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坂の上のラパ肝・胆・膵[Web動画付]
腹腔鏡下手術が拓く肝胆膵外科のNEWスタンダード

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臨床外科』誌の好評連載「坂の上のラパ肝・胆・膵」を大幅に改変・増補し書籍化。肝胆膵外科のエキスパートが磨き上げ標準化した腹腔鏡下手術を丁寧に解説する。多数の術中写真とWeb動画が手術の勘所の理解を促す。「Knack」「Pitfall」など経験に根差したコラムも随所に掲載。安全・確実を旨とした手技の説明は、開腹手術にも適用できる内容を多く含む。レベルアップをめざす外科医必読・必見の手術書。

編集 本田 五郎
執筆 大目 祐介 / 本田 五郎
発行 2023年07月判型:A4頁:376
ISBN 978-4-260-04984-9
定価 19,800円 (本体18,000円+税)

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序文/雑誌連載時の序文

序文

 2020年10月に今さらながら教職へと転職した.東京女子医科大学病院もやはり坂の上にある.驚いたことに女子医大では,臨床と教育の両立を目指して私が思い描いていたものが,50年以上前に医療練士制度として確立されていた.女子医大消化器病センターは,食道癌手術の国際的パイオニアであった中山恒明先生によって1965年に開設され,以来,著名な消化器外科医,内科医を数多く輩出してきた歴史をもつ.
 洋の東西を問わず,理想的かつ合理的なものには普遍性がある.時代が変わって一時的に否定されることがあっても,普遍的なものは自ずと復活する.よい外科医を育てるためには,手術手技や診療手順を標準化して教育することが不可欠である.さらに,よい外科チームを代替わり後も維持するためには,その教育法を標準化して伝承する必要がある.盛者必衰の理というのもまた普遍的な道理ではあるのだが.

 2023年6月
 本田五郎


雑誌連載時の序文

 不忍通り沿いの動坂下には田端駅と西日暮里駅のどちらからも徒歩で10分.そこから動坂を見上げると,その上に四角い大きな建物,14階建ての都立駒込病院1号館がそびえ立っている.通院する患者さんと職員の多くがJR山手線の田端駅からやって来て,バス,車,自転車,徒歩で長さ200mほどのこの動坂を登る.2006年から繰り返しこの坂を登り,年月が経ち,その間に急速に発展した腹腔鏡下肝胆膵手術は標準手技といえるレベルに達した.2018年10月に移った今の職場,新東京病院は千葉県松戸市和名ヶ谷にある.住所は和名ヶ谷だが,病院は谷の北側の見晴らしのよい丘陵の上に立っており,やはりJR松戸駅から坂を登る.ここではほぼ完成された標準手技を駆使して,診療だけでなく後進の指導にも取り組んでいる.われわれの目の前にいる患者さんだけでなく,日本中の患者さんが安全な手術を受けられるために何かをしたいと思いながら.

 2020年1月
 本田五郎

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I 胆道
 1 胆囊摘出術──手術を安全に行うための局所解剖と標準手技
 2 急性胆囊炎に対する胆囊摘出術
 3 胆囊全層切除術,胆囊床切除術
 4 総胆管切石術
 5 総胆管拡張症手術

II 肝臓
 1 肝切除術の基礎
 2 肝部分切除術
 3 Glisson一括処理の基本手技(肝S3亜区域切除術)
 4 肝外側区域切除術
 5 左肝切除術
 6 右肝切除術
 7 肝後区域切除術
 8 肝前区域切除術
 9 肝内側区域切除術
 10 肝中央2区域切除術
 11 肝S7亜区域切除術
 12 肝S8亜区域切除術
 13 肝S1領域(尾状葉)の切除

III 膵臓・脾臓
 1 膵体尾部切除術
 2 脾温存尾側膵切除術
 3 膵体尾部切除術(膵癌に対する手技)
 4 膵頭十二指腸切除術(切除手技限定)
 5 脾臓摘出術

索引

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魅力あふれる新世代のバイブル的書籍
書評者:遠藤 格(日本肝胆膵外科学会理事長/横浜市大主任教授・消化器・腫瘍外科学)

 わが国の肝胆膵外科を牽引する若手のリーダーの一人である本田五郎先生とお弟子さんの大目祐介先生が共同執筆された本書は,本田先生が「現時点での腹腔鏡下肝胆膵外科手術の到達点」として出版されたものである。これは読まないわけにはいかないだろう。

 本書には,本田先生の開発したさまざまな有名術式・概念が網羅されている。例えば有名な「胆囊摘出術におけるSS-inner layer」,「肝静脈の股裂きを防止するCUSAの使い方」,「caudate lobe-first approach」などである。

 本書の特徴は「わかりやすい」ことに尽きるだろう。手術シェーマが好きな人にはたまらない素晴らしい図が数多く収載されている。Web動画のリンクまで用意されている。そのため,次は本田式でやってみようかな,と思わせる,そんな誘惑にあふれている。

 また,随所にKnack&Pitfallが散りばめられている点も,宝探しのようで面白い。具体的に数か所列挙すると,「胆囊全層摘出術の際の胆囊板の処理」(p51),「肝門近傍の地雷」(p54),「前区域Glisson茎の首は長めに確保する」(p190)など非常に有益なポイントが散りばめられている。

