Electrophoresis '99開催
国際電気泳動学会'99(Electrophoresis '99)が,橋本信也会長(慈恵医大教授)のもとで,Meeting of International Council of Electrophoresis Societies(ICES)'99および第49回日本電気泳動学会春季大会(JES'99)との合同学術集会として,さる5月25-28日,大宮市の大宮ソニックシティにおいて開催された。
日本電気泳動学会は今年創立50周年を迎えており,また過去1983年に東京において第3回国際電気泳動学会が盛会裡に開催されている。
学会第1日目には,櫻林郁之介ICES'99組織委員長(自治医大大宮医療センター)の開会の挨拶に続いて,同会の第2代会長平井秀松氏を顕彰して設けられた“Hirai Prize Ceremony”が行なわれ,橋本会長よりP. G. Righetti氏(イタリア,Verona大)とJ. E. Celis氏(デンマーク,Aarhus大)の2氏に賞状が授与された。
続いて両学会のジョイントセッションとして開かれたレクチャーセッション(1)Special Lectureでは,「Hirai Prize Lecture」として,「Novel Electrophoresis Supports and Analysis of Biological Macromolecules(Righetti氏)」,「Two-Dimentional Gel Electrophoresis and Cellular Protein Database(Celis氏)」の2演題が発表された。
日本電気泳動学会の50年;その過去
次いで橋本会長は,「50Years of Japanese Electrophoresis Society」と題して,前述したように今年創立50周年を迎えた日本電気泳動学会の50年の歴史の概要を次のようにレビューした。周知のように,1937年にArne Wilhelm Kraurin Tiselius(スウェーデン)によって開発された電気泳動装置の出現によって電気泳動法は広く普及した。Tiseliusは,U字管を用いて自由溶液中での電気泳動(移動境界法)による蛋白質分離装置(Tiselius電気泳動装置)を開発。この装置を用いて,結成蛋白質をアルブミン,α1-,α2-,β-,γ-グロブリンに分離し,Kabatとの共同作業のもとで血清γ-グロブリンが抗体からなることを証明した(これらの業績に対して,1948年にノーベル化学賞を受賞)。
一方わが国においては,1947年に平井秀松氏や島尾和男氏らが,Tiselius電気泳動装置の国産第1号機の組み立てに成功し,翌年にはわが国最初の血清蛋白質の分離像が報告された。これを契機にわが国における電気泳動法を用いた蛋白質の研究が盛んになり,1950年に児玉桂三氏を会長に電気泳動研究会が設立され,翌年の1951年には同研究会の機関誌『生物物理化学(Physico-Chemical Biology)』が発刊された。以来,電気泳動研究会は50年間,わが国の電気泳動法の開発や普及に貢献した。
日本電気泳動学会の50年;その現在と未来
現在は,「日本電気泳動学会(Japanese Electrophoresis Society)」として医学,理学,工学,農学,薬学などの研究者をはじめ臨床検査技師や関連企業の技術者が多く参加している。近年では,蛋白質のみならず核酸の研究に電気泳動法が用いられるようになり,日本電気泳動学会は分子生物学など生命科学分野の研究者との学術情報交換の場としての機能を有するに至っている。今後,ポストゲノム解析プロジェクトであるプロテオーム解析プロジェクトの指導的役割を果たすことも期待される。また日本電気泳動学会の会長でもある橋本氏は,同会の主な行動指針として次の諸点を列挙してレクチャーを結んだ。
(1)学会開催(年2回)
(2)機関誌『生物物理化学』の発行(隔月)
(3)初心者のためのトレーニングコース
(4)2つの賞の授与(「児玉賞」「平井賞」)
(5)論文集の発行
(6)ICESへの貢献
広範多岐にわたるセッション
また同学会では,「インターネット・オンライン・ポスターセッション」,150題におよぶ「ポスターセッション」,3題の「ランチョン・セミナー」の他,次のような広範多岐にわたる「レクチャーセッション」が企画された。(2)Plenary Session "Electrophresis Now"
(3)Electrophoresis of Cells and Particles
(4)Affinity Electrophoresis
(5)Two-Dimensional Gel Electrophoresis for Proteomics and Genomics
(6)Protein Electrophoresis in Pathological Biochemistry
(7)Proteome and Protein Database
(8)Lipoprotein, Apolipoprotein and Its Clinical Significance
(9)Combination of Electrophoresis with Mass Spectrometry
(10)Cell Function Analysis
(11)Capillary Electrophoresis 1
(12)DNA Electrophoresis in Molecular Pathology
(13)Capillary Electrophoresis 2
(14)Electrophoresis in Genetic and Forensic Analysis