看護師長ハンドブック

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看護師長は、臨床現場において要となる管理者。その業務は、看護単位の運営、スタッフへの働きかけ、他部門との調整など多岐にわたる。本書では、看護師長に必要な知識をコンパクトに解説。「看護師長の役割とは」「最初の3か月間で行うべきことは」「スタッフの育成はどの時期に何をサポートするのか」「主任とはどのように連携する」「キャリアはどう見据える」など、新任看護師長をサポートする1冊!
編集 古橋 洋子
発行 2017年03月判型:A5頁:140
ISBN 978-4-260-03006-9
定価 2,420円 (本体2,200円+税)

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はじめに

 看護師長は,病棟管理やスタッフ育成など現場の要となる管理者です。医療の高度化,患者・家族の権利意識の高まり,多職種協働の推進など,医療をめぐる環境は目まぐるしく変化しています。看護師長に求められる役割も多岐にわたるようになってきており,厳しい時代を迎えているといえるでしょう。
 このような状況の中,新しく看護師長となった方の一助となればと思い,本書を作成しました。

 私たちは,「看護師のキャリア形成過程」をテーマに25年間にわたり現役の看護部長・大学の教員を中心メンバーに研究してまいりました。臨床実践の場で起きている事象を掘り起こし,そこに潜む看護師長の実情について質的研究の手法を用いて分析してきました。その研究手法は,法政大学社会学部教授・水野節夫先生から長年にわたり指導を受け,学会発表を続け現在に至っています。その中で浮かび上がってきたのが,看護職の中核をなし,ならびにスタッフレベルの看護師のロールモデルになっているのが看護師長であるということでした。

 このような研究会の流れを受け,看護師長に役立つ書籍の構成を考えました。新任の看護師長が管理者としての仕事を概観できるように,また困ったときにはすぐに参考にできるように,現場に即した内容としました。全編にわたって随所に表を配置し,簡潔明瞭な解説を心がけました。
 本書は,以下の章から成り立っています。

 「序章 看護師長になるということ」では,看護師長としておさえておきたい最も基本になることを解説しています。私たちの研究結果をまとめた図(3ページ,図1)も紹介しています。本書はこの図が根底にあります。
 「第1章 看護師長に求められる資質」では,「リーダーシップとマネジメント」「看護師長に備えてほしい特性」について解説しています。自分にはこれらが備わっていないと落ち込むのではなく,学習しながら発揮していってもらえればと思います。
 「第2章 看護師長になって─仕事の考え方・進め方」では,「看護師長としての最初の3か月間」「看護師長の機能と役割」のほか,看護師長の職責で起こり得るまったなしのスタッフの育成について,その対象ごと〔新人看護師,中堅看護師,中途(経験者)採用者,主任,産休・育休・病休からの復職者〕に,そのときどきに対応できるよう細かく説明しています。
 「第3章 看護師長のキャリア開発」では,認定看護管理者へのキャリア形成と看護部長を見据えて成長するための提案もしています。
 「第4章 おさえておきたいコミュニケーション技法」では,すべての場面におけるコミュニケーションの基本から,会議運営や電話対応,挨拶や文書の書き方などビジネスマナーとしても必要となることについてふれました。
 巻末の資料には,看護師長になったらまず読んでほしいおすすめの書籍も紹介していますのでぜひ参考にしてください。

 25年間研究を続けてきた過程にはさまざまな思い出があります。当初はさまざまな場所の会議室をお借りしていましたが,医学書院の七尾清氏に相談し,ご厚意により約10年間の長きにわたり,休日の会議室をお借りして今があります。そのときの条件が「研究成果を書籍にまとめるときは医学書院から」ということでした。その言葉に励まされ,今日まで研究を続けてきた次第です。この内容を本書として1つの形にまとめられたことに喜びを感じています。
 この書籍を制作するにあたり,北原拓也氏・染谷美有紀氏には,自由な発想の私たちを発行までサポートして頂いたことに感謝いたします。

 2017年1月
 編集 古橋洋子

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序章 看護師長になるということ
 1.看護師長とは
  1)看護管理者の概念的定義
  2)看護師長のあるべき姿
 2.人を育てるとは
  1)「ゆっくり・じっくり」「やさしさ・きびしさ」「尊重する」姿勢でかかわる
  2)人材育成のビジョンをもち,ぶれない
 3.組織を管理するとは
  1)関連部門との調整
  2)目標管理
  3)業績評価
  4)質保証
  5)リスクマネジメント(危機管理)

