はじめての看護理論

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看護理論とそのもとになっている哲学や心理学,社会学の理論との関連がよくわかる。好評を博した書籍の改訂版(初版は日総研より発行)。今版ではあらたにレイニンガーの看護論の章を追加したほか,べナー看護論の記述を充実させた。各章の章末の参考文献は,さらに深く学びたい人の役に立つ。
勝又 正直
発行 2005年02月判型:A5頁:264
ISBN 978-4-260-33387-0
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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  • 目次
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I. 序論
 第1章 ナイチンゲールの看護論から
II. セルフケア論と看護理論
 第2章 ヘンダーソンの看護理論
 第3章 オレムの看護理論
間奏曲I 役割理論
III. システム理論と看護理論
 第4章 システム理論とは何か
 第5章 看護理論におけるシステム理論
     -概観とオレムの看護システム
 第6章 ロイの看護理論
 第7章 ロジャーズの看護理論
間奏曲II セルフ・コンセプト(自己概念)
IV. 臨床心理学と看護理論
 第8章 心理学と看護理論
 第9章 精神分析からカウンセリングへ
 第10章 ペプロウの看護理論
 第11章 現象学から実存心理学へ
 第12章 トラベルビーの看護理論
間奏曲III ノンバーバル・コミュニケーション
V. 文化人類学と看護理論
 第13章 文化人類学とレイニンガーの看護理論
VI. 現象学と看護理論
 第14章 人工知能論とベナーの看護理論
 第15章 ストレス理論とコーピング理論(1)
     生理学から心理学へ
 第16章 ストレス理論とコーピング理論(2)
     心理学から現象学へ
 第17章 臨床看護の卓越性 ベナーの看護観
あとがき
索引

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看護理論は苦手,嫌い,わからない,というあなたへ (雑誌『看護学雑誌』より)
書評者: 広井 良典 (千葉大学法経学部教授)
 この本の帯に「からんだ糸がほどけるように看護理論が理解できます」という表現がある。本書の特徴を実に見事に言いあてた言葉であるように思われる。

 私は,看護学そのものについては半ば門外漢に近い。しかし,近接領域にかかわるなかで,看護理論が「からんだ糸」のような面を多分にもっていることはつねづね感じてきた。その背景には,看護学が医学や心理学等関連分野のなかでみずからのアイデンティティの確立に苦闘してきた流れや,また,とくに日本の文脈では,(看護学に限らない)“輸入学問”のもつ独特の難解さがあったと思う。

 本書はそうしたなかにあって,その明晰さとわかりやすさにおいて,ある種「飛び抜けた」性格の本である。そのことを初版の時点から感じてきたが,このたび内容がさらに拡充された第二版が医学書院から出され,本書が看護学分野の標準的なテキストの一つとして広く読まれることになるであろうことを,まず単純に喜びたい。

◆「難しい内容をわかりやすく」

 著者自身があとがきで記しているように,日本では「簡単な内容を難しく説く」教科書や書物の類が多い。本書はその対極にあり,著者みずからが原案を書いたイラスト――このこと自体類書のなかでは異例と言える――とあいまって,信じがたいほどのわかりやすさでさまざまな看護理論の系譜とその内容,背景,現代や臨床現場にとっての示唆等々が論じられている。なかでも,社会学,心理学,文化人類学等,関連諸分野の影響や布置関係という大きな文脈のなかで,さまざまな看護理論のポジションや意味を鮮やかに位置づけている点が大きな特徴と言え,記述の平易さとは対照的に,内容は最高水準かつ先端的なものとなっている。加えて,「はじめての看護理論」というタイトルのとおり,主要な看護理論のエッセンスを順次整理・理解していくというスタイルをとりながら,本書を全体として見ると,そうした次元にとどまらない,いわば“「ケア」についての新たな理論枠組みの構築”(への基礎作業)といった性格をもっていることを読者は感じるであろう。

 あえて要望を述べるなら,改訂版という機会を使って全般的に最近の文献・議論の紹介などを行なってもよかったのではという点があるが,本書はある種の完結した全体性をもっている書物であり,これらは著者自身があとがきでふれている次の著作に期待するとともに,まずは本書が教育,研究,臨床等の各場面を通じ,看護分野において広く読まれることを願いたい。

(『看護学雑誌』2005年8月号掲載)

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