総合診療 Vol.33 No.8
2023年 08月号

ISSN 2188-8051
定価 2,750円 (本体2,500円+税)

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本号の特集を企画した背景やねらいをより詳しく知っていただける編集後記(座談会音声)がございます。ぜひお聴きください。

音声で聴く! オマケの編集後記 「都市のプライマリ・ケア」について語ろう!
金子 惇・藤沼康樹・密山要用

「都市のプライマリ・ケア」とは何なのか?
金子 惇(横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 医学部臨床疫学・臨床薬理学講座)

 今月の特集は「都市のプライマリ・ケア」です。「“都市の”プライマリ・ケアとは何なんだ!」「プライマリ・ケアはプライマリ・ケアだろう、これ以上分断するな!」というお叱りの声もあるかと思います。筆者としても、いたずらに分断を増やしたいわけではありません。むしろ、これまで光が当たりにくかった「都市のプライマリ・ケア」の魅力を発信して、プライマリ・ケアの幅広さ、面白さをさらに感じていただければと思っています。

 以下、特集の内容について紹介します。
 セクション1は、『ひとり空間の都市論』 1)などの著者である南後由和先生と、『健康格差対策の進め方:効果をもたらす5つの視点』 2)などの著者である近藤尚己先生と、そしてカリスマ家庭医・藤沼康樹先生との座談会「都市とは何か? 都市の健康問題とは何か?」(p.892~)です。多様なトピックスについて医療者と違う角度からボールを投げ込んでくれる南後先生と、それを受ける近藤先生、そして藤沼先生のやり取りには、私たちプライマリ・ケアの現場におけるたくさんのヒントが詰まっていますので、ぜひお楽しみください。
 セクション2(p.901~)では、臨床、研究、教育のそれぞれの場面においての「都市のプライマリ・ケア」における具体的な実践例を紹介しています。「周縁化」「外国人」「ケアの分断」「団地」といったキーワードや、それらを実践するために必要なコンピテンシー、「都市のプライマリ・ケア」を研究するために必要な定義や尺度、卒前・卒後教育、地域ケアなどのトピックスについて、日々実践している先生たちの熱い気持ちに触れることができます。
 セクション3(p.936~)は、本特集の白眉です。「医師焼き芋」のような医師が診察室から外に出るための取り組みに始まり、銭湯、量り売り+協働労働、農業×地域づくりなどを非医療者の視点で紹介する「ミクロ」。そして行政がプライマリ・ケアに求めるもの、プライマリ・ケア医同士の連携についての「メゾ」。さらに気候変動という「マクロ」。本特集はあくまで医療が足場なのですが、そこからもう一歩踏み出して、都市のダイナミクスを感じられる内容になっていると思います。
 エッセイ①の「都市部と郡部で学べることの違い」(p.960~)と、セクション2⑤の密内論文内にある“1.5拠点診療のススメ”(p.920)も、ぜひ併せてお読みください。
 そしてエッセイ②(p.962~)では、都市の地域包括ケアの最先端を走り続ける新宿・戸山の「暮らしの保健室」(室長:秋山正子先生)の現在を垣間見ることができます。

 筆者は15年間の医師生活のうち8年間を郡部で、7年間を都市部で過ごし、16年目に入った今年でちょうど半々くらいになったことに、この「Editorial」を書いていて気づきました。
 この15年間にさまざまな場所で出会った方々が原稿を書いてくださった本特集号には、これまでの医師人生で学んだことの半分「都市部のプライマリ・ケア」について、お役に立てることがたくさん詰まっていると思います(そして残りの半分「郡部のプライマリ・ケア」についてはまた別の形でと思います)
 本特集号、ぜひお楽しみください!

 人生とは、あるいは生活史とは、要するにそれはそのつどの行為選択の連鎖である。そのつどその場所で私たちは、なんとかしてよりよく生きようと、懸命になって選択を続ける。
(中略)こうしてひとつの、必然としか言いようのない、「人生」というものが連なっていくのだ。
(中略)そしてまた、都市というもの自体も、偶然と必然のあいだで存在している。  
(岸 政彦『東京の生活史』 3)より)

文献
1) 南後由和:ひとり空間の都市論.ちくま新書,2018.
2) 近藤尚己:健康格差の進め方──効果をもたらす5つの視点.医学書院,2016.
3) 岸 政彦(編):東京の生活史.筑摩書房,2021.