第1章 看護師長に求められる資質
 1.リーダーシップとマネジメント
  1)リーダーシップ
  2)マネジメント
 2.看護師長に備えてほしい特性
  1)価値観をはっきりさせる
  2)アサーティブな人になる
  3)タイムマネジメントができる
  4)会議(ミーティング)を主導できる
  5)面接を活用する

第2章 看護師長になって-仕事の考え方・進め方
 1.看護師長としての最初の3か月間
  1)病棟とスタッフについての情報収集・分析・アセスメント
  2)医療・福祉政策動向の把握
 2.看護師長の機能と役割
  1)組織目標の管理
  2)人事管理・労務管理
   (1)勤務計画
   (2)スタッフ管理
  3)看護業務管理
   (1)看護体制
   (2)看護業務
  4)職場管理
 3.スタッフの育成 (1)新人看護師
  1)新人看護師研修
  2)配属から最初の3か月間に新人看護師に身につけてもらいたい内容
  3)新人看護師の育成にあたって
   (1)プリセプターやチューター,メンターの配置
   (2)面接の行い方
 4.スタッフの育成 (2)中堅看護師
  1)中堅看護師育成の戦略
   (1)基礎コース修了後の中堅看護師
   (2)看護研究の活用による人材育成
  2)中堅看護師の育成(配属時から6か月)
   (1)同一部署で勤務する中堅看護師の育成
     (同一部署で中堅となった看護師の育成)
   (2)他科から異動してきた中堅看護師の育成
 5.スタッフの育成 (3)中途(経験者)採用看護師
 6.スタッフの育成 (4)主任
  1)看護師長が主任に望むこと・期待すること
  2)主任の育成
   (1)主任の心構え・役割
   (2)新任主任の育成(着任から12か月)
   (3)未経験の部署へ配属された主任の育成
   (4)看護師長と主任の業務の連携
   (5)主任のステップアップを支援
 7.スタッフの育成 (5)産休・育休および病休からの復職支援
  1)産休・育休からの復職
  2)病休からの復職

第3章 看護師長のキャリア開発
 1.認定看護管理者制度
 2.看護部長の役割・機能を理解する

第4章 おさえておきたいコミュニケーション技法
 1.看護師長に求められるコミュニケーション
  1)なぜコミュニケーション技法が大切か
  2)コミュニケーションをとるうえでのポイント
   (1)アイコンタクト
   (2)反応をみながら対応する
   (3)場の雰囲気を読む
  3)スタッフの変化を察知する
  4)スタッフを指導するうえでのポイント
  5)業務を進めるうえで大切な報告・連絡・相談(報連相)
   (1)よい「報連相」とわるい「報連相」
   (2)失敗・トラブルこそは早く「報告」する
   (3)「相談」するときは,自分なりに解決策を考えて相談する
   (4)望ましいフィードバック
 2.組織的に行う外部を交えた会議の準備から後のフォローまで
  1)会議の目的とゴールを理解する
  2)事前準備
   (1)議題・日時・場所・参加者の決定
   (2)参加者の準備
  3)当日
  4)会議後のフォロー
 3.毎日に活用できる会議の運営方法
  1)会議の運営の仕方
  2)会議録の作成方法
  3)会議に参加するときの心得
 4.さまざまなクレームとその対応
  1)クレームに発展する可能性が高いケースとその対応
   (1)クレームに発展する可能性が高いケース
   (2)クレームへの対応
  2)電話によるクレーム
 5.看護師長が身につけておきたいビジネスマナー
  1)挨拶・訪問のマナー
   (1)初対面で人の心をつかむ方法
   (2)院外施設の訪問など,初対面での挨拶における注意事項
  2)文書の書き方
   (1)伝言メモ
   (2)依頼文書(公文書)の書き方
   (3)E-mail文書の書き方

巻末資料
 資料1 日本看護協会による専門職業人として看護に必要な能力の全体像
 資料2 厚生労働省・新人看護職員研修ガイドライン(改訂版)における
     臨床実践能力の構造
 資料3 厚生労働省・新人看護職員研修ガイドライン(改訂版)における
     看護職員として必要な基本姿勢と態度についての到達目標
 資料4 厚生労働省・新人看護職員研修ガイドライン(改訂版)における
     技術的側面:看護技術についての到達目標
 資料5 厚生労働省・新人看護職員研修ガイドライン(改訂版)における
     管理的側面についての到達目標
 資料6 まんがで解る看護者の倫理綱領(滋賀県看護協会作成)
 資料7 新任看護師長にまずおすすめしたい10冊(鈴木照実)

