はじめてでも迷わない!
看護のためのケーススタディ
ケーススタディ(事例研究)を始める前に、この1冊!
もっと見る
本書は、はじめてケーススタディに取り組む看護学生・新人看護師のみなさんに向けて、手順や実施時の注意点、コツをまとめた1冊です。テーマの見つけ方から、データ収集・整理の方法、レポート(論文)のまとめ方まで、その流れを追って学んでいくことができます。さらに、随所でケーススタディの「書き方の実例」や、進め方のコツである「アドバイス」を提示。ケーススタディについての理解が一層深まります。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 序文
- 目次
序文
開く
序 INTRODUCTION
看護大学は,平成の30年間でその数が25倍に増加しました。また,看護大学以外にも,看護専門学校3年課程・高校専攻科(5年一貫校)・通信制学校が看護師養成校として存在しています。これらの看護師養成校では,厚生労働省・文部科学省が示している指定規則に準じ,看護基礎教育が行われています。このように看護師教育課程の背景はさまざまであり,看護研究に授業として取り組み,論文作成や発表まで時間をかけて学ぶところもあれば,研究テーマの探求や,計画書の作成などの学修範囲に留めているところもあります。限られた時間のなかで看護の膨大なカリキュラムをやり遂げなくてはならない専門学校・大学では,「研究とは何か」を知ることにその重点が置かれており,本格的な研究活動は修士・博士課程で行う,という暗黙の了解のようなものがあります。そのため,専門学校・大学では,その学校の理念やカリキュラムによって「研究」の取り扱いに差があるのが現状です。
一方で臨床では,日々の看護実践から生まれた疑問や気づきを研究としてまとめ,発表することを求められる機会が多くあります。看護の実践家として,一事例一事例かかわり続けた患者の看護ケアをデータとして活用し,根拠や知見を集積していくことは,その人個人のキャリア形成だけでなく,看護(学)の発展にもつながっていくものです。
2009(平成21)年に保健師助産師看護師法の大幅な改正があり,卒後の臨床研修が努力義務化されました(第28条の2)。看護師は専門職としての継続的な自己研鑽が求められるようになったのです。「自己研鑽」とは,専門職としてのキャリアを積み成長し続けることであり,ここには「研究すること」も含まれています。めざすキャリア(管理者・認定看護師・研究者など)に合わせて目標は大きく変化していきますが,目標に到達するには,いずれも研究というステップを踏むことが必要です。
そうした「研究」に取り組むための基礎づくりとして,また,看護観の芽が育つことを期待して,現在多くの教育施設で取り入れられている「ケーススタディ」に着目し,その目的や手法,まとめ方を解説するものとしてこの本は生まれました。
執筆にあたっては,看護学生がケーススタディに取り組む際に活用しやすいように,臨地実習を題材とし,そこで集めたデータをもとにした書き方,進め方の実例をできるだけ具体的に示す形としました。さらに,卒後の臨床看護研究,また,専門・認定看護師の資格習得や,大学院への進学をめざす看護師が行う研究にもつながるよう,やや発展的と思われる考え方や言葉についても,解説を加えています。
本書は,大きく3つの章から構成されています。
第1章「ケーススタディについて知ろう」は,ケーススタディとは何のために行うものなのか,取りかかりとして何から手をつければよいのか,が理解できるようにまとめています。加えて,ケーススタディの他にもあるさまざまな「研究」についても紹介しています。
第2章「ケーススタディの進め方」は,タイトルのとおり,ケーススタディの進め方を中心に説明しています。みなさんが一番悩む,文献の読み方や,スケールなどさまざまなツールを活用したテーマの絞りこみ,計画書の書き方,レポート(論文)のまとめ方,さらには発表の仕方まで,順を追って進められるように構成しています。この章は,本書で一番のボリュームを持たせました。
第3章「ケーススタディの実際」では,使用するデータ(記録)や資料別に,4種類の実践例を紹介しています。(1)実習中毎日書く経過記録(フローシート)からの分析,(2)患者との会話・やりとりからのプロセスレコード分析,(3)患者指導方法,(4)文献研究,の4つの例を取り上げて,それぞれに適したテーマ,ケーススタディのまとめ方を,書き方の例やポイントを挙げて解説しています。
臨地実習で記録した内容や,臨床で気になったこと・悩んだことを研究的にまとめていくにはどうすればよいか,その第一歩ともいえる内容をこの1冊にまとめました。本書を読むことで,少しでもケーススタディに対するハードルが低くなったならば,大変うれしく思います。本書が,ケーススタディにはじめて取り組む看護学生,また,卒後はじめて研究に取り組む看護師のみなさんの一助となることを,心より願っています。
