《特別編集》
〔鼎談〕
専門看護制度の現状・課題・展望 | ||||
坂田三允 (長野県看護大学/ 日本精神科看護技術協会副会長) | ||||
岡谷恵子 (日本看護協会常任理事) | ||||
仲地光明 (日本精神科看護技術協会理事) |
1996年に発足した専門看護制度(ここでは,日本看護協会の専門看護師および認定看護師制度,日本精神科看護技術協会の認定看護婦・看護士制度のことを指す)が,更新時期でもある5年目を迎えようとしている。この間,本制度がどのように定着し,また誕生した人たちは現場でどのような役割を担っているのか,さらにこの4年を振り返ってみての問題点や,今後の展望,制度の評価などについて日本看護協会(以下,看護協会)の岡谷恵子常任(担当)理事,日本精神科看護技術協会(以下日精看)の坂田三允副会長(本年6月より認定看護婦・看護士運営委員会の担当理事)ならびに仲地明理事(同委員会前委員長)にお話しいただいた。
専門看護制度の現状-誕生から4年目を迎えて
専門看護師と認定看護師
岡谷 看護協会では,専門看護師と認定看護師の2つの資格制度を設けました。専門看護師は大学院の修士課程を修了した人を対象にしており,アメリカのCNS(Clinical Nurse Specialist)をモデルにしています。また,認定看護師は,臨床の経験豊かで実践能力の高い人たちの力を発掘していきたいということから,経験だけでなく,一定の教育訓練によって修得すべき看護技術が必要な,ある限定された看護分野のエキスパートを育成する目的で設けた資格です。
新しいポジション-専門看護師
岡谷 専門看護師は現在までに15名誕生しています。ちょっと数が少ないと思われるかもしれませんが,これは,2年間の大学院教育が必要な上に,臨床現場での実践が必要なために,認定の条件を有する人が限られているということ。教育期間も長いのですが,その後必ず1年間の実践をしなければ認定審査が受けられないという仕組みになっていますので,教育を受け始めてから認定審査を受けるまでに最短でも3年かかってしまうこと。これらの条件が,資格取得のハードルを高くしているのだと思います。15人の方々のほとんどが,現在病院の臨床の場で専門看護師として働いていますが,中には副看護部長や婦長といった管理職を兼任している方もいます。専門看護師を導入する病院では,どちらもそのポジションをきちっと設けておられるようです。その意味では,パイオニアの人たちが専門看護師のイメージをきちっと作ってくださっていて,最近ではいろいろな病院から専門看護師を採用したいという意向も聞くようになりました。ただ,その供給が追いつかないのが現状ですね。
専門看護師の役割は,実践・教育・相談・調整・研究とされていますが,その役割についてまんべんなく期待されています。特に,他職種との調整能力を非常に期待されているところがあり,病院によってはスタッフへの教育機能を重視しているところもあります。スタッフのコンサルテーションをしながらケアの質を上げていく,そういう力を発揮することが期待されているのです。
また,最近では,領域の違う専門看護師を複数雇う病院も出てきています。専門看護師を雇った病院が,その能力の高さや役に立つ力を経験的に認めたということで,そのことが証明されつつあるのだと思います。ですから,精神看護の専門看護師を入れた後でがん看護の専門看護師がほしいとか,今とりあえずはリエゾンナースがほしいのだけれども,狭義の精神看護の専門看護師もほしい,というようなニーズもあるようです。実際に専門看護師と一緒に働いたり,専門看護師の働きを実体験することによって,専門看護師を導入することのよい面,効果を確認できたということだと思います。
ある病院の看護部長さんは,「スタッフの活性化につながる」とおっしゃっています。スタッフの仕事への意欲が高まり,以前は病棟内での研究を院内でも学会でも発表することなどほとんどなかったのに,専門看護師を導入してからは,自主的に,しかも毎年必ず1つずつ研究発表を積み重ねているということが起きているそうです。それはやはり専門看護師の研究指導の効果だと言えるでしょう。スタッフが活性化してグループ・パフォーマンスがあがる,1人ひとりの仕事への意欲も増す。これは,管理者としても変革を起こしやすい土壌ができてきますし,組織をいい方向に変えやすくなるとも言えますね。
実践への大きな期待-認定看護師
岡谷 報告が長くなってしまって恐縮ですが,もう1つの認定看護師については,発足当初から応募者がコンスタントにありまして,現在では救急看護,WOC(創傷・オストミー・失禁)看護,重症集中ケア,ホスピスケア,がん性疼痛看護の5領域で259名が誕生しています。大学院教育の専門看護師と違って,6か月間という短期の教育ですし,多くの人がトライしやすいということがあげられます。来年からは感染管理とがん化学療法看護のコースを新たに始める予定です。教育機関も,これまでは看護協会だけでしたが,神奈川県立看護教育大学校が,がん性疼痛看護と重症集中ケアの2コースの教育を開始しましたし,社会保険連合の船橋の研修センターも,将来的には認定看護師の教育を始めたいとの意向がありますので,徐々に教育機関も広がっていくだろうと思っています。