 また,Coffee BreakやDiscussionという名の「つぶやき」もある。「negative思考」(p90),「ベッドサイド命」(p294),「リンパ節郭清のエビデンス」(p330)などを読むと,彼の気骨あふれる人柄がよく理解できる。まさに本田五郎の真骨頂である。

 そろそろ肝胆膵外科にも開腹を知らない若い世代が増えつつある。本書はこれから肝胆膵外科の坂道を登っていく若手外科医のバイブル的存在になるのではないだろうか。


坂道を行く外科医のための標準術式の教科書
書評者:山本 雅一(社会医療法人中山会宇都宮記念病院院長)

 腹腔鏡下肝胆膵切除術はこの20年間に大きく進歩した。当初は肝胆膵外科分野で発展するのか危惧されたが,術後の患者負担の軽減,合併症が少ないことが多くの臨床研究で明らかにされ保険収載された。腹腔鏡による視野も良好で,外科医教育に有効であることも評価されている。さらには最近ロボット手術も導入され新たな時代を迎えつつある。

 2010年に第4回肝臓内視鏡外科研究会を主催した。フランスからBrice Gayet教授をお招きし腹腔鏡下手術の可能性について多くを学び,その発展を確信した。鏡視下手術の良好な視野から繊細な手術が可能となり,出血量は大きく減少した。創部が小さいことから術後の回復が早く,在院日数も減少した。しかし,臓器を直接触れることができないこと,鏡視下における切除臓器の立体的把握の困難さ,鉗子操作の修得に時間がかかること,大量出血時の止血の困難さなどの問題点も指摘された。経験豊富な医師の下である一定期間のトレーニングが重要であると認識した。

 本書は本田五郎教授と大目祐介医師の合作である。雑誌『臨床外科』で好評連載された原稿にさらに手を入れて出版された。改めて本書を見ると随所に本田イズムというべきこだわりが満載で,著者の心意気が感じられる。術中写真・ビデオは鮮明で,解剖図も的確である。「Pitfall」「Knack」が随所に配置され飽きさせず,さまざまなコメントは刺激的で,「coffee brake」でほっとさせられる。

 タイトルの『坂の上のラパ肝・胆・膵』であるが,著者に確認すると,駒込病院,新東京病院,東京女子医大病院はいずれも坂を上った高台にあるとの返答であった。大変ユニークな発想である。私はすぐに司馬遼太郎の『坂の上の雲』を連想した。日本が近代国家をめざして格闘した時代を重ね合わせることで,著者らの鏡視下肝胆膵外科手術で格闘してきた歴史やさらなる高みをめざす姿勢を感じた。『坂の上のラパ肝・胆・膵』は,現段階においての標準術式になり得るものであるが,坂の上に立つとさらなる坂道が続いていることは間違いない。その次なる坂道の上を若い外科医にはめざしていただきたい。

 東京女子医大消化器病センターを創設された中山恒明先生より「全ての手術は誰にでもでき安全で易しくなくてはならない」,さらに「手術に特許はない」と教えられた。恩師の高崎健先生は「手術は単純でスカッと終えることが重要である」と言われていた。現段階での腹腔鏡下肝胆膵外科手術の教科書とも考えられる本書を,現在ラパ肝胆膵手術に携わっている医師,これからラパ肝胆膵外科をめざす医師にぜひ手に取っていただきたいと思っている。


鋭い観察力と理論的考察“ホンダイズム”の醍醐味
書評者:坂井 義治(大阪赤十字病院院長)

 題中の「坂の上」とは一体どういう意味なのか? この本を手にした時に,本田五郎先生が愛読していた司馬遼太郎の著書の一つ『坂の上の雲』を想った。秋山好古・真之が明治維新に陸軍騎兵部隊の創設や理論的な海戦術を考案したように,豊富なラパロ消化管手術の経験の基にラパロ肝・胆・膵手術に取り組み,その標準手技を確立した自らの体験を重ねたのだろうと推測したからである。この本の序文を読むと,私の推測は間違っていたようである。「坂の上」とは,本田先生がこれまで,そして今勤務している病院(都立駒込,新東京,東京女子医大)が坂の上にあるからだという。しかし,これまで本田先生の臨床医としての経歴を見てきた一人として,彼の医学・医療への取り組みは,秋山兄弟同様に,現場での鋭い観察力と理論的考察力,そして篤い持続力という共通点を感じざるを得ない。

 鋭い現場での観察力の一端は胆囊摘出術における“SS-I層での剝離”の解説に見ることができる。最も安全な剝離層はどこにあるのか,その層は剝離中にどのように認識できるのか,病理組織ではどこに相当するのか,など深い観察力による既存の用語への疑問と挑戦,そして理論的な新たな概念の提唱は,まさに“ホンダイズム”である。CVSへの疑義など圧巻である。“Knack”“Pitfall”“Discussion”を通してホンダイズムの醍醐味を味わっていただきたい。

 共著者の大目祐介先生という秀逸の弟子を得たことも,標準手技の確立と本書の上梓に至った要因であろう。ホンダイズムを視覚化・言語化する作業は,日々の大目先生への指導と彼の成長を通して蓄積されたものと思われる。

 77本の手術動画とともに,その動画から抽出された明瞭な1600点を超える術中写真と,安全・確実を旨とした手技の説明は,外科修練医の教科書として比類なき教材であり,指導者にも今一度振り返りのために読んでいただきたい一冊である。

 願わくは,手術動画に音声解説があれば,さらに理解を深めることができるであろう。次回の改訂に期待したい。

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