染症
  C-1 カンジダ症
  C-2 アスペルギルス症
  C-3 クリプトコッカス
  C-4 ニューモシスチス肺炎

第6章 小児感染症の治療薬
 A 小児の抗菌薬
  A-1 ペニシリン系抗菌薬
  A-2 セファロスポリン系抗菌薬
  A-3 アミノグリコシド系抗菌薬
  A-4 グリコペプチド系抗菌薬
  A-5 テトラサイクリン系抗菌薬
  A-6 カルバペネム系抗菌薬
  A-7 キノロン系抗菌薬
  A-8 ST合剤
  A-9 マクロライド系抗菌薬
 B 小児の抗ウイルス薬
  B-1 抗インフルエンザ薬
  B-2 アシクロビル,バラシクロビル
  B-3 ガンシクロビル,バルガンシクロビル
  B-4 ホスカルネット
  B-5 抗HIV薬
 C 小児の抗真菌薬
  C-1 総論
  C-2 アムホテリシンB
  C-3 アゾール系抗真菌薬
  C-4 エキノキャンディン系抗真菌薬
 D 小児の抗寄生虫薬
 E 小児における抗微生物薬適正使用と薬剤耐性対策

第7章 予防接種
 A 総論
  A-1 予防接種の基本的な考え方
  A-2 予防接種スケジュール
  A-3 同時接種
  A-4 副反応と有害事象
  A-5 予防接種に注意が必要な場合
 B ワクチン各論
  B-1 インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン
  B-2 肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)
  B-3 B型肝炎ワクチン(HBワクチン)
  B-4 ロタウイルスワクチン
  B-5 4種混合ワクチン(DTaP-IPV)
  B-6 3種混合ワクチン(DTaP),2種混合トキソイド(DT)
  B-7 不活化ポリオワクチン(IPV)
  B-8 BCGワクチン
  B-9 麻疹・風疹ワクチン
  B-10 水痘ワクチン
  B-11 ムンプスワクチン
  B-12 インフルエンザワクチン
  B-13 日本脳炎ワクチン
  B-14 ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン)
  B-15 A型肝炎ワクチン(HAワクチン)
  B-16 髄膜炎菌ワクチン
  B-17 黄熱病ワクチン
  B-18 狂犬病ワクチン
  B-19 コレラワクチン
  B-20 腸チフスワクチン
  B-21 ダニ媒介性脳炎ワクチン

付録
 A 小児の抗菌薬一覧
 B 感染症法にある疾患一覧
 C 動物由来の感染症
 D 主な寄生虫疾患
 E 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

欧文索引
和文索引

MEMO

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小児科医のみならず,小児診療に携わる病院総合診療医,家庭医にも必携の書
書評者:青木 眞(感染症コンサルタント)

◆はじめに

 本書の序にもあるように「小児は小さな成人ではない」。1984年に州立Kentucky大で内科初期研修を始めるにあたり,可能な限り感染症を中心に学びたいという希望を出した評者に冒頭から「小児の感染症には手を出すな」と警告を発したのは感染症内科の教授陣であった。米国では小児感染症科が小児総合診療的な特徴を維持しつつも一種独立した部門として存在感を示していたのは40年近く経過した今も記憶に新しい。このたび日本人として初の米国小児感染症専門医となって帰国された齋藤昭彦先生が多くの弟子,孫弟子ともに満を持して出されたのが本書である。

 評者は通読し,いかに小児感染症について無知であったか思い知らされた。本書は小児科医のみならず,小児診療に携わる病院総合診療医,家庭医にも必携の書と言えるだろう。素晴らしい記述が多いが誌面に限りがあり一部のみ紹介する。括弧内の太字は評者のコメント。