当初は,臨床で働いている方が,6か月間といえども仕事を中断してコースを取ることが可能なのかと懸念しました。しかし,現在入学している90%以上は病院から派遣されている方たちです。病院によっては無給のところから50%ぐらいの給料を払うところまでいろいろですが,送り出す側が積極的だということが言えます。研修を受けるために,それまで勤めていた病院を辞めなければならなかったという人は259名中数人という非常に少ないという結果です。また,送り出す側についていえば,国立病院からという方はほとんどいませんが,民間の私立病院が非常に熱心だという事実があります。
昨年の私どもの調査ですが,WOC看護分野の人たちの100%が,臨床現場に戻られてから専門外来を開設しています。病棟に所属しながら,専門外来で週に2日程度患者さんの相談に乗ったりすることを積極的にしているようです。今は,外来指導料が診療報酬で取れるようになっていますので,専門外来を開いて患者さんへの指導やサービスに努力することがしやすいのだと思います。
資格取得への高い意欲-日精看の認定看護婦・看護士
仲地 日精看は,精神分野の職能団体ですから,精神科領域に限って認定看護婦・看護士を養成しています。精神科の領域を老年期,思春期・青年期,救急・急性期,リハビリテーションの4領域に分けて養成を行なっていますが,この4つは,基礎的なところでは共通で,それぞれの専門領域が若干分離しています。今年の1月に第3回目の試験を行なった結果,全領域あわせて23名の認定看護婦・看護士が誕生しましたが,人数的にはまだまだといったところです。
もともと日精看の認定看護婦・看護士は,臨床でしっかりと実践能力を発揮して働ける人を養成しようということで作られた制度ですから,各職場でのモデルになれるような人を養成することを目的としています。実際には2人の方が臨床から離れて,教育現場に行きましたが,認定を取ったということをきっかけに学校から誘いがあったようです。カリキュラムの中に,精神看護学が精神科領域で柱立てされ,精神領域の教員が不足していることが要因としてあるのかもしれません。その他の方は,それぞれが職場で活躍されています。
単位の取得は,年間を通した研修会に参加をし,単位を積み重ねていくというスタイルですので,職場を辞める必要もありません。そのため,職場からの派遣というよりも,ご自分の意志で取得しようとする人の割合が高いようです。ただ,それがどの程度職場で理解されているかといいますと,「認定看護婦・看護士をめざして一生懸命勉強しているけれども,職場では自分が思ったほど評価されていない」という声を聞きます,現場ではこの制度がまだそれほど浸透していないのかもしれません。
先ほども申しましたように,認定看護婦・看護士の資格を取得したことをきっかけに教育現場へ勤務を替わられたり,婦長になられたということは若干あるようですが,しかしながら,実際に職場から派遣されてくる人が少ないことからみても,臨床現場での認識がまだまだということが言えると思います。
キャリアとしての道と実践者の道
岡谷 専門看護師の認定は看護協会がしていますが,教育は各大学院に委ねています。この制度の特徴は,教育プログラムおよび教育機関の水準を保持するために,教育プログラムそのものや教育機関についても認定するということにあります。例えば,専門看護師の場合は,日本看護系大学協議会(以下,大学協議会)と看護協会が協議をしまして,大学協議会が大学院における教育プログラムを認定するという形です。今,33の大学院の修士課程がありますが,その中で大学協議会から教育プログラムを認定されている大学院は4課程か5課程ぐらいです。現在準備中の大学が非常に多いので,この数はそのうちに伸びていくだろうと思います。この認定を受けた教育機関を修了しても,もちろん認定審査を受けなければいけませんが,教育内容についての審査は免除されます。
若い看護職の中には,自分のキャリアとして専門看護師の道に進みたいと思っている方が多いようですね。今まで,看護系の大学院というと,研究者や教育者を育てることが主眼だったのですが,それだけではなく修士課程で実践能力を高めて臨床の現場に出て行く,専門看護師になるという道ができたということに,非常に意味があるのではないかと思います。ですから,大学院への応募者は多くなるのではないでしょうか。
