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看護管理者のための組織変革の航海術
個人と組織の成長をうながすポジティブなリーダーシップ

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なぜ計画通りに組織変革が進まないのか。取り組みに対するネガティブな感情をポジティブに転化し、自ら目標に向かって変化していける組織へ導くために必要なリーダーの心構えを考察。組織変革を成し遂げた事例を詳細に紐解きながら、型にはまったノウハウではない、ドラッカー時代から説かれている古くて新しい「看護管理者の役割」の本質を明らかにする。指示命令型のマネジメントを脱し、一歩先のマネジャーを目指す方へ。
市瀬 博基
発行 2017年08月判型:A5頁:256
ISBN 978-4-260-03216-2
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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まえがき

 この本は,雑誌「看護管理」(医学書院)に連載した「ポジティブ・マネジメントの航海術」を基に加筆修正を行いまとめたものです。本書の狙いは,先進的な組織変革を推進したリーダーの方々へのインタビューを通して,看護管理者のみなさんが組織変革に取り組む上での心構えやリーダーシップのあり方を明らかにすることです。

 この本には「すぐに役立つノウハウ」は含まれていません。どのような組織変革の取り組みであれ,その過程で個人と組織の成長を同時に実現するためには,単にノウハウを実践するだけでは不十分だからです。メンバーの1人ひとりが取り組みのポジティブな意味や意義を深く理解し,メンバーどうしで助け合い,学び合う関係をつくり上げられるよう働きかけるためには,組織変革を幅広い視野と長い時間軸で捉える視点が必要なのです。
 フランスの作家マルセル・プルーストが語っているように,何かを発見するまでの旅においてもっとも大切なのは,見たことのない風景を追い求めるのではなく,新たな「まなざし」を身につけることです。そうした意味で,本書が明らかにしようとするのは,組織が最終的に目指す場所に辿り着くまでの道筋を思い描き,実践に反映し,柔軟に行動を変えることを可能にする「まなざし」です。
 社会全体の大きな変化からどのように組織変革の必要性や新たなツールが生み出されるのか? ツールを整備し,組織への導入を図る過程で,どのような不測の事態が起きるのか? そしてそのような事態にどう対応すればよいのか? こうした視点から日々の取り組みを捉え直すことで,組織変革を推進するリーダーに求められるブレない心と柔軟な行動を両立させ,変革の取り組みを成功に導いていくこと,それが本書で考察する「航海術」の姿です。

 本書の出版までの「航海」では,大変多くの方々にお世話になりました。取り組みを取材させていただいた看護管理者の方々,そして手島恵先生,宇都宮宏子先生のご協力なしには,この本が生まれることはありませんでした。貴重な時間を割いてインタビューに真摯にお応えいただいたみなさまに深く感謝いたします。
 本書に登場される方々の職位の表記は,取り組み当時とインタビュー当時のものを文脈に応じて使い分けています。なお,引用文中の用語は,本書全体の表記に統一しています。
 また,医学書院の編集者,小齋愛様には企画段階から連載まで,そして宇津井大祐様には書籍化の段階で大変お世話になりました。篤く御礼申し上げます。

 この本が,多少なりとも看護管理者のみなさんの組織変革の「航海」にお役に立てることを願っています。

 2017年8月
 市瀬博基

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まえがき
イントロダクション 組織変革の航海術とは? いま看護管理に求められていること

PART 1 新たな「活動」を生み出す航海術
 第1章 「航海術」の理論的枠組みを構築する 集団の「活動」としての看護実践
 第2章 新たなツールを生み出す 庄原赤十字病院における「県民の森研修」の導入
  column 1 人には無限の力が秘められている!? 最近接発達領域の学びと人材育成
 第3章 ツールを組織に定着させる
      虎の門病院におけるコンピテンシー・マネジメントの導入
  column 2 チョコレートはどこにある? 「状況に埋め込まれた学習」の第一歩
 第4章 「活動」の矛盾と組織変革のプロセス これまでのまとめと今後の展望

