DDW-Japan1999(第7回日本消化器関連週間)の話題から
内視鏡下手術の現況と問題点
胆嚢摘出術によって培われてきた内視鏡下手術の手技は,機器の改良・開発と相まって,各種良性・悪性疾患の消化器外科領域の手術に応用されている。教育講演10「内視鏡下手術はどのような症例に行なわれるか:消化器外科領域」で,わが国にこの術式をいち早く導入した山川達郎氏(帝京大溝口病院)は,「日本内視鏡外科学会」が行なった第4回アンケート調査の集計結果などを紹介しながら,内視鏡下手術の現況と問題点を次のように指摘した。
機器の開発とadvanced surgery
腸把持鉗子,腸圧挫鉗子,臓器圧排鉗子あるいは持針器や自動吻合器など,精巧な鉗子類の開発によって,手術の基本的手技である剥離,切除,摘出,縫合,結紮術などが開腹術と同様に施行可能となった。さらに,超音波吸引装置や超音波凝固切開装置の開発は,組織の切離や止血操作を簡便化し,より複雑な手術を可能としている。
また一方では,「“Hand assisted laparoscopic surgery”や“laparoscopically assisted surgery”の手技の応用は,“触知感覚欠如”という内視鏡外科医のハンディキャップを克服して,advanced surgeryを可能とした」として,日本内視鏡外科学会の「内視鏡外科手術に関するアンケート調査-第4回集計結果報告」における「腹部外科領域の内視鏡下手術について」の調査結果を(表1)のように報告した。
適応と問題点
なお,前掲の「内視鏡外科手術に関するアンケート調査」では,第3回集計時(1994年12月)の腹腔鏡下胆嚢摘出術施行症例は41595例,その内,開腹術にコンバートされた症例は2253例(5.4%)であったのに対して,3年後の第4回集計(1997年12月)では,それぞれ92255例,948例(3.2%)と急速な症例の増加とコンバート率の低下をみている(表2参照)。また,山川氏は内視鏡下手術が消化器外科領域の悪性腫瘍に適応されてしかるべき であるにもかかわらず,その普及が進んでいない現実(表3参照)について,「その原因は手技の未熟さ,prospective studyによる有用性を裏づける成績の欠如と手技に習熟した外科医の不足に起因するものと考えられる」と指摘。さらに,「現段階では内視鏡下手術を拡大手術の前段階的手術と位置づけ,これで根治が期待できる症例に適応を絞るべきであり,その一方で外科医は腹腔鏡下腫瘍外科手術の基本手技に習熟する必要がある。今後,患者が医師を選ぶ時代の到来は必至であり,習熟した外科医の増加は,このような問題を解決し,強いては内視鏡下手術の普及に寄与するものと確信する」と報告した。
表1 対象領域ならびに症例数 | ||||||
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表2 腹腔鏡下胆嚢摘出術施行症例数(総胆管結石症例は除く) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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表3 胃癌症例 | ||||||
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(表1-3ともに,『日本内視鏡外科学会雑誌』Vol.3.No.6〔医学書院販売〕より)