認定看護師の場合も,教育機関を審査し,認定しています。ただ,応募者はそれほど飛躍的に伸びているというわけではありません。各コース20人の定員ですが,多くのコースでは30-40人の応募があって半分は不合格になります。また,救急看護はいつも定員割れをしてしまっています。
費用ですが,看護協会での授業料は6か月で75万円です。神奈川県立看護教育大学校の場合は,県からの補助がありますので個人負担はもっと少ないと思います。また,ホスピスケアのコースについては日本財団の支援がありますので,自己負担は20万円で済んでいます。養成への援助があるということは,それだけ社会の期待も大きいということですし,今後,こういった支援団体が増えるのであれば,さらに個人の負担を減らすことができます。社会的にもこの制度に対する認知が高まるわけですから,そのための活動も今後は必要だと考えています。
仲地 日精看の場合,4つの認定分野を定めていますが,20単位の基礎科目は共通で,コースを決めて養成をするということではありません。また,一定期間での集中した研修でもありませんので,基本的に枠はないということになると思います。「認定看護婦・看護士になりたい」と希望された方が,全国各地で開催される研修会に自由に参加し,単位を取得することによって成立するわけです。
今,実際にその単位を取得して認定看護婦・看護士をめざしている方,つまり,これまでの研修会で少なくとも1単位を取っている方は約1200名います。積極的に取得しようという方は,だいたい2-3年で受験資格を満たす単位を取得しています。しかしそういう方は,もうすこし少ないだろうと思います。教育レベルについては,看護協会の認定看護師と差が出ないようにと心がけていますし,そのための講師の選定については気をつかっています。
また,基本的には日精看が養成のための教育をするというスタイルをとっていますので,府中市の研修会場での研修を通して教育がされています。基本的には「実践能力を高める」ことを主眼としています。ただ,実践能力を評価するというのは大変難しいことです。評価尺度については,現在調査・研究をしています。評価尺度ができれば,机の上での勉強と実習とを並行して評価することが可能になりますので,実践能力に主眼を置いた認定看護婦・看護士の本来の力が評価できるのではないかと思っております。
専門看護制度の評価
資格取得者の待遇
岡谷 専門看護師の場合には待遇への反映がみられます。専門看護師というのは新しいポジションですので,採用された病院では,どのあたりの職位と同等に位置づけるかを考えられるわけですね。病院によっては,副看護部長と同等の位置づけで管理職手当をつけるところもありますし,婦長の位置づけで婦長と同等の給料,手当を支払うというかたちをとっているようです。それから,スタッフ機能を果たすためにも,ラインに位置づけるのではなく,院内,つまり病棟間を自由に動き回れるような権限を与えられていて,執務する場所も個室を確保してもらっていることが多いようです。これは,現場の看護管理者たちの,看護をそういう方向に位置づけたいという意欲の現れだと考えることができます。認定看護師の場合は,まだまだそういう特別な待遇には結びついていないようです。
待たれる認定看護婦・看護士の増加
坂田 日精看の認定看護婦・看護士については,正直に申しまして,まだまだ看護職間の中で認知されていないというのが現状だと思います。認定された人数も少ないですし,実際に一緒に働いたことのある人たちも少ないでしょうから,精神保健福祉士とか,臨床心理士といった,精神科の領域で働くコメディカルの人たちの中にも認定看護婦・看護士というものが,きちんと位置づけられているとは思えません。この制度があること自体が知られていないのではないかと思います。そして,それはおそらく患者さんについても同じことが言えると思います。もうすこし人数が増えて,せめて各病院に1人ずつぐらい配置されるようになればずいぶん違ってくるだろうと思いますけれど。ただ,看護職同士ということになりますと,「へぇ,取ったの?」というレベルの病院ももちろんありますが(笑),きちんと評価して固有の役割を与えられた病院もあります。残念なのは,総合病院で働く看護職の場合,認定を受けているのに院内のローテーションで別の領域に回されてしまった,という事実があることですね。これは,やはり基本的に認定看護婦・看護士というものがきちんと認知されていないことによるのだろうと思っています。そういうことは,看護協会の認定看護師の場合にも起こり得ることでしょうか。
岡谷 ええ。ホスピスなどではあまりありませんが,例えばWOC看護の認定を受けた人が,ローテーションで小児病棟や産婦人科病棟といった,資格とまったく関係のない病棟に配属されるということもあります。また,救急看護を続けたくて認定を受けた人が,救急部から外されて内科病棟に回されたケースも,稀ですがありますね。これはやはり認知度の低さもあると思うのですが,まだまだ実績が示せていないというところに起因するもので,何を基準に評価をすればいいのかということもわかっていないのだと思います。
