BRAIN and NERVE Vol.78 No.10
2026年 10月号

ISSN 1881-6096
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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頸髄・腰髄疾患や末梢神経疾患は,脳神経内科医と整形外科医が日常的に向き合うcommon diseaseである。しかし,同じ患者を診ていても,神経回路から局在診断を進める脳神経内科と,責任構造を見極め治療方針を組み立てる整形外科では,その思考過程は必ずしも同じではない。本特集では,脳神経内科医が知っておきたい整形外科医の思考プロセスと,整形外科医が求める脳神経内科医の役割を共有しながら,両科の接点を探る。画像所見だけに頼ることなく,症候学と局在診断を軸に患者を診ることの重要性を再認識し,よりよい診療につながる連携のあり方を考えたい。

【鼎談】整形外科医と脳神経内科医はどのように連携すべきか 安藤 哲朗 , 松山 幸弘 , 神田 隆

整形外科医と脳神経内科医の思考プロセス—構造を揺さぶる診察と,神経回路を読む診察 竹下 幸男
整形外科と脳神経内科は,手足の感覚障害や筋力低下,歩行障害など共通の症状を診療し解剖学的診断を重要視するが,その診断プロセスは異なる。整形外科は責任構造を推定し,physical testや画像所見から症状を説明する。一方,脳神経内科は神経学的所見を神経回路上に配置し,局在診断から病型・病因診断へ進む。本論では,両診療科の思考プロセスの相違点と共通点を整理し,診断がずれる場面,相互紹介のポイント,さらに筋力評価を共通言語として定量化する試みについて概説する。

頸椎病変か末梢神経病変か—神経学的診察でどこまで明らかにできるか 安藤 哲朗
上肢の運動・感覚障害を呈する患者において,責任病変が頸髄,神経根,腕神経叢,末梢神経のいずれに存在するかを神経学的診察から推定する方法を解説した。感覚障害,腱反射,筋力低下の分布に着目し,頸椎症性脊髄症,神経根症,腕神経叢障害,末梢神経障害の特徴と鑑別の要点を整理した。さらに代表的な臨床状況を提示し,部位診断に有用な診察の実践的ポイントを述べた。

頸椎病変を手術する—整形外科医はこのように考える 松山 幸弘
上肢のしびれ,感覚障害,運動障害を呈する患者では,頸髄・神経根障害と末梢神経障害との鑑別が重要である。本論では,C8髄節・神経根障害を中心に,尺骨神経障害や後骨間神経麻痺との鑑別のポイントを解説する。筋力低下パターン,感覚障害の分布,電気生理学的所見を総合的に評価し,頸椎病変と末梢神経障害の併存にも留意する。また,術前の診断と術後経過が乖離する場合には脊髄神経の炎症性・腫瘍性疾患なども鑑別に挙げ,脳神経内科との連携が求められる。

腰椎疾患か末梢神経障害か—神経学的診察でどこまで明らかにできるか 北國 圭一
下肢のしびれ,痛み,脱力では,腰椎疾患による馬尾・神経根障害と末梢神経障害の鑑別が重要である。腰椎画像所見には偽陽性があり,責任病巣を画像のみで判断することはできない。本論では,筋力低下・感覚障害の分布を中心に,その他の神経学的所見も踏まえた局在診断を概説する。さらに,下垂足,ニューロパチー,筋萎縮性側索硬化症(ALS)との鑑別を通じ,神経診察でどこまで局在を明らかにできるか,補助検査をどう結びつけるかを述べる。

腰椎病変を手術する—整形外科医の視点からみた脳神経内科医との連携 井上 泰一 , 竹下 克志
腰椎疾患の手術適応は,MRI上の狭窄や変性所見のみで決まるものではない。本論では,神経症候と画像所見の整合性,鑑別診断,不安定性・アライメント・骨質・歩行機能など整形外科医が重視する評価を整理する。さらに,除圧術と固定術の選択,高齢者の周術期管理,患者説明を含め,脳神経内科医との連携に必要な視点を概説する。両科の相補的視点により,過小治療と過大治療を避ける重要性を述べる。

手根管症候群と腰部脊柱管狭窄症—アミロイドーシスはどのような状況で疑うか,どのように検査を進めるか 植田 光晴
野生型トランスサイレチン(ATTR)アミロイドーシスは,高齢者に生じる加齢性の病態であり近年注目を集めている。病初期に靱帯や滑膜にアミロイド沈着を生じ,手根管症候群(carpal tunnel syndrome:CTS)や腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal stenosis:LSS)が初発症状となる場合が多い。数年〜十数年後に,致死性である心アミロイドーシスを生じると考えられている。本疾患の生命予後や機能予後を改善し得る疾患修飾薬が利用可能となった現在,本症の早期診断・早期治療を実現するためには,病初期に生じるCTSやLSSを適切に捉えることが重要である。本論では,本症とCTS,LSSの関連性を解説するとともに,アミロイドーシスをどのような状況で疑い,どのように検査を進めるかを,整形外科と脳神経内科の連携の観点から,最新のエビデンスと自施設の知見を交えて概説する。

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特集 頸髄,腰髄,末梢神経──整形外科医と脳神経内科医の共同戦線

[鼎談] 整形外科医と脳神経内科医はどのように連携すべきか
安藤哲朗×松山幸弘×神田 隆

整形外科医と脳神経内科医の思考プロセス──構造を揺さぶる診察と,神経回路を読む診察
竹下幸男

頸椎病変か末梢神経病変か──神経学的診察でどこまで明らかにできるか
安藤哲朗

頸椎病変を手術する──整形外科医はこのように考える
松山幸弘

腰椎疾患か末梢神経障害か──神経学的診察でどこまで明らかにできるか
北國圭一

腰椎病変を手術する──整形外科医の視点からみた脳神経内科医との連携
井上泰一,竹下克志

手根管症候群と腰部脊柱管狭窄症──アミロイドーシスはどのような状況で疑うか,どのように検査を進めるか
植田光晴


■総説
マウス音声コミュニケーションの行動学的特徴と神経基盤
菅野康太


●現代に生きるノーベル賞を受賞した神経科学的発見
第2回 ロジャー・スペリー──大脳半球の分離による効果の発見
神作憲司

●原著・過去の論文から学ぶ
第24回 Hoover試験の原著に立ち返る
園生雅弘

●脳の「部分と全体」
第5回 小脳と摂食行動──生体の内部状態は小脳にどう影響するか
廣野守俊


■症例報告
左前頭葉脳圧排損傷および左内包膝部・視床前部梗塞により高次脳機能障害を呈した1例──多巣性病変による一過性Gerstmann症候群の検討
澤木優治,他

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