索引

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看護師長をサポートする,これまでにない一冊
書評者: 高橋 京子 (福島県看護協会会長)
 医療技術の高度化,患者・家族の持つ価値観の多様化,チーム医療の推進など,医療を取り巻く状況が変化する中で,看護師長には,多職種と協働しつつ,これまで以上に看護チームのリーダーとして役割を発揮することが求められる時代になりました。看護師長は最前線で提供されている看護が適切であるかを判断しつつ,よりよい看護が提供できるようにスタッフの指導・育成をする立場にあるといえます。言い換えると,生涯にわたって学び続ける専門職を育成する「教育者」としての意識を持ち,行動することが看護師長の職務になったといえるでしょう。

 一般に職位の変化は,キャリアの危機状態とされ,危機には「危険」と「機会」という意味があるといわれています。看護実践者(ジェネラリスト)から病棟責任者である看護師長になるということは,役割行動の変化を意味します。新しい職位を恐れずチャンス(機会)と捉え,この本に沿って学習し,考え,行動することにより,看護師長という職位が新しい「あなた」を育てることになると思います。本書は看護師長を支援し,疑問に答えてくれる良書です。

 序章「看護師長になるということ」では,看護師長は病棟のトップ,責任者,管理者であると述べられており,そのあるべき姿として,「看護師育成に関わる師長の姿と仕組み」(p.3,図1)が示されています。25年という長きにわたる研究から導き出されたこの概念図は看護師長の根幹をなし,かつ普遍的なものと理解できます。また「人を育てるとは」の項で,「1人ひとりをどのように教育するかは管理者の腕にかかっている」(p.5),「1人の人間として成長していくことが組織の成長につながる」(p.6)と,重要なことが書かれています。

 第1章「看護師長に求められる資質」では,価値観をはっきりさせる,アサーティブな人になるなどが挙げられています。特にアサーティブであることはストレスマネジメントの一つとして大事であるとも述べられており,自分の経験と重ねても頷くばかりです。

 第2章「看護師長になって――仕事の考え方・進め方」では,「看護師長としての最初の3か月間」「看護師長の機能と役割」のほか,看護師長の職責で起こり得るスタッフ育成について,その対象ごと〔新人看護師,中堅看護師,中途(経験者)採用者,主任,産休・育休・病休からの復帰者〕にその時々に対応できるよう細かく説明してあります。

 第3章では,「看護師長のキャリア開発」について述べられています。看護師長にとどまらず,自分のキャリアを考えることは自己の成長に重要です。

 第4章「おさえておきたいコミュニケーション技法」では,全ての場面に通じるコミュニケーションの基本から会議運営や電話対応,挨拶や文書の書き方など,ビジネスマナーとしても必要なことが述べられています。

 巻末資料には「おすすめの書籍」が紹介されており,その中の『最初の質問』(詩:長田弘,絵:いせひでこ,講談社)もぜひ読んでいただきたいと思います。

 本書は,新任看護師長のみならず,中堅看護師長にもぜひお薦めしたい一冊です。
新任看護師長に贈りたい一冊
書評者: 中川 美都子 (富山県リハビリテーション病院・こども支援センター・看護局長)
 このたび,『看護師長ハンドブック』が出版されたと伺い,早速に拝読したところ,とても読みやすく,現場ですぐに活かせる内容だと感じました。

 まず,「序章 看護師長になるということ」「第1章 看護師長に求められる資質」は,ぜひ新しく看護師長になられた方に読んでいただきたい内容です。また,「第2章 看護師長になって」では,仕事の考え方・進め方が細かく丁寧に書かれており,チェック形式で活用しやすいと思いました。その中の「スタッフの育成」の項では,新人看護師や中堅看護師のみならず,中途採用看護師,主任,産休・育休及び病休からの復職支援までカバーされており,本書を参考に対応できると思える内容でした。そこで,私は新任看護師長にこの本をプレゼントしました。