新しい役割への評価と期待
岡谷 一方で,専門看護師の場合にはかなりきちんと評価されていると思います。例えば,リエゾンナースが外来で実際にカウンセリングをすることがあるのですが,患者さんの中には精神科医にかかるのは嫌だけれども,看護婦になら話を聞いてもらおうとか,会ってもいいという方がいます。しかし,現在の診療報酬上では専門看護師が面接をしてもお金にはなりません。現時点では,医師の指示と業務の委譲が必要ですので,専門看護師の力量や役割を認識してもらう努力が必要です。それから,他職種からのコンサルテーションの依頼が非常に多い。特に,WOCの認定看護師には褥瘡のケアやストーマ・ケアのマーキングなどについての相談がきます。ストーマの場合にはどの位置につけるかが非常に大事ですので,きちんとしたマーキングをするために呼ばれます。
ですから,役割への期待は大きいと思います。医師にとっても,優秀な看護婦と一緒に働くことは非常に有効ですので,持っている力がどのくらいなのかということがわかれば,かなり積極的に活用してくれるだろうと思いますし,むしろ看護職より医師のほうが積極的に認定看護師を活用する土壌があるのではないかと思います。
専門看護制度の課題と展望
実践能力の評価尺度をどうするか
仲地 日精看の認定看護婦・看護士の場合ですが,現段階では実践能力の評価をしたいのですが,机の上での勉強,もしくは実習というかたちにしか表われません。彼らの実践能力をきちんと評価しきれてないということが課題の1つです。どの看護職についても言えることですが,その人の実践能力を誰がどう評価しているかということは,あまり明らかではありません。本当は患者さんに,「この看護婦さんに看護してもらってよかったか?」と聞くのが一番いいのでしょうが,現実的ではありません。何かきちんとした評価尺度を持ちたいとは思っています。それから,現在は4つの分野で認定を行なっていますけれども,本当に今の精神科をこの4つの分野でカバーできているのか,ということも考えなければいけません。「精神科看護を,いったいどれだけ細分化するの?」と言われてしまうかもしれませんが,例えば合併症や薬物嗜好の問題など,もうすこし専門的に取り組まなければいけない分野だと思いますし,その他にも専門化すべき分野もまだあるわけです。そこへの取り組みを,これからどうしたらよいのかもやはり課題になってくると思います。
坂田 現在の日精看の認定領域は,どちらかというと線でとらえたものです。要するに,思春期,老年期,急性期とリハビリテーションということですが,それを,例えばアルコールや嗜好の問題といった部分で取り出して,点の領域としてとらえていくかどうかを検討していかなければならないと思うのです。となると,分け方がまったく違ってくるわけですね。このような分類への要望はあるのですが,本当にそうしていくべきかどうかは,今後の大きな検討課題です。
また,精神科の病院というのは8割以上が個人病院で,看護職の年齢層もかなり高いというのが実状です。日本精神病院協会の調査によれば,現段階で60代以上の看護職が25%以上います。すると,その方たちがこれからどんどんと認定看護婦・看護士の資格を取っていく,というのはかなり非現実的なことですし,この制度を拡げていくことへの難しい課題ともなっています。加えまして,准看護婦の資格者が多いという実態もあり,ネックの一部かもしれません。
活躍できる場の提供と確保が重要に-スペシャリストへの課題
岡谷 専門看護師の養成をもっとスピードアップして,人を増やしていくことが1つの課題だといえます。そして,多くの病院に専門看護師を送り出して,そこで確実に実績をあげていただきたいですね。彼女たちには大学院での2年間の教育実績がありますので,場が得られれば非常に力を発揮し,自分をいわゆるリソースパターンとして提供していく能力を持っています。看護の質の向上のための専門看護師が活躍できる場の提供,確保がこれからは重要です。また,認定看護師の場合ですが,今,教育の方法に迷いがあります。経験のある看護職への技術教育というのは,今までになかった取り組みですので,どういう方法が最も効果的なのかということで,その方法を模索しているところです。
それから,専門分化にともなう知識体系の問題ですが,臨床実践能力の評価について仲地さんがおっしゃいましたが,看護にどういう援助技術があるかということがそれほど明確になっているわけではないと思います。
救急看護を例にとれば,何が他の分野とは違うのか,救急看護に特別な技術や援助方法は何なのかといった時に,「それはこれです」と端的に述べるということが難しい。それを看護の学問自体で確立していないわけです。大学で救急看護を専門にしている先生方に,コアになる部分は何か,認定看護師の技術として必要なものは,とお尋ねしても,人によって言うことがまったく違うわけです。そういう学問の土壌の上に,スペシャリストを育成しようということの難しさもあるわけです。
