精神医学 Vol.67 No.4
2025年 04月号

ISSN 0488-1281
定価 3,080円 (本体2,800円+税)

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特集にあたって
企画:今村 明(長崎大学生命医科学域保健学系作業療法学分野/長崎大学子どもの心の医療・教育センター)
協力:金生由紀子(東京大学大学院医学系研究科こころの発達医学分野/本誌編集委員)

 現代の若者は,生まれながらにしてデジタル機器に囲まれて生活しており,「デジタルネイティブ世代」と呼ばれる。若者の生活ではYouTubeやTikTokなどのソーシャルメディアによる動画や,XやInstagramなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)による人とのつながりは欠かすことのできない状態となっている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以降,情報のパンデミック(infodemic)も続いており,基本的欲求として,食欲,睡眠欲,性欲とともに情報欲があり,ネットから得られる情報により安心安全の欲求・所属欲求・承認欲求が満たされる。逆にこの情報欲が満たされないと情報飢餓,情報への渇望,情報アディクションを生じることとなる。
 現代社会ではインターネット,スマートフォンの普及により,外出せずにギャンブルや買物(アルコール飲料や市販薬なども)を行える状況となり,新たな形態のアディクションがみられている。オンラインゲームやメタバースを活用したライブイベントでは,仮想現実が現実世界のリアルさを超えることとなり,若者たちの中ではリアル世界とバーチャル世界の重要度の逆転が起こっている。スマートフォンは最重要インターフェイスであり,心と体の一部と感じられるようにもなっているが,一方でスマートフォン過剰使用による睡眠障害,視力低下・内斜視,難聴,脳疲労,認知機能低下なども問題となっている。
 家庭や学校での「居場所」がみつからない若者たちは,ネット上でのつながりや都会の特定の場所での自然発生的なつながりから,少年非行の方向へ流れていくケースも多い。一方でSNSやオンラインゲームが唯一の「居場所」となっている若者たちも存在し,近年ではオンライン相談(人対人,人対生成AI)もさまざまな形で開設されており,ネットが「セーフティネット」として機能している場合もある。
 このように現代カルチャーによって,若者たちをとりまく環境に変化が起こっており,彼ら/彼女らのメンタルヘルスの在りようも変化しつつある側面と変化しない側面が両方存在する。今回の特集を通じて,日常臨床でこのような若者たちの心の世界に対する理解が進み,より充実した支援・治療が行われるようになることを期待する。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 現代カルチャーと若者のメンタルヘルス──デジタル情報社会における心の理解と支援
企画:今村 明    協力:金生 由紀子

特集にあたって
今村 明・金生 由紀子

現代カルチャーと若者のメンタルヘルス──仮想空間での所属欲求と承認欲求
今村 明

ソーシャルメディアより生じる新しい病態──機能性チック様行動を中心に
金生 由紀子

現代カルチャーを活用した自閉スペクトラムの人たちの支援
本田 秀夫・他

現代カルチャーとグレーゾーンの若者たち
原田 剛志

子どもや若者の居場所としてのインターネットの世界
関 正樹

【用語集】デジタルネイティブ世代の居場所を理解するために
関 正樹

居場所のない子どもたちと少年非行
木村 一優

現代カルチャーと依存症臨床の現在──市販薬乱用,ストロング系チューハイ,自殺
松本 俊彦

ゲーム行動症あるいはその周辺領域の子どもたちへの支援・治療
吉川 徹

現代カルチャーにおけるゲームアプリによるADHD治療
岡田 俊

デジタルデバイスを利用した睡眠障害の治療──スリープテックへの期待と課題
曽我 純也・他

アニメを活用した心理療法
パントー フランチェスコ

現代カルチャーに生きる子どもたちへの精神療法──オンライン音楽とメタバース
松田 文雄


●短報
注意欠如多動症(ADHD)に併存したチック症状にグアンファシンが奏効した1成人例
多田 幸司

●資料
日本における同性愛転向療法についての文献的調査
継松 力

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