総合リハビリテーション Vol.51 No.10
2023年 10月号

ISSN 0386-9822
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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特集 高齢下肢切断のリハビリテーション

 血管原性切断者の増加,義足パーツの進歩,その一方で義足を作製されない高齢切断患者も多いこと,制度上の課題などが話題となっています.現在,高齢者の割合はさらに増加し,義足使用者の高齢化などの新たな問題も生じています.義足パーツは確実に進歩していますが,果たして高機能なパーツが実際に使用されているのか,切断状況やリハビリテーション治療に変化はあるのか,など気になる点は多いです.本特集では高齢下肢切断のリハビリテーションに関して,急性期から生活期まで幅広く現状と課題を執筆していただきました.

総論──下肢切断の現状と課題 片平 健人 氏ら
 急性期における血行再建による患肢温存,切断の適応,術後の断端管理を含めたリハビリテーション治療について詳細な解説をしていただいた.患肢温存のための治療技術が進歩し,切断を回避できる症例も増えていると考える.一方で,発見されたときにはすでに手遅れで切断しか選択できないことも高齢者では多いのではないだろうか.末梢動脈疾患や糖尿病による血管原性切断の割合は増加しており,これらの治療は単一職種・単一診療科での診療で完結するものではない.早期から多職種・各科連携を行い,切断を回避するようなかかわりを持ちつつ,切断・義足訓練を見越した準備と治療が必要である.

回復期リハビリテーション病棟における高齢下肢切断者の義足リハビリテーション 田中 洋平 氏
 回復期における切断患者のリハビリテーション治療について,具体的なパーツの選択から合併症のコントロール,フォローアップの重要性まで豊富な経験に基づいた解説をしていただき,とても参考になる.義足の処方は,使用場所や目的を念頭に置いて検討することになるが,真に義足の適応にならない患者として,切断術後の創部が治癒していない,リハビリテーションに取り組む意欲がない,全身状態が安定していない,重度の認知症や高次脳機能障害がある患者などを挙げている.入院中の歩行状態が最も良く,退院すると徐々に歩けなくなるということが起こらないように,患者の活動レベルを維持するようなサービスの導入なども重要である.

在宅での切断者の生活 高瀬 泉 氏ら
 実用的な屋外義足歩行を獲得していても,屋内では義足非装着での移動形態を選択し日常生活動作を行うことが下肢切断者の在宅生活にみられる大きな特徴である.具体的な症例を提示してわかりやすい解説をしていただいた.「義足非装着時」の生活も想定した日常生活動作の獲得と環境整備が重要であり,これらのことを念頭に置いたトレーニングの実施が大切である.高齢者では加齢や原疾患の悪化,新たな疾患の合併による身体・認知機能の低下,断端トラブルや義足の破損などへの対応が不十分となり,義足の使用を中断するリスクも高い.関係者が密に連携し,予測されるリスクに対して先回りした支援体制を構築することが望まれる.

切断者の疫学データからみる更生用義足の支給状況 西嶋 一智 氏
 宮城県と仙台市における身体障害者手帳や義足の判定件数などの興味深い調査を紹介いただき,切断者の疫学や義足処方の現状を解説していただいた.高齢者の血管障害による切断者で義足ユーザーの率が低いことは治療上の選択が影響していると推察される.しかし,回復期リハビリテーションにおいていったんは義足の適応なしと判断された下肢切断者が,退院後に入所先の施設からの勧めで初めての義足支給を求めてくるケースが散見されるという.義足の適応を考える際には歩行の再建の可否を中心に考えがちであるが,歩行再獲得に至らない場合であっても,立位保持の能力は生活再建の観点からも重要ではないか.

義足パーツの進歩 中村 隆 氏
 高齢下肢切断者用義足のパーツに必要な条件は,軽量であることとソケットの着脱を含めた操作が簡便であることが最優先事項である.これを念頭に置きながら,低活動の高齢切断者が義足適応となるために高機能なパーツの使用が必要との認識が広がり始めている.例えばパーツの選択で問題となる膝継手に関して最も重要なのは立位安定性であり,義足歩行時においては遊脚相より立脚相の安定化がより重要視される.さまざまな機能的固定膝継手の開発も進んでおり,今後の方向性としてより注目されるべきである.種々のパーツの進歩は切断者の機能を補うためのものであって,医療サイドの技術不足を補うものではない.肝に銘じなければならない.

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 高齢下肢切断のリハビリテーション

総論──下肢切断の現状と課題
片平 健人,他

回復期リハビリテーション病棟における高齢下肢切断者の義足リハビリテーション
田中 洋平

在宅での切断者の生活
高瀬 泉,他

切断者の疫学データからみる更生用義足の支給状況
西嶋 一智

義足パーツの進歩
中村 隆


●巻頭言
‘Parkinson Pandemic’にどう備えるか
佐々木 賢太郎

●入門講座
小児リハビリテーションに必要な評価法⑩
WeeFIM
杉山 みづき,他

透析患者の運動リスクと効果②
透析患者への腎臓リハビリテーションとしての運動処方
米木 慶,他

●実践講座
排便障害と排尿障害①
排便に関する基礎知識と排便障害に対する多職種での取り組み
神山 剛一

●症例報告
装具療法を併用した理学療法により屋内歩行自立に至った腰仙骨神経切除による下肢麻痺と下肢リンパ浮腫を合併した直腸癌局所再発術後患者の1例
本田 陽亮,他

●調査
周術期消化器がん患者における身体機能とADLの変化
皆田 渉平,他


●認知症者・家族をさまざまな観点や立場から支えるコミュニケーションスキル②
パーソン・センタード・ケアの観点から
村田 康子

●スポーツ用義足の最新事情⑤
義足を用いたシーズン・スポーツ──マリン・スポーツと雪上スポーツに着目して
大野 祐介

●子供の車椅子・電動車椅子①
判定・支給をめぐる課題
高岡 徹

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
三島由紀夫の『宴のあと』──昭和30年代の脳卒中対応
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「英雄の証明」──「感動」を喚起する素材としての吃音少年とその父の物語
二通 諭

●学会印象記
リハビリテーション医療DX研究会 第1回学術集会
桑原 渉

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