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神経救急・集中治療ハンドブック 第2版
Critical Care Neurology

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神経救急・集中治療の最前線に立つ臨床家のための実践的ハンドブックの待望の改訂版! 意識障害、頭痛、めまいなどの症候に加え、脳梗塞、重症筋無力症などの神経疾患の鑑別診断や初期対応・治療を、各領域のエキスパートが解説。「救命救急医学におけるcritical care neurology」「暑熱環境による中枢神経障害」「神経救急のための教育コース」などの新項目を追加。
監修 篠原 幸人
編集 永山 正雄 / 濱田 潤一 / 三宅 康史
発行 2017年08月判型:A5頁:672
ISBN 978-4-260-01754-1
定価 6,600円 (本体6,000円+税)

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監修の序(篠原幸人)/編集の序(永山正雄)

監修の序

 2006年の初版発刊当時,欧米には数多くの優れたcritical care neurologyを主題とした成書がみられたが,本邦にはこの問題を正面から取り上げた教科書は存在しないことを小生は指摘した。また2003年横浜において第44回日本神経学会総会を主催した際には,シンポジウムの1つにcritical care neurologyをとりあげ,本邦におけるその導入と体系化の必要性を強調したが,本邦の一般的な現状は今でもまだ監修者の希望するところまでは至っていない。
 確かに,近年の画像診断の目覚ましい進歩や新たな治療法の導入は,神経疾患の診断と管理を飛躍的に進歩させた。しかし,いまだ救急専門医でもあるいは神経内科・脳神経外科専門医にとっても,一般的な脳卒中や意識障害の管理は自信をもって行えても,重症筋無力症のクリーゼやGuillain-Barré症候群の超急性期,あるいはてんかん重積などすべての神経救急・集中治療に完全に対応するのは,多くの場合かなり困難であることが想像される。
 また,いわゆる神経救急・集中治療を専門的に行える医師の数は欧米の専門施設に比べれば本邦ではきわめて少なく,またそのような立場の専門医が所属していない施設が大部分であろう。さらに,一般の救急専門医に全ての神経救急に対する対応を求めるのは,不可能に近い。
 本書は各領域の現在のエキスパートの方々の多大な協力を得て完成した。その内容を見ると,部分的には一般の臨床神経学・脳神経学の教科書の記載をはるかに凌駕するものである。
 是非,神経救急・集中治療の患者さんに直面する施設に働く医師あるいはコメディカルスタッフの方々,ないしはそのような立場に興味をもつ方には,何時も傍らに本書を置いて参考にしていただけたらと思う。
 本版の編集・出版には国際医療福祉大学医学部神経内科学の永山正雄先生,帝京大学医学部救急医学の三宅康史先生に多大な尽力をいただいた。
 また,初版および今版で編集者のお1人として大変な御協力をいただいた北里大学神経内科濱田潤一先生が2015年急逝された。紙面を借りて,濱田先生のこれまでの本書編集に対するご協力に心から感謝申し上げる。

 2017年7月
 東海大学名誉教授
 国家公務員共済組合連合会立川病院神経内科
 篠原幸人


編集の序

 Mayo Clinic,Mayo医科大学神経学のEelco F.M.Wijdicks教授主催のNeuro-ICUおよび救急部門を私が初めて訪れたのは1998年春であった。この米国を代表する施設に直に接して感じたことは,critical care neurologyの米国神経学における台頭と,われわれの従来の臨床スタイルとの類似性であった。わが国ではその名前さえも知られていなかったこの領域を,わが国に適したスタイルで導入,体系化する必要性を強く認識し,帰国後に医学書院「medicina」誌にcritical care neurologyに関するレビューを1年間執筆したが,この連載が本書の契機,雛型となった。早速,恩師篠原幸人先生にご相談し,また当時,慶應義塾大学病院救急部講師であった神経内科医濱田潤一先生に編集をご支援いただき,全国の各領域の第一人者の先生方にご執筆いただいた。
 非常に多数の先生方にご活用いただいた本書初版は,国内外の神経救急・集中治療医学関連学会の先生方のご尽力,日本蘇生協議会による「JRC蘇生ガイドライン2010」,「JRC蘇生ガイドライン2015」策定,公表,出版とともに,近年の神経救急・集中治療医学・医療に関する関心の大きな高まりに貢献できたものと考えている。本書の最大の特徴の1つである鑑別診断に関しては,本改訂版でも詳細にご執筆いただいた。各先生方には,ご多忙の中,編者の求めに応じて,大変優れたレビューを完成させていただいたことに深く感謝申し上げたい。なお,本改訂にあたっては,帝京大学救急医学の三宅康史先生に編集に加わっていただき,さらに充実させることができた。関係各位のご協力に感謝申し上げるとともに,改訂までの期間を要してしまったことをお詫び申し上げる。初版および今版にご貢献いただいた故濱田潤一先生,故加藤元一郎先生,故山本纊子先生のご冥福をお祈りしつつ,改訂版の序としたい。