ある特定の分野に特化して,そのスペシャリストを育てていくことで,質の高いケアの提供を保証していくのだという意識を,看護界全体が共通に持って進めていかなければ,とても発展していくような制度ではないのではないかと思っています。これはかなり大きな意味での課題になるかと思います。
組織変革に果たす役割
岡谷 アメリカでは,去年の1月に新しい法律が施行されまして,CNSとナース・プラクティショナーについては,診察,診断,往診,栄養指導など,医師と同じ医療行為をした場合には,メディケアから直接その実施者であるナースに報酬が支払われるようになりました。これまでも,ニュージャージー州などごく一部の州では州法にのっとり支払われていましたが,今度は連邦政府の法律とされたわけで,これは非常に画期的なことです。看護職がしたことについて,医師と対等の報酬が支払われることが可能になったわけです。ただし,これはCNSやナース・プラクティショナーという,特別の教育を受け,その能力があると評価をされた看護職に対するものです。
やはり,診療報酬上のバックアップがないと人件費が高くなるだけですから,なかなか病院としても専門看護師を導入しにくいと思います。そのためにも,アメリカのようなシステムを作っていくことも大事です。制度を進めるためには実績を示すことが必要ですし,実績を示すことで制度も変わっていくと思いますが,システム作りが同時に進行するとよいですね。
坂田 診療報酬に反映できるようになるためには,やはりある程度の人数がいないといけませんね。例えば,各病院に設置義務みたいなものができたりすればすごいことだと思うんですが,そこにいくためには,やはり人数が増えて,その人たちの実践能力について「よいものだ」という評価が得られないといけません。ですから,今までに認定された人たちに頑張ってもらいたいということが,本当にありますね。
岡谷 評価研究をしようと思っても,今の人数だとできませんよね。
坂田 そうですね。
仲地 まず,現在認定看護婦・看護士として認定されている人たちが,自分の臨床の場で,立場はどうであれリーダーとして,その力をしっかり発揮できれば,施設としても養成していこうということになるでしょうね。
先ほど岡谷さんもおっしゃいましたが,医師からどう評価されるかがとても重要です。精神科の場合は民間病院が多いですから,その人たちをオーナーがどう評価するかがとても大事なんですね。オーナーの評価が高ければそのまま定着するということもあります。現役の認定看護婦・看護士たちがリーダーシップを発揮してくれることに大いに期待したいところです。
資格の更新
仲地 5年目の更新が迫っていますが,それをどうしていくかも大きな課題ですね。いったん取得すれば生涯有効という看護婦免許とは違い,この制度については5年ごとの更新が必要と,両協会ともに明文化していますので,その更新時の評価をどうするのか,また更新時教育をどうするのかというあたりが,差し迫った課題です。1期生たちは,それがすぐ迫っていますので,「いったい自分たちはこれからどうなるのかしら」と注目しているのではないかと思います。岡谷 専門看護師を増やしていこうと思うと,現行の認定方法はけっこうハードルが高いですので,まずそのあたりをどうするかが優先的な検討課題としてあります。ただ,5年ごとの更新に関する仕組みというのは,看護協会ではある程度かたち作られています。15名のうちの4,5名が該当しますが,全員が更新申請してくれるかどうかが逆に心配です(笑)。
坂田 1度更新を逃すと,無効になってしまうのですか?
岡谷 そうです。もう1回最初からやり直しということになります。
坂田 それは大変ですね。
仲地 資格を取得することだけが目的になってしまうのを防ぐためにも,更新制度は必要なことですね。
編集室 資格を取る方がどんどん増えて,看護が変わっていくことを期待して鼎談を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(了)
●日本看護協会:専門看護師の分野と認定数
精神看護(6名),がん看護(7名),地域看護(2名) 計15名 ●日本看護協会:認定看護師の分野と認定数 救急看護(55名),WOC(創傷・オストミー・失禁)看護(150名),重症集中治療(29名),ホスピスケア(8人),がん性疼痛看護(17名) ※感染管理(2000年より開講予定)計259名 ●日本精神科看護技術協会: 認定看護婦・看護士の分野と認定数 思春期・青年期看護(4名),老年期看護(4名),救急・急性期看護(8名),リハビリ看護(5名) 計23名 |