最後になりましたが,構想段階から,医学書院の近江友香さん,北原拓也さんからたくさんの提案やご助言をいただき,こうして書籍を完成させることができました。心から感謝いたします。
2019年1月
編集 古橋 洋子
看護大学は,平成の30年間でその数が25倍に増加しました。また,看護大学以外にも,看護専門学校3年課程・高校専攻科(5年一貫校)・通信制学校が看護師養成校として存在しています。これらの看護師養成校では,厚生労働省・文部科学省が示している指定規則に準じ,看護基礎教育が行われています。このように看護師教育課程の背景はさまざまであり,看護研究に授業として取り組み,論文作成や発表まで時間をかけて学ぶところもあれば,研究テーマの探求や,計画書の作成などの学修範囲に留めているところもあります。限られた時間のなかで看護の膨大なカリキュラムをやり遂げなくてはならない専門学校・大学では,「研究とは何か」を知ることにその重点が置かれており,本格的な研究活動は修士・博士課程で行う,という暗黙の了解のようなものがあります。そのため,専門学校・大学では,その学校の理念やカリキュラムによって「研究」の取り扱いに差があるのが現状です。
一方で臨床では,日々の看護実践から生まれた疑問や気づきを研究としてまとめ,発表することを求められる機会が多くあります。看護の実践家として,一事例一事例かかわり続けた患者の看護ケアをデータとして活用し,根拠や知見を集積していくことは,その人個人のキャリア形成だけでなく,看護(学)の発展にもつながっていくものです。
2009(平成21)年に保健師助産師看護師法の大幅な改正があり,卒後の臨床研修が努力義務化されました(第28条の2)。看護師は専門職としての継続的な自己研鑽が求められるようになったのです。「自己研鑽」とは,専門職としてのキャリアを積み成長し続けることであり,ここには「研究すること」も含まれています。めざすキャリア(管理者・認定看護師・研究者など)に合わせて目標は大きく変化していきますが,目標に到達するには,いずれも研究というステップを踏むことが必要です。
そうした「研究」に取り組むための基礎づくりとして,また,看護観の芽が育つことを期待して,現在多くの教育施設で取り入れられている「ケーススタディ」に着目し,その目的や手法,まとめ方を解説するものとしてこの本は生まれました。
執筆にあたっては,看護学生がケーススタディに取り組む際に活用しやすいように,臨地実習を題材とし,そこで集めたデータをもとにした書き方,進め方の実例をできるだけ具体的に示す形としました。さらに,卒後の臨床看護研究,また,専門・認定看護師の資格習得や,大学院への進学をめざす看護師が行う研究にもつながるよう,やや発展的と思われる考え方や言葉についても,解説を加えています。
本書は,大きく3つの章から構成されています。
第1章「ケーススタディについて知ろう」は,ケーススタディとは何のために行うものなのか,取りかかりとして何から手をつければよいのか,が理解できるようにまとめています。加えて,ケーススタディの他にもあるさまざまな「研究」についても紹介しています。
第2章「ケーススタディの進め方」は,タイトルのとおり,ケーススタディの進め方を中心に説明しています。みなさんが一番悩む,文献の読み方や,スケールなどさまざまなツールを活用したテーマの絞りこみ,計画書の書き方,レポート(論文)のまとめ方,さらには発表の仕方まで,順を追って進められるように構成しています。この章は,本書で一番のボリュームを持たせました。
第3章「ケーススタディの実際」では,使用するデータ(記録)や資料別に,4種類の実践例を紹介しています。(1)実習中毎日書く経過記録(フローシート)からの分析,(2)患者との会話・やりとりからのプロセスレコード分析,(3)患者指導方法,(4)文献研究,の4つの例を取り上げて,それぞれに適したテーマ,ケーススタディのまとめ方を,書き方の例やポイントを挙げて解説しています。
臨地実習で記録した内容や,臨床で気になったこと・悩んだことを研究的にまとめていくにはどうすればよいか,その第一歩ともいえる内容をこの1冊にまとめました。本書を読むことで,少しでもケーススタディに対するハードルが低くなったならば,大変うれしく思います。本書が,ケーススタディにはじめて取り組む看護学生,また,卒後はじめて研究に取り組む看護師のみなさんの一助となることを,心より願っています。
最後になりましたが,構想段階から,医学書院の近江友香さん,北原拓也さんからたくさんの提案やご助言をいただき,こうして書籍を完成させることができました。心から感謝いたします。
2019年1月
編集 古橋 洋子
目次
開く
I ケーススタディについて知ろう
1 ケーススタディとは何か
1.ケーススタディってどんなもの?
