総合診療 Vol.35 No.6
2025年 06月号

ISSN 2188-8051
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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離島医療を学びプライマリ・ケアの未来を創造しよう!

金子 惇(横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 医学部臨床疫学・臨床薬理学講座)

 本誌2023年8月号(33巻8号)で「都市のプライマリ・ケア」という特集を企画させていただいた後にまず考えたのは、「いつか離島の特集をやりたい」ということでした。今回岩瀬先生という素晴らしい相棒と一緒に本特集を世に出せることを、本当に嬉しく思っています。
 自分が島で医師として勤務したのは3年間だけですが、本当にたくさんのことを島の方から教えていただきました。島にいる時から「こんなに楽しく臨床ができることは島を離れたらないだろうな」と思いながら働いていましたし、今でも、いつでも島に戻れるように、なんとか診療能力を維持しようと足掻いています。
 本特集の「離島医療イロイロ」の章の論文にあるように、島では楽しいことばかりでなく、大変なこと、つらいことももちろんあります。それでも「当事者」(p.638~の座談会より)として、「そこにいることができる」というのは、医師として、人として、得難い経験だと思います。自分は沖縄の離島しか経験していませんが、本特集を通して、日本にも、世界にも、実にさまざまな島があること、それと同時に、全く別の島でも共有できるものが確かにあることを教えてもらいました。
 山下論文(p.605~)にある「『人口が減っているのだからコンパクトシティにするべきだ』という主張が、当事者を不在にして叫ばれているのでは?」「小さいことや少ないことを社会悪のように扱い、人を都市に集中させることで失われてしまうものは何なのか?」という疑問は、自分も最近ずっと考えていることでした。本特集が、読者の方がそのことについて考え、自分にとっての「シマ」について考えるきっかけになればと思います。


岩瀬 翔(青ヶ島村国民健康保険青ヶ島診療所)

 まず、医師6年目で若輩者の私を本誌の企画担当にお誘いくださった金子先生、後輩の私からの執筆依頼を快く引き受けてくださり、多忙の合間に論文をご執筆いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。
 私は医師4年目から、式根島、神津島、青ヶ島の診療所を転々として、キャリアの半分を離島で過ごしました。どの島でも診療所長となり、指導医のいない中でここまでやってこられたのは、離島に暮らす方々に、医師としても人間としても育ててもらったからに他なりません。本特集内でも「島医者は島が育てる」という言葉が何度も登場するように、総合診療で必要なスキルの多くは、離島で暮らす人々が生活の知恵として自然と実践しているのだと、専攻医の勉強をしながら島の生活を学ぶことで日々実感しています。
 本特集は離島医療を軸に据えつつも、離島経験のない読者にも共通するスキルや考え方を届けることを目的に企画しました。本特集の執筆陣も、現在は国際機関、厚生労働省、大学や急性期病院などさまざまな現場におり、離島医療の経験を活かしながら、素晴らしく活躍しています。
 離島に限らず、人間が心豊かに生きるための関係性を「シマ」として地域を捉えることで、都市や大組織であろうとも通じる「シマ思考」が育ち、プライマリ・ケアの未来を創造できると信じています。
 本特集を読み終えた時、患者や同僚、家族、地域との関わり方や関係性がより良いものになることを願っています。

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 シマから学ぶ、プライマリ・ケアの未来──いざ、素晴らしき離島医療の世界へ
企画:金子 惇|岩瀬 翔

■総論
①医療もかわるシマ思考──離島だけじゃない、現代社会に求められるシマ医療
岩瀬 翔

②課題解決先進地域──タグボートとしての離島医療への取り組み【中ノ島・海士町より】
阿部裕志

③島のイノベーターから見た医療【甑島より】
山下賢太

④島づくりの観点から考える同心円上のウェルビーイング【大島、三宅島より】
伊藤 奨

■離島医療イロイロ
①小さい島[南大東島/沖縄県]
都市でも生かせる“人を診る”──新しい視点を獲得──離島医療の実践から得たヒントとは?
菊池徹哉

②大きい島[福江島、他/長崎県]
離島・へき地における長崎大学の取り組み──教育・研究機関としての大学の立場から
宮田 潤|野中文陽|山梨啓友

③南の島[父島・母島/東京都]
遠隔地離島とシマでの子育て
松平 慶

④北の島[奥尻島、他/北海道]
北の島からこんにちは──北海道離島医療の概要と課題
植村和平|淺井 悌|升田晃生|大野義一朗|佐々尾航

⑤離島と災害[舳倉島/石川県]
平時も災害時も島民に寄り添い、島民を守るには
小眞頼明斗

■これからの離島医療の話をしよう
①ぼくらが島に行く理由──若手医師がシマから描く、プライマリ・ケアの未来
小徳羅漢|室原誉伶|菊池徹哉|岩瀬 翔

②島医者は島が育てる
(1)私の沼った「シマ」医療
本村和久

(2)島医者経験は無限大の可能性を秘めている
長嶺由衣子

(3)ヨコのつながりで育てる島医療
中山 俊

③人が集まる離島医療 隠岐での実践、総合診療医養成──ゲームチェンジャーとなるために
白石吉彦

■離島医療を支える新しい形
①離島医療の担い手を育成する──ゲネプロによる1年間の教育プログラム
山口卓也|青木信也|高岡沙知

②島とnurse practitioner
橋 朋絵

[コラム①]医師がいない離島で働く看護師──情報通信技術を用いた死亡診断から考える離島医療の本質
杉山賢明

③遠隔医療
市村尚之|原田昌範

④世界の離島医療
齋藤 学

⑤医学生から見た離島医療
島津里彩

[コラム②]鹿児島大学の離島医療教育について
大脇哲洋

⑥島だからできる研究/島でないとできない研究
金子 惇

今月の「めざせ! 総合診療専門医!」問題


●Editorial
離島医療を学びプライマリ・ケアの未来を創造しよう!
金子 惇|岩瀬 翔

●ゲストライブ
「達人伝」最終回!──総合診療医・家庭医の「診療」とは? そして「日本人の精神性」とは?
草場鉄周|奥 知久

●「総合診療」達人伝|7つのコアコンピテンシーとその向こう側|8|最終回
家庭医療/総合診療総論
草場鉄周|奥 知久

●日常診療で出会う “おとなの発達障害”|明日から使える身体症状に対する問診と診断アプローチ|6
diagnostic overshadowing
廣田智也

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|101
心不全患者に神経症状?──その時あなたは何を思う?
新里康太|山本芳樹|佐藤直行、他(監修)

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|62
「言語化と鑑別」の原体験
小島伊織

●構造式で語る医学|薬物の交差反応や意外な副作用を学ぼう!|6
経口高分子製剤──マクロライド
上田剛士

●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|27
実践基本編⑦:代謝性疾患
森田沙斗武

●What's your diagnosis?|270
溶けててもいいの?
酒見英太

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