FD(Fuculty Development)とは何か?
PaPaSME '99の基調講演より
「FDとは一体何か。これに対する共通の認識がなければ,Wilkerson氏のこれからの講演も理解困難になるでしょう」。
PaPaSME'99冒頭の基調講演「Strategies for Improving Teaching Practice:A Comprehensive Approach to Fuculty Development」で司会の黒川清氏(東海大学医学部長)はそう前置きし,3週間前に合宿形式で行なわれた東海大学のFDプログラムでのエピソードを紹介。また自らの問題提起に対し,「FDとは,メンバーを構成する一員として効果的な教育者になるために,お互いに啓蒙し合い,教え合い,学び合い,高めあっていくことではないでしょうか」と提言して,FDの概念規定の重要性を指摘した。
包括的FDプログラム
続いてWilkerson氏は,「今世紀の前半までは,専門領域のエキスパートであれば,即教えることは可能であると考えられてきたが,知識を持つことと教えることは必ずしもイコールではないことが,特に授業を受ける学生側の発言から指摘された。また,医学部の教授陣に対する調査によって,大半の教師が教授法を学んだことがなく,その学び方も“他の人を見て勉強した”ものであり,その後,FDによって“教えることを身に付ける”ことが普及し始めた」と指摘。そして,「過去30年間,教育改善の戦略は,教授法の支配的な理論((1)70年代の行動科学に則った学習理論,(2)80年代の認知心理学,(3)90年代の社会構成主義など)に影響されてきた」とFDの概念の歴史的変遷を概説した後に,FDへの包括的アプローチを次のように要約した。UCLAのFacultyのレベルは(資料1)のようになり,包括的FDプログラムはこれらのすべてのレベルの人たちを対象とするものである。
また包括的FDのモデルは(資料2)のようになり,4つの分野において機能する。特に,「Professional Development」においては,若手のメンバーに対して,教育機関に入ることによって,どのような役割が期待されているのかを理解してもらうことが重要になる。さらに,「Instructional Development」では,講義,スモールグループ・ティーチングなどの基本的な技法をワークショップの形で教える。
(資料1)Academic Educators
(1)Good teacher (2)Skilled teachers with PCK(Pedagogical content knowledge) (3)Educational leaders (4)Educational scholars (5)Organizational leaders committed education |
(資料2)Comprehensive FD Model
(1)Professional Development (新人オリエンテーション) (2)Instructional Development (教授法の能力開発。“FD”と言うと,ほとんどの人がこの内容を想像する) (3)Leadership Development (カリキュラムを作る立場の人,変化を促進する人などのリーダーを育成する) (4)Organization Development |