◆小児感染症診療の原則

p9:白血球数,CRP(C-reactive protein)値などは……その弊害として,その値だけが一人歩きしてしまい……。(このあたりは病態生理や鑑別診断の整理が不十分な中での検査など,程度の差こそあれ成人と同様)
p95:感染症と鑑別が必要な疾患。……多くの検査よりも,身体所見を繰り返し取ることが重要。
p96:非感染症の診断の仕方。非感染症についてよく知り,積極的に診断するのが一番の近道。
p131:感染症治療の評価は,感染臓器特異的な指標を用いて行う……。
p144:治療の効果判定,治療期間。クリニカルコースを知る。……バイタルサインの改善と炎症反応の低下はどちらが先なのか……。

◆小児科ならではの内容

p29:表1-15「原発性免疫不全症を疑う10の徴候」
p34-35:小児の感染症の特徴。年齢によって起因微生物が異なる。ウイルス感染症が圧倒的に多い。ワクチンで予防できる疾患がある。
p38-39:小児の感染症に関連する独特の検査所見がある。末梢白血球数の正常値は年齢が高くなるにつれて低くなる。尿中肺炎球菌抗原は鼻咽頭に常在する肺炎球菌により陽性になることが多い。
p49:小児のPK/PDの特徴。小児の方が体組成に占める水分量が多い……水溶性薬剤の分布容積に影響を与え……。
p74:新生児の感染症の特徴。母体の……妊娠中や出産時の経過,在胎週数,出生時体重などが最も重要な情報となる。
p75:通常の妊婦の感染症の血液検査……。(プライマリケアの医師にも必須)
p79:風疹ウイルスは出生後,ウイルスの排泄が数か月続き,感染対策が必要。
p136:表2-15「遷延する発熱に対する検討事項」検査事項:成長曲線
p306:培養検査の原則。細菌性髄膜炎の罹患率は大きく減少している。そのため,3か月未満の発熱に対してルーチンで行われてきた……髄液検査は,見直すべき時期にある。

◆成人の感染症テキストにも欲しい内容

p58-59:Memo「β-ラクタムアレルギー」,表1-23「セファロスポリン系抗菌薬のR1側鎖の種類」。アンピシリンは……第1~2世代セフェムとR1側鎖が完全に同一……アレルギーがあった場合には,もう一方の使用は避けるべきである。(執筆者の顔が思い浮かぶ優れた内容)
p166:頭頸部感染症。中耳炎。抗菌薬を処方する前に,経過観察が可能かどうかを考える。
p389:Memo「腸管出血性大腸菌による急性腸炎を治療するべきか」。抗菌薬投与によるデメリットの方が大きい……。
p437:Memo「ユニバーサルワクチンの開発」。要注目である。(やがてコロナにも……)
p495:Memo「麻疹の診断にコプリック斑は有用か?」(風疹にもパルボにも出るのか……)
p722:Memo「2011年のHib,肺炎球菌ワクチンを含む同時接種後の死亡例から学ぶこと」(日本のワクチン行政のさらなる前進に期待します)

◆おわりに

 齋藤先生は評者が30年前に帰国して最初に指導した研修医の一人である。聖路加国際病院の採用試験を一番で通過する秀才でありながら決して目立とうとはしない紳士であり,Establishmentを無用に刺激しない人格者である。しかし同時に困難に屈しない芯の強さを持ち,彼が仲間と共に構築した小児感染症専門医制度は経験する症例の量も質も十分な医療機関のみを認定施設とし,試験内容も「受験すれば受かる」ようなものにはしなかった。そのため大学病院でも認定施設の資格を得られず,教授でも受験資格を得られないこともあったその認定試験は,合格率も7割前後であったと聞く。多くの逆風があったに違いないが,その中で本物を構築されたことは素晴らしいのひと言に尽きる。コロナ禍による閉塞感に満ちたこの日本にも創造可能であるこのような「空間」に希望を感じている。


「感染症学」と「小児科学」が有機的に結びついた傑作
書評者:森内 浩幸(長崎大教授・小児科学)

 齋藤昭彦氏はわが国の小児感染症診療を牽引する存在である。米国で本格的に小児感染症の診療と研究のトレーニングを受け,帰国後は国立成育医療研究センターを経て,新潟大学に移った後も国内の多くの小児科医に感染症教育を実践し育ててきた。その多くの仲間たち,弟子たちの協力の下で,本書が編纂されている。