PART 2 「活動」の範囲を広げる航海術
 第5章 「活動」の実践範囲を広げる 慶應義塾大学病院におけるEBPの導入
  column 3 「答え」を探す自分を探せ!
         マネジメントにおけるコーチングとリフレクションの役割
 第6章 「活動」領域間の連携をはかる
      荻窪病院における在宅療養移行支援の取り組み
  column 4 「分かる」を生み出す関係性?
         内省をうながすコミュニケーションが前提とする考え方
 第7章 古くて新しい組織変革の「航海術」 全体のまとめ

長いあとがき インタビュー・コーチング・リフレクション
         航海術としてのコミュニケーションの役割
索引

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組織変革の荒波を乗り越えるための「かじ取り」の方法をひもとく(雑誌『看護管理』より)
書評者: 村田 由香 (日本赤十字広島看護大学学部長・教授)
◆重要なのは前向きな態度と心構え

 看護管理者が組織変革を起こすために,今ある従来の方法を否定せずに,それ以上の成果を求めてチャレンジするには,柔軟な思考と時間とエネルギーが必要です。だからこそ,管理者の前向きな態度と心構えが重要になります。一方で,変革を起こすことは,組織内のメンバーにとっては負担になり,抵抗勢力もあるなど,葛藤が起こることも否めません。
 組織変革には,これらを乗り越えるために管理者がどのようにかじ取りをしていくのかという課題がつきものです。本書は,組織変革をどのように進めていけばよいのかを,読者に柔らかく語りかけるように分かりやすくひもといています。
 著者の市瀬氏が「まえがき」に述べているように,本書は「すぐに役立つノウハウ」があるようなハウツー本ではありません。組織は,さまざまな考え方や価値観を持った人々の集合体であり,その1人ひとりがどのように合意して「行動」に変化を起こし,かじ取りをするリーダーと協働していくか,どう荒波を乗り越えるのか,本書はその方向性を示しています。そういった意味で,「航海術」とタイトルをつけられていることにとても納得できます。

◆インタビューで明らかになった管理者の役割

 本書の第1章では,組織変革の特質とプロセスを考える上での理論的枠組みが示され,第2章以降では4つの施設で変革のリーダーとなった人々へのインタビューを通して,組織変革の過程が丁寧に解説されています。また,その背景にあるエンゲストロームをはじめとする理論的枠組みに照らしながら,取り組みの過程が分かりやすく説明されています。
 第7章では,これらの事例の考察から明らかになったことをもとに,組織に新たな「活動」を生み出すポジティブな感情の役割について考察されています。
 「長いあとがき」では,「コーチングの働きを持つインタビュー」が,これからの組織変革において看護管理者に求められるマネジメント手法の1つではないかと述べられています。組織変革の枠組みとプラス要素,マイナス要素,状況好転のきっかけの視点(p.235)は,看護管理者がメンバーと話し合いながら目標に向かうための指南になると思います。

◆組織に新しい風を吹かせたいと思う人へ

 私は,7年前に市瀬氏からポジティブ・マネジメントを学んだ後に,大学教員の立場から,看護管理カンファレンスや施設内研修を通して,多くの組織変革のきっかけづくりに関わってきました。本書を読んで,改めて,これまでに関わった組織がどのように変革を起こして目標地点に到着したのか,次の改革の航海を始めているのかを伺ってみたいと強く感じています。
 働き方改革の推進をはじめとする社会の変化,医療現場の著しい変革の中,先日は2018年度診療報酬改定案も示されました。組織のかじ取りをするリーダーの方々は,また新たな目標地点への出発の準備をされていると思います。
 自組織に,しなやかにポジティブに変革を起こしたい,新しい風を吹かせたいと悩んでいる看護師長だけでなく,組織の中核となっているスタッフの方々にもお勧めしたい一冊です。

(『看護管理』2018年3月号掲載)

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