ケアに学ぶ臨床社会学
理解社会学の再生を求めて

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『はじめての看護理論』『ナースのための社会学入門』の著者が情熱を注いで書き下ろした3作目。臨床社会学はケアから何を学べるか、またケアは臨床社会学をどのように生かせるか、臨床場面の事例を示しながら現代社会学と看護学の主な概念、またヴェーバーの理解社会学について平明に述べる。また病者の意味世界、苦難の意味を探る。
勝又 正直
発行 2010年08月判型:A5頁:188
ISBN 978-4-260-01048-1
定価 2,860円 (本体2,600円+税)
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まえがき
(内容の予告として)

 昨今,「臨床心理学」のブームがあり,その対抗意識もあってでしょうか,「臨床社会学」という言葉がしばしば言われます。この「臨床社会学」というものを,たんなる時流に乗った一過性のものとして終わらせるのでなく,社会学をその根本に立ち返って再建すること,へとつなげていくことはできないでしょうか。私たちはそうした社会学の根本的な再建・再生を求めています。その試みとして,本書は次のような内容をもつものです。

 私たちは,「臨床社会学」を,「生きている現場と向き合う(にかかわる)社会学」,としてとらえます。
 I まず,ケアの現場に,はたして社会学は助言・介入というかたちでかかわっていけるのかを考えます。取りかかりとして,看護の現場で用いられている看護診断を切り口として,社会学からの介入をさぐってみます。自己概念や役割概念は,現場で患者を診ていていく際にも有効な考え方です。しかし,家族看護学には,家族社会学,すなわち旧来の家族社会学も,ジェンダー論以降の家族社会学も,あまり有効ではないようです。家族看護学に導入されているのは,ベイトソンの影響をつよく受けたシステム論的な家族療法の考え方なのです。
 社会学からケアの現場に教えるということはあまりできないようです。
 II しかし,社会学の大きな柱の1つである理解社会学というものは,ヴェーバーという学者が病気を体験することで生まれたのです。社会学と病いは,理解社会学においては密接な関係をもっています。私たちは,ヴェーバーの病気体験とそこから生まれた理解社会学を,『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の読み直しから探ります。そこには,労働への新たな意味付与(使命としての意味づけ),聖職者の禁欲という文脈からの解釈し直しがあり,理解社会学はそれを明らかにしたのです。ただ理解社会学は,習慣的な行為への着眼はあってもそれを十分に理論的に展開していないという問題がありました。
 III わたしたちはこの問題の解決と理解社会学のさらなる展開のために,看護理論とケアの現場からのケースに学ぶことにします。ヴェーバーが体験した病気による意味喪失と意味的世界の崩壊は看護理論でも考察されています。そこでは意味は,慣習と身体と状況へとつながるとして考察されています。さらにケアのケースから,病者の経験する意味喪失,さらに意味の世界を考察します。ナラティヴ・セラピーがするように,語り合うことで,新しい物語が創造され,新しい意味の付与がなされます。では新しい物語はどこから生まれてくるのでしょうか。いくつかのケースから,新しい物語は,メタファー(たとえ)を萌芽として生まれ,たとえ話(アレゴリー)の形をとって現れてくるのだということが予感されるのです。

 ケースとしてとりあげた,症例や研究例を提供してくださった方々に感謝します。なおケースはプライバシー保護のため多少手を入れました。

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まえがき
はじめに

第1章 ケアのための社会学
 1.看護のための社会学─自己概念をめぐって
 2.家族看護のための社会学

第2章 病いと社会学─理解社会学の誕生─
 1.異化する問い
 2.ヴェーバーの病気体験
 3.理解社会学の成立
 4.理解社会学の問題点

第3章 ケアに学ぶ臨床社会学
 1.意味をめぐる看護理論
 2.「臨床の知」
 3.病者の意味世界
 間奏曲 色づく街─病者の意味世界理解の試みとして─
 4.意味の文脈としての物語
 5.病いの物語
 補説 『死ぬ瞬間』再読
 6.メタファーを聞く─物語生成の核として─

まとめ
あとがき
索引

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