 新任看護師長は,この本を活用しながら,日々の病棟の業務に奮闘しています。なかでも,スタッフの育成については,どのようにアドバイスをしたらよいか悩んでいましたが,本書を活用することで問題解決の糸口は見つかったと話してくれました。また,看護師長の経験が浅い者にとっても,各項目に具体的な行動や留意点が表の形式で示されているために理解しやすく,行動計画や数か月単位の振り返りチェックリストとしても活用しているそうです。

 序章内の「看護師長のあるべき姿」の項に書かれていた,師長としての「信念を貫き通す」ことの大切さについては,私自身も大いに共感するところがありました。患者中心のゆるぎない看護観をもち,師長としての責任を果たそうとする姿は,スタッフに伝わるものです。看護師長としての覚悟や勇気,決断力の必要性も再認識しました。スタッフが忙しそうだとつい管理者は手伝ってしまうものですが,病棟全体をみて指示する管理者になる必要があると改めて思いました。本書は,具体的にどう行動すべきかがまとめられているので,折に触れて参照できます。長く愛用できる一冊だと思います。

 私は現在看護局長の立場ですが,新任看護師長にこの本をプレゼントしてよかったと思っています。この本を活用することで,新任看護師長の日々の成長がうかがえます。また,今後新たに看護師長が誕生したときには,この本をお祝いとしてプレゼントしていきたいと思っています。本書を看護師長の教育に活用することをお薦めいたします。
看護師長になる人に勧めたい1冊(雑誌『看護管理』より)
書評者: 原 久美 (医療法人平和会平和病院 副院長・看護部長・医療部副部長/認定看護管理者)
◆まだまだ不十分な管理者研修

 初めて看護師長になるとき,多くの人は「自分に看護師長が務まるだろうか」「看護師長になって自分は何をすればよいのか」と不安を抱えていることだろう。
 近年,どこの医療機関でも看護師教育体制の整備は進んでいるが,看護師長就任までに十分な管理者研修を受けている人はまだまだ少ない。管理者育成まで系統立てて教育する体制が整備された医療機関は,まだ少ないのが実情である。
 多くの看護師長は,その役割を理解することも,心構えをする間もなく,自分が管理・運営する部署に配置になったその瞬間から,待ったなしに,日々の雑多な問題に追われることになる。
 私が初めて看護師長になったときには,考える間もなく日々の問題の対応に追われてしまい,半年,1年経って,はたと「自分は看護師長として何ができているのか」と思い至った。当時の看護部長には何度も悩みを相談し,その勧めで看護管理の方法を学習したり,日本看護協会が行っていた看護婦長研修(現在の認定看護管理者教育課程ファーストレベル)に参加させていただいた。これらを通して,看護師長としての自己の行動を振り返り,看護師長としてどのように行動するべきだったかを考え,手探りで部署の管理運営方法を見出していったことをよく覚えている。

◆どの時期に何を行えばよいかが具体的にわかる

 本書には,看護師長になった初日から看護師長がスタッフと信頼関係を築いていくための,具体的な行動や心構えが一覧でまとめられている。配置初日からスタッフは新しい看護師長を観察していること,だからこそ看護師長の側から笑顔で声をかけることが大切であるとまず書かれていることが印象的である。
 どの看護管理者も,これまでの経験をもとに,新任の看護師長としての第一歩を指導してきたと思うが,それが配置直後から段階的に,どのような意図で進めていくべきかが本書に整理されているのである。
 配置直後から3か月目までの時期を考慮した行動や,スタッフ管理,看護管理,職場管理に関する事項,スタッフ育成など,年間を通して,また長期的視点で取り組まなければならないポイントなどが細やかにまとめられている。またスタッフ育成についても,新人看護師,中堅看護師,中途採用看護師,主任など対象者別に,どの時期にどう関わるかを具体的に示している。
 各章を読んで看護師長に求められる役割を理解し,意識して行動すれば,看護管理者としての第一歩を踏みだしやすくなるだろう。

◆看護部長の立場で読んでも活用できる1冊

 本書を読んで,自分が初めて看護師長になった20年前に手元に欲しかったと心から思った。これから看護師長になる人には,ぜひ本書を看護師長として部署を管理・運営するための一助としていただきたい。
 また,看護部長の立場で本書を読むと,看護師長になった当時の自身の戸惑いや手探りで管理方法を工夫してきた苦労が思い出される。後進の看護師長が最初の1年間を戸惑い少なく管理・運営できるよう,本書を基に自施設の看護管理マニュアルを見直し,整備したいと考えている。

(『看護管理』2017年10月号掲載)

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