医学界新聞

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内

腎不全医療に関心を持つすべての人に

腎不全の臨床(第4版) 杉野信博 著

《書 評》平沢由平(信楽園病院顧問,日本透析医会長)

 このたび,杉野信博先生(東女医大名誉教授,腎研究会理事長)が名著『腎不全の臨床』を10年ぶり に加筆して第4版を上梓された。この間に進歩した診断法や薬剤あるいは新しい血液浄化法や合併症対策 などが加えられて,最新で一層充実した好書となっている。

考えながら読むべき書

 それにしても,これだけ豊富な内容を多くの図表や写真を入れながらわずか312頁の書にまとめあげ てしまう著者の力には脱帽せざるを得ない。これは基礎医学と臨床医療に通暁した者のみになせる業であ ろう。文章は流麗であり,かつ,要点をおさえて簡潔であるので,読みやすく理解しやすい。しいて注文 する点があるとすれば,記載が簡明かつ流暢であるので,うっかり読み進んでしまって,大切なことを見 落とす可能性である。しかしこれは著者の責任ではない。考えながら読むべき書であり,著者のねらいの 1つであろう。筆者は冗長を嫌う合理主義者としての著者の面目と優れた教育者としての姿を本書の中に 見る思いがする。
 腎不全の臨床は原疾患の治療,透析療法,腎移植治療が3本柱である。まず,急性,慢性の腎病変の 診断,病態把握と治療対策から始まる。腎の機能的特性から腎不全が進行すれば,その病態は全身的な広 がりを持つことになる。すなわち,水・電解質や酸塩基平衡の障害,代謝物や薬物の腎排泄障害,エリス ロポエチンや活性型ビタミンDの産生障害,血管作動性因子の異常,種々の代謝異常などに由来する病態 が出現する。透析療法に導入されれば,透析膜の機能や透析液の組成や抗凝固剤やブラッドアクセスの存 在などが,さらに病態に影響を与えることになり,透析が長期に及べば,栄養障害や不十分治療に根ざし た新しい合併症も加わり,全身的,局所的にしばしば複雑な病像を呈することになる。腎移植では患者選 択や拒絶反応,あるいは感染や免疫抑制剤の副作用などの問題が加わる。

内容豊富な入門書

 これらすべてを解説したテキストは通常,非常な大冊となり,専門従事者でないとなかなか読みこな せない。引けをとらぬほどに内容が豊富で,理解しやすく,小冊であって,いわば入門書として有用な書 物は多くの関係者の望むところである。『腎不全の臨床』第4版はこの条件を満たして他に類をみないも のと評価したい。医学生や研修医のみならず,腎不全医療に関心を持たれる方々に推薦したい好個の書で ある。
(A5・頁312  定価6,180 円(税込) 医学書院刊)


自作のシェーマで臨場感あふれる手術書

膀胱全摘除と尿路変向・再建のテクニック 小川秋實 著

《書 評》折笠精一(東北大教授・泌尿器科学)

 最も尊敬する泌尿器科医の1人である小川秋實教授の手術書を読ませていただき,その書評を書くこ とになり誠に光栄である。小川教授はまことの臨床医である,と意識するようになったのは随分古いこと だ。残念ながら同じ教室で勉強したこともないし,直接手術を拝見したこともない。しかし,東大の講師, 助教授の頃から今日に至るまでの論文あるいは学会での発言を見聞きし,「患者のためにならない ことはしない」という徹底した哲学には大いに影響を受けた。日常の臨床において,ややもすれば 興味本位で多くの,しかも侵襲的な検査をしてしまう。極端なことを言えば,不必要な手術までしてしま う。これを強く戒めて臨床を実践して来られた小川教授には,我々は学ぶべきところが多い。

