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特集にあたって
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特集にあたって
福田正人(群馬大学名誉教授/本誌編集委員)
「いちど担当した患者さんには,一生付き合うつもりでいなさい」,精神科医として駆け出しの頃,先輩からそう教育を受けた。精神医学と精神医療の限界に基づく指導だったのだろうが,病気からの回復を求めて受診する身にとっては,「治療を終える」を目標にしたいのは当然の気持ちである。
精神疾患の特質から「治る」とまで言えないことが多いとしても,リカバリーの考え方が広がってきていても,「治療を終える」について受診者ときちんと話題にしたことがあったろうか。医療者として「治療を終える」ことを意識して目指してきただろうか。そうした反省から「治療を終える」をテーマとした特集を企画した。
医療機関で働いている医療者は,治療を終えていない患者に接しているため,「治療を終える」ことに悲観的で慎重すぎるという指摘がある。「治療を終えた後」についてのデータは,短期の再発や再燃についてのものが中心で,長期の「治療を終えた後」についての実証的なデータを得ることは難しい。
そこで,医療者が「治療を終える」に向き合いにくいと感じる,双極症・摂食障害・統合失調症を取り上げ,精神疾患の「治療を終える」ことを考える出発点になればと期待した。思いがけなかったのは,こうした難しいテーマへの視点が,各疾患3名ずつの執筆者で共通していたことだった。
双極症については「治療主体感」,摂食障害については「人生の納得度合い」,統合失調症については「仲間と居場所と可変性」である。その視点を,当事者・支援者も共有していることが,体験に基づくエッセイからうかがわれた。そうした当事者主導の「治療を終える」が,これからはより重視されるようになっていくだろう。
「怖かったけれども,『治療を終え』ても大丈夫でした」「治療を終えたのは,『自分でできることは何か』が,わかったから」(増川ねてる氏),「いったんは『急性疾患として治療を終える』ことを考えたほうがいい」「『治療を終える』ことが孤立や孤独につながらないことが,『治療を終える』ための条件」(青木省三氏),「『治療を終える』という選択肢も考慮した精神医療の枠組み作りが求められる」(藤井千代氏),本特集のそうした言葉に目を醒まされた。
「治療を終える」に向き合うのは医療者だけではない。当事者も社会も,向き合う時代を迎えてきている。この特集を通じて,「治療を終える」精神医療がより進むことを希望いたします。
収録内容
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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。
特集 「治療を終える」に向き合う
企画:福田正人
特集にあたって
福田 正人
■総論
精神疾患の「治療を終える」とは
青木 省三
「治療を終える」──リカバリーとその体験談
増川 ねてる
「治療を終える」を診療で話題にする
川口 敬之・他
精神療法の「治療を終える」
池田 暁史
治療終結に至った産後うつ病症例から学ぶこと
尾崎 紀夫
■双極症
〈essay〉 生涯一病人:躁鬱と修行
庄司 文雄
双極症で薬物療法を終えるということ
加藤 忠史
「治療を終えたい」に寄り添う心理社会的治療──対人関係・社会リズム療法
利重 裕子・他
「急性期治療を終えた」その後
寺尾 岳
〈column〉 編者より:双極症の「治療主体感」
福田 正人
■摂食障害
〈essay〉 経験者が考える「治療を終える」
山口 いづみ
神経性やせ症における「治療を終える」
西園 マーハ文
神経性過食症の「治療を終える」
野間 俊一
中高年の摂食障害治療を終える
山内 常生・他
〈column〉 編者より:摂食障害と「人生の納得度合い」
福田 正人
■統合失調症
〈essay〉 仲間が考える「治療を終える」
松本 キック
薬物治療においての「治療を終える」
橋本 直樹
統合失調症の「治療を終える」に向けた心理社会的治療
藤井 千代
治療のあとの社会復帰のために
大森 哲郎
〈column〉 編者より:統合失調症の「仲間と居場所と可変性」
福田 正人
●試論
身体症状症の治療終結──その可能性を高めるには
名越 泰秀・他
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