 2017年7月
 国際医療福祉大学医学部教授・神経内科学 永山正雄

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第1章 critical care neurologyの現在
 1 critical care neurology・emergency neurologyの必要性
 2 critical care neurologyの現状と課題
 3 救命救急医学におけるcritical care neurology

第2章 神経救急・集中治療を要する神経症候とその管理
 1 急性意識障害
 2 遷延性意識障害
 3 頭痛
 4 めまい・平衡障害
 5 神経眼科症候
 6 筋力低下・運動麻痺・運動失調
 7 てんかん重積状態(痙攣性,非痙攣性)
 8 不随意運動
 9 精神症候
 10 頭蓋内圧亢進・脳浮腫

第3章 神経救急・集中治療を要する神経疾患とその管理
 1 脳梗塞
 2 脳出血
 3 くも膜下出血
 4 特殊な脳血管障害
 5 急性脳症
   A.肝性脳症・高アンモニア血症性脳症
   B.尿毒症性脳症
   C.糖尿病関連脳症
   D.低ナトリウム血症とSIADH
   E.肺性脳症
   F.Wernicke脳症
   G.シナプスあるいは神経細胞表面抗原に対する抗体に関連した辺縁系脳炎
   H.ミトコンドリア脳筋症
   I.血栓性血小板減少性紫斑症
   J.敗血症関連脳症
 6 低(無)酸素・虚血後脳症
 7 急性中枢神経系感染症(脳炎・髄膜炎)
 8 慢性中枢神経系感染症
 9 Guillain-Barré症候群・Fisher症候群
 10 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー
 11 重症筋無力症およびクリーゼ
 12 多発筋炎・皮膚筋炎,周期性四肢麻痺
   A.多発筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)
   B.周期性四肢麻痺
 13 悪性症候群
 14 横紋筋融解症・ミオグロビン尿症
 15 重症疾患多発ニューロパチー・ミオパチー
 16 変性疾患-Parkinson病を中心として
   A.Parkinson病
   B.多系統萎縮症(MSA)等に伴う声帯麻痺の評価と治療
   C.非アルツハイマー型変性疾患
 17 脱髄疾患
 18 傍腫瘍性神経症候群
 19 急性中毒性神経疾患
 20 暑熱環境による中枢神経障害
 21 spinal emergency
 22 医原性神経系合併症
  22-1 薬物性脳症
  22-2 進行性多巣性白質脳症と薬剤
  22-3 急性散在性脳脊髄炎と薬剤
  22-4 薬剤性パーキンソニズム
  22-5 薬剤性異常運動(ジスキネジア),舞踏運動,ジストニア,アカシジア
  22-6 Guillain-Barré(ギラン・バレー)類似症候群
  22-7 薬剤による筋症,横紋筋融解
  22-8 輸液治療に関連して発生する代謝性脳症
  22-9 付録:近年報告された神経疾患治療薬による重篤な副作用

第4章 神経救急・集中治療における合併症の管理
 1 重症神経疾患における全身管理
 2 呼吸器系合併症の管理
 3 循環器系合併症への対応
 4 敗血症・特殊感染症への対応
 5 体液および酸塩基平衡異常への対応
 6 凝固線溶系異常への対応
 7 消化器系合併症の管理

第5章 救急・重症神経症候・疾患の評価と管理
 1 神経救急・集中治療のためのモニタリング
 2 神経救急・集中治療のための画像診断
 3 神経救急・集中治療のための電気生理学的検査
 4 神経救急・集中治療のための髄液検査
 5 神経救急・集中治療のための緊急血液浄化法
 6 体温管理療法の実際
 7 stroke care unit(SCU)の体制
 8 神経救急・集中治療におけるリスクマネージメント
 9 神経救急・集中治療のための教育コース
 10 神経疾患におけるdo-not-(attempt-)resuscitate〔DN(A)R〕と脳死
   A.神経疾患とDNR
   B.神経疾患と脳死
 11 改正臓器移植法と神経救急・集中治療疾患
 12 神経救急・集中治療に必要な法律