2.さまざまなタイプの「研究」
3.ケーススタディを行う意義
2 ケーススタディをはじめる前に
1.テーマの種は臨床にあり
2.患者の個別性に着目したケーススタディ
3.取り組む領域を選べる場合,選べない場合
4.それぞれの領域で見つけやすいテーマ
II ケーススタディの進め方
1 テーマを見つける
1.事例の整理からテーマを見つける
2.実習中の会話・かかわりを振り返る
3.自分が行った援助と患者の反応を振り返る
4.受け持ち事例と先行研究とを比較分析する
5.ブレイン・ストーミングを用いたテーマの探し方
2 テーマの絞り込み
1.テーマの選び方
2.関連する文献を探してみる
3.仮説を立てる
3 計画書を作ってみよう
1.計画書には何を書くか
2.計画書の構成
3.忘れてはならないのが倫理的配慮
4 ケーススタディの進め方
1.臨地実習前の準備
2.実習記録をながめてみよう
3.書き出した内容を整理する
4.援助の内容や患者の変化に着目する
5.結果をまとめる
6.考察してみよう
5 ケーススタディのまとめ方と発表
1.ケーススタディの一般的な構成
2.書き方の注意点
3.研究発表会や学会に出してみよう
III ケーススタディの実際
1 フローシートによる実践例
1.フローシート(経過一覧表)とは
2.フローシートを活用しやすい研究テーマ
3.フローシートによるケーススタディのまとめ方・整理の仕方の実際
2 プロセスレコードによる実践例
1.プロセスレコードとは
2.プロセスレコードによるケーススタディのまとめ方
3.まとめ方・整理の仕方の実際
3 患者指導方法による実践例
1.患者指導方法とは
2.患者指導方法の振り返り方
3.患者指導方法によるケーススタディのまとめ方
4.まとめ方・整理の仕方の実際
4 文献研究による実践例
1.文献研究とは
2.文献研究によるケーススタディのまとめ方
3.まとめ方・整理の仕方の実際
索引
1 ケーススタディとは何か
1.ケーススタディってどんなもの?
2.さまざまなタイプの「研究」
3.ケーススタディを行う意義
2 ケーススタディをはじめる前に
1.テーマの種は臨床にあり
2.患者の個別性に着目したケーススタディ
3.取り組む領域を選べる場合,選べない場合
4.それぞれの領域で見つけやすいテーマ
II ケーススタディの進め方
1 テーマを見つける
1.事例の整理からテーマを見つける
2.実習中の会話・かかわりを振り返る
3.自分が行った援助と患者の反応を振り返る
4.受け持ち事例と先行研究とを比較分析する
5.ブレイン・ストーミングを用いたテーマの探し方
2 テーマの絞り込み
1.テーマの選び方
2.関連する文献を探してみる
3.仮説を立てる
3 計画書を作ってみよう
1.計画書には何を書くか
2.計画書の構成
3.忘れてはならないのが倫理的配慮
4 ケーススタディの進め方
1.臨地実習前の準備
2.実習記録をながめてみよう
3.書き出した内容を整理する
4.援助の内容や患者の変化に着目する
5.結果をまとめる
6.考察してみよう
5 ケーススタディのまとめ方と発表
1.ケーススタディの一般的な構成
2.書き方の注意点
3.研究発表会や学会に出してみよう
III ケーススタディの実際
1 フローシートによる実践例
1.フローシート(経過一覧表)とは
2.フローシートを活用しやすい研究テーマ
3.フローシートによるケーススタディのまとめ方・整理の仕方の実際
2 プロセスレコードによる実践例
1.プロセスレコードとは
2.プロセスレコードによるケーススタディのまとめ方
3.まとめ方・整理の仕方の実際
3 患者指導方法による実践例
1.患者指導方法とは
2.患者指導方法の振り返り方
3.患者指導方法によるケーススタディのまとめ方
4.まとめ方・整理の仕方の実際
4 文献研究による実践例
1.文献研究とは
2.文献研究によるケーススタディのまとめ方
3.まとめ方・整理の仕方の実際
索引