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医書.jpにて、収録内容の記事単位で購入することも可能です。
価格については医書.jpをご覧ください。

特集 都市のプライマリ・ケア ──「見えにくい」を「見えやすく」
企画:金子 惇

■セクション1 座談会
都市とは何か? 都市の健康問題とは何か?
藤沼康樹│南後由和│近藤尚己│(司会)金子 惇

■セクション2 実践! 都市のプライマリ・ケア──4つの現場から
@臨床
① 社会から周縁化された複雑なケースを診る──marginalized populationのケア
吉田絵理子

② 大都市の外国人診療──multicultureな中でのケア
弓野 綾│沢田貴志

③ ケアの分断とプライマリ・ケア
八百壮大

④ 事例で読み解く都市のプライマリ・ケア──住環境編(団地)
佐野康太

@研究
⑤ 都市のプライマリ・ケア医のコンピテンシー
密山要用

⑥ 都市のプライマリ・ケアに関する研究
金子 惇

@教育
⑦ 都市での卒前教育の実践
安藤崇之

⑧ 都市での卒後教育の実践と海外プログラムの紹介
八百壮大

@地域ケア
⑨ 都市での地域ケアの実践──経験則からの“3つのポイント”
密山要用

■セクション3 都市のプライマリ・ケアの役割──3つの視点から
@ミクロ
① 医者と屋台と医師焼き芋──「東京都国分寺市」での“街に出る!”地域活動の実践
岩浪 悟│平沼仁実

② 銭湯という社会的居場所──日常の動線上にケアを接続すること
平松佑介

③ 食材の量り売りのお店を協同労働で立ち上げました!──“人間らしい暮らし”を求めて
岡田 光

④ 大学生が取り組む農業×地域づくり──Agridge Projectの目指す地域モデル
清水 翼

@メゾ
⑤ 行政が都市のプライマリ・ケアに求めるもの
工藤恵子│新堀大吾

⑥ 都市のプライマリ・ケアの連携──GPs at the Deep End 川崎/横浜
金子 惇

@マクロ
⑦ 気候変動とプライマリ・ケア
佐野康太

■エッセイ 
① 都市部と郡部のプライマリ・ケアの違いと教育への活用
中川貴史│勝俣元都

② 都市の地域包括ケア──訪問看護を基盤に持つ相談支援の立場から──Compassionate citiesの再構築を夢見て
秋山正子

今月のQuestions
今月の「めざせ!総合診療専門医!」問題


●Editorial
「都市のプライマリ・ケア」とは何なのか?
金子 惇

●What's your diagnosis?|248
在るべきものが無い
山下恵実|上田剛士

●アスクレピオスの杖|想い出の診療録|40
“陽性感情”に向き合うその先に
鋪野紀好

●臨床教育お悩み相談室|どうする!?サロン|8
新入りでも教えていいんですか!?──Here comes a new challenger!
長野広之|佐田竜一|木村武司

●臨床医のためのライフハック|限りある時間を有効に使う仕事術|5
事務作業──「診断書」「紹介状」などを効率的に作成するには?
中島 啓

●ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学|5
ご遺体への問診
森田沙斗武

●オール沖縄! カンファレンス Ver.2.0|レジデントの対応と指導医の考え|79
発熱および左下腿発赤にて来院し、左膝腫脹を生じた高齢女性
宮城孝雅|仲里信彦|徳田安春(監修)

●Dr.上田剛士のエビデンス実践レクチャー!|医学と日常の狭間で|患者さんからの素朴な質問にどう答える?|41
意外に知らない「くしゃみ」の秘密
上田剛士

●患者さんには言えない!?|医者のコッソリ養生法|18
「やる気」と「集中力」を最大に引き出す生活とは!?④
須田万勢

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本号の特集を企画した背景やねらいをより詳しく知っていただける編集後記(座談会音声)です。ぜひお聴きください。

音声で聴く! オマケの編集後記 「都市のプライマリ・ケア」について語ろう!
金子 惇・藤沼康樹・密山要用

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