索引

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救急・集中治療に携わる全医療スタッフに最適の実践書
書評者: 野々木 宏 (静岡県立総合病院安全衛生管理監/集中治療センター長)
 本書の初版は2006年に出版された。約10年ぶりの待ちに待った,満を持した改訂といえる。

 日本蘇生協議会(JRC)が国際蘇生連絡委員会(ILCOR)に加盟を果たしたのが2006年である。JRCはILCORへ国際コンセンサス(CoSTR)作成者を多数派遣し,2011年に「JRC蘇生ガイドライン2010」を,2016年に「JRC蘇生ガイドライン2015」を出版することができた。「JRC蘇生ガイドライン2010」の画期的なことの一つは,CoSTRでは心肺再開後集中治療で取り上げているのみの「神経蘇生」の章を含むことである。これは本書の初版のメンバーの力によるところが大きいと思われる。さらに「JRC蘇生ガイドライン2015」では脳を含む全神経系を対象とするため「神経蘇生」から「脳神経蘇生」へと章名が改められた。救急蘇生領域の集中治療ケアには,脳卒中のみならず全神経系への取り組みが必須であることが,監修者の篠原幸人先生が本書の第1章の冒頭で強調されていることでよく理解できる。

 本書は「JRC蘇生ガイドライン2015」の勧告に基づいた実践の書で,集中治療の現場で役立つように構成されている。多数の分担執筆者によるものであるが,編集方針が一貫され,どの章を読んでも同じような記述形式であることが素晴らしい。各トピックの最初に「Pearls and Pitfalls」(ヒントと間違いやすい落とし穴)として注意点が要約されている。ここだけまず目を通すことで概要をつかむことができる。定義と原因に続き,「医療面接のポイント」「身体診察のポイント」や診療する上での注意点が記述され,診療の基本として何が重要であるかという著者らの姿勢がうかがえる。次に「初期対応」「その後の方針と各科へのコンサルテーション」とまとめられ,まさに実践の書であり,神経救急・集中治療がチーム医療であることが強調されている。最後には適切な文献が挙げられ,さらに探求したい読者にも優しい配慮である。

 集中治療における重症者管理では,A,B,C,すなわち気道と呼吸,循環が優先されてきたが,同時にDである中枢神経の評価とその対応も求められることが本書を通読すると明らかになる。これまで神経学的な評価は,神経内科あるいは脳神経外科の先生方へのコンサルテーションでタイミングが遅れていた。本書により非けいれん性てんかん重積状態の存在や心拍再開後の体温管理療法による脳保護の重要性がよくわかる。大いに反省して本書の内容をぜひ現場で生かしたいと思う。あえて注文をするとすれば,JRC蘇生ガイドラインで触れられていた頭部外傷の集中治療に関する記載が本書では少ないため,次回の改訂時には検討いただけると幸いである。

 救急蘇生は心肺脳蘇生であると約60年前にPeter Safar教授が提唱されていた通り,脳神経蘇生は現代の集中治療において誰もが認識している必要があり,これだけ神経系全体にわたって網羅されたハンドブックは,臨床の場で重宝することは間違いない。診療科を問わず,救急・集中治療に携わる多くの医師,そしてメディカルスタッフの方々に手に取っていただきたい一冊である。
神経救急・集中治療の新しいバイブルを手にする幸せ
書評者: 阿部 康二 (岡大大学院教授・脳神経内科学)
 2004年度から卒後臨床研修が必修化され,幅広い基本的臨床能力を身につけることを目標として,医学部卒業生が全国の基幹病院へ臨床研修に行く時代となって,もうすぐ15年になろうとしている。この間,大学医局を中心としたこれまでの教育システムから,より開かれた研修システムが少しずつではあるが定着してきつつある。すなわち,医学部で受けた教育を実際の臨床現場での研修によって自分のものとすることで,医師としての将来的な発展のための基礎づくりが標準化されたのである。同時に初期研修修了後は,引き続き後期研修を選択する人やより専門的分野への興味を実現したい人など,個々人によってさまざまな選択が可能となり,医師生涯教育の多様化時代といえる。