 本書は,齋藤氏が薫陶を受けた青木眞氏の『レジデントのための感染症診療マニュアル』の小児版というコンセプトで書かれたというが,単なるオマージュではなく「感染症学」と「小児科学」が有機的に結びついた傑作であり,今後わが国における小児感染症診療のバイブルとなるだろう。

 齋藤氏が述べているように,小児には成人とは異なるさまざまな特色があり,それが感染症の分野でも単純に感染症学の小児版とするだけでは済まない難しさを持っている。本書では,総論の中で小児という宿主の特殊性を十分に読者に理解できるように解説し,また,小児ならではの感染症各論も丁寧に展開している。

 本書ではまた,感染症との鑑別が必要となる病態の解説も加えるとともに,症候学的アプローチ,感染臓器からのアプローチ,原因微生物からのアプローチと多角的に小児感染症を捉え,実際のプラクティスの中でも使いやすく構成されている。エビデンスに基づいて書かれてあるけれども,ガイドラインのような味気なさはない。

 本書は教科書として腰を据えて読み込む部分,現場のレファレンスとしてフットワークよろしく使い込む部分に加えて,指導医がコーヒーブレイクの時に自分の経験談やフィロソフィーを話してくれるようなMEMOが随所に散りばめられていて,それがまた読んでいて楽しいだけではなく教科書的な内容だけでは学べないことを教えてくれる。

 すでにSARSコロナウイルス2型のような新しい病原体についても記載されているが,感染症診療の進歩は日進月歩であるため,今後も本書は随時改訂されていくことと思われる。しかし長い年月が経っても,本書のコンセプトが生き続ける限り,Nelsonの小児科学やMandellの感染症学の教科書のような古典になっていることと確信する。そして小児感染症という分野が単純に小児科の中の感染症でもなく,感染症の小児領域というものでもない,ユニークで重要な分野であることを示してくれることだろう。


レジェンドがまとめる小児感染症診療のバイブル
書評者:谷口 俊文(千葉大病院講師・感染制御部・感染症内科)

 一人の成人内科専門医および感染症専門医としての視点で本書を読んでみた。青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』もそうだが,本書の最も読み応えのあるところは「総論」だ。小児と成人の感染症診療のアプローチははっきりと違う。ここでは「小児の免疫の特徴」に多くのページを使っている。これらの特徴をしっかりと把握することにより,成人とは違う病態の気付きなども得られる。また基礎的な病態生理にもかなりしっかりと触れられている。総論でここまでしっかりと網羅している感染症の本はなかなか見当たらない。それだけ小児感染症の実践で基礎的な知識が必要であるということなのだろう。

 読み進めると,所々に散りばめられたメモ欄には,小児科ならではの疾患やクリニカル・パールが詰まっており,これを拾い読みするだけでも勉強になる。各論に入ると,さまざまな治療方法が感染症ごとにまとめられている。欧米で使用できる薬なども日本では使用できず,歯がゆい思いをされている先生方も,日本で小児感染症のトップランナーたちがまとめた実践的な抗菌薬使用方法は,読んでいても納得することができるのではないだろうか。

 米国では基本は必須としつつも成人感染症の領域は「一般」「移植」「HIV」など細分化しており,例えば普段から固形臓器移植など免疫不全の患者の感染症に触れていないと苦手意識が出るのだが,日本の小児感染症医はオールマイティにこなさなければならない。本書を手に取りながら基礎を学ぶのは,最も効率的と思われる。「小児感染症の本」というのは英語でもなかなか良書に出合うのが難しいが,日本語でこれだけの臨床的に実践的な内容が詰めこまれている本があるということ自体,素晴らしいのと同時に世界的にもひけをとらない小児感染症領域のレベルを築き上げるのにも役立つだろう。また私が青木先生の本を手に取り感染症医を志したのと同じように,本書を手に取り小児感染症医を志す医学生や研修医も必ず出てくると思う。レジェンドが描く,将来の日本小児感染症の世界が楽しみだ。

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