 医の原点は救急現場にありとはよく知られたことであるが,それまで必ずしも十分に救急や集中治療のトレーニングを受ける機会に恵まれなかった研修医たちにとって,新しい臨床研修制度下で救急現場研修が義務化されたことは歓迎すべきことである。救急現場における神経系の疾患は最も遭遇頻度が高いものの一つであり,脳卒中をはじめ,頭痛,めまい,ふらつき,しびれ,けいれん発作,髄膜炎,脳炎,せん妄など多様な症状から鑑別すべき疾患もまた多様であり,救急患者の意識レベルの判定や,基本的診察手技,脳画像検査,血液ガス分析,腰椎穿刺,脳血管造影など枚挙にいとまがないほど多数の検討項目がある。このような,一見難しいが基本をしっかり体得すればどのような救急・集中治療現場でも意外とすんなり対応できる神経救急について,これまで座右に置く参考書が少なかったのは不思議である。

 編者の永山正雄先生らはこの点に着目して早くから本書初版を出版して救急現場や集中治療現場に貢献されてきた。現代はまさに「新しい戦争」の時代であるといわれているが,19世紀プロイセンの軍人クラウゼヴィッツは不朽の名著『戦争論』の序文において「戦争の問題に関心をもつ人なら,恐らく一度ならず手にしても悔いないような書物を著したかった」と述べている。永山先生らは本書を編集するに際して,おそらく神経救急・集中治療について同様の決意をもって臨まれたものと推察される。実際このたび改訂された第2版を手にしてみると,各項目ともこの分野の第一人者の先生方による充実した執筆となっており,私たちは久しぶりにこの分野の新しいバイブルを手にする幸せに恵まれたという感想を持つ。本書は救急現場で日々苦闘する研修医だけではなく,救急・集中治療を専門とする医師にも極めて有用な内容であり,さらに脳神経外科医や神経内科医,麻酔・蘇生にかかわる医師など臨床医の方々に広く座右に置かれることをお薦めしたい。
神経系救急・集中治療の全てがここにある
書評者: 西山 和利 (北里大主任教授・神経内科学)
 私の尊敬する篠原幸人先生の監修による本書の初版が上梓されたのが2006年であった。当時の私といえば,日本人としてはやや長めの米国留学から帰国し,とある大学病院で脳卒中の急性期治療に携わっていた時期であったが,当然ながら早速本書を手にした。米国のCleveland ClinicやHarvard Medical Schoolで垣間見ることができた神経救急・集中治療の質と量を期待して帰国した私にとって,当時の本邦の状況は物足りないものであった。神経学の臨床能力に優れた神経内科医の絶対数が多くなかった上に,彼らの中で救急医療に取り組もうという者は極めて少なかった。そのような発展途上にあった本邦でも,ようやくこのような神経救急や集中治療に関する本格的な教科書が上梓された,と感銘を受けたものである。実に本書が本邦における神経救急の初めてと言ってよい専門書であったのである。

 本書の初版から10年以上が経過したが,残念ながら本邦のこの分野はまだまだ改善の余地があると言わざるを得ない。近年の画像診断の進歩や新規の治療法の出現は,神経疾患の診断と治療を大いに発展させ,それは飛躍的とさえ言えるかもしれない。しかし,非常に多岐にわたる神経救急や神経集中治療に対して,全てを高い専門性をもって遂行できる医師は数少ない。大部分の施設では,神経内科医,脳外科医,一般内科医,救急医などが,彼らの本来業務との兼務でこの分野の質の維持に奔走しているのが現状である。その観点からも,本書が全面的な改訂を経て第2版を上梓することは,神経系の救急医療に携わる者にとってこの上ない朗報であろう。本書は各領域の多くの専門家の努力によって完成したと聞く。執筆者数は実に73人にも及び,本邦のこの分野の総力を結集したといっても過言ではない。

 今版は永山正雄先生,濱田潤一先生,三宅康史先生の3名が編集された。いずれもがこの分野の第一人者であるので,仕上がった本書の出来栄えは大いに期待していただいて間違いない。神経救急・集中治療の患者さんに日々直面する施設で働く神経内科医はもとより,脳神経外科医,一般内科医,救命救急医,集中治療医,総合診療医,さらにはコメディカルの方々や医学生まで,幅広い読者にとって必携の書である。

 最後に,本書の編集作業の完成をみることなく,志半ばで2015年に急逝された濱田先生について一言述べさせていただく。濱田先生と私とは北里大で同じ釜の飯を食った仲間であった。本書は濱田先生が最後に手掛けられたお仕事の一つであり,その本の書評を担当する機会をいただけたことは私にとっても感慨深かった。濱田先生のご冥福をお祈りしつつ,本書評を閉じたいと思う。

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