生き生きとしたシェーマと平易な文章で解説

 さて,『膀胱全摘除と尿路変向・再建のテクニック』である。本書全体に先に述べた哲学が貫かれ, さらにすべて自らが描かれたシェーマを使って解説されている。手術書はシェーマが命である。したがっ て,画家ではないが実際の術者である著者が集中して見ているところがシェーマとして描かれているので, シェーマはすべて生き生きと臨場感にあふれ,読者が知りたいこと,学びたいことがすべてシェーマから 見えてくる。文章による解説は,面と向かった弟子に説明するように平易な言葉で,それでいて核心を漏 らさず解説されており,すぐにでも綺麗な手術ができそうな気になる。長年にわたる工夫の結果完成され た手術法を,後に続く者に正確に伝えたい,実際の現場で役立たせてほしいという著者の願いが言葉の端々 に滲み出ている。さらに解説で言い足りないところを《One Point Advice》として,「リンパ節郭清のコツ は,血管を血管鞘から剥離することにある。剥離した血管鞘とともにリンパ節を摘出する」「膀胱側方靭 帯断端の結紮糸は滑落しやすいので,操作には助手との息を合わせる」などと解説する。結局全体として, 言いたい事は漏らさず解説されていることになり,読者が得る知識は予想以上に多い。
 また,《Coffee Break》として「手術中の集中力は4―5時間が限度である。それ以上になると集中力が 薄れるので,そのようなときは手術チームを交替したほうが丁寧な手術ができる」「術後感染予防として 抗菌薬を手術日から1―2週にわたって投与するのは,無意味どころか有害なことが多い」「手術に際して 皮膚は消毒しても2―4時間で消毒前の状態に戻る」などと,嬉しいコメントが述べられている。その内容 は誠に豊富,かつ重要なことばかりで,《Coffee Break》だけでも立派な外科医向けの教科書となる。
 思い付くままに読み終えたあとの感想を述べたが,真に役立つ手術書がついに誕生したというのが偽 らざる結論であり,今後広く読まれるものと確信している。
(A4・頁176  定価12,360 円 (税込) 医学書院刊)


現代の脳に関わる臨床医に必携

画像診断のための 脳解剖と機能系
Kretschmann, H., Weinrich, W.著/久留 裕,真柳佳昭 訳

《書 評》鈴木二郎(東邦大教授・精神神経医学)

画像診断学の目ざましい進歩

 今日,画像診断学の進歩は目ざましいものがあり,臨床医学の診断,治療,研究を全面的に一新した と言っても過言ではない。全身諸臓器の中でも,ことに脳に関してin vivoの状態で,非侵襲的に組織の形 態,代謝,機能を体外から詳細に知ることは,医師側,患者側双方にとって計り知れないメリットを与え た。
 脳に関わる神経内科,脳外科,精神科の各専門領域で,CT,MRIなどの画像はまず的確な診断の必 須の道具となった。的確な診断は,適切な治療の大前提である。また,これらの検査法によって複雑な形 態の脳内諸構造の部位を特定することも可能となった。さらに進歩しつつあるMRS,SPECT,PET等は脳 内の機能とその異常を明らかにしつつあり,精神機能と脳機能の研究方法となっている。このように,こ の神秘的な器官のハード面はそのベールをはがされつつある。精神科医である筆者にとっては,てんかん はもとより精神分裂病,うつ病,神経症にいたるまで,この方法の対象として考慮できるようになった。 しかしこのことは,あらためて脳や血管の解剖の正確かつ詳細な知識を要求されることにもなる。

コンピュータ画像で 「脳 」を三次元的に理解

 本書は,脳構造や血管走行,頭蓋腔などのコンピュータ画像を正確かつ精細に理解するための図譜で ある。国際的にも名著とされた『CT診断のための脳解剖と機能系』(1984年)の改訂版であり,この前 著刊行以後のMRI,PETの進歩を踏まえ,さらに前著で要望されていた諸点を加えてある。さらにコンピュー タ技術の進歩による三次元的立体理解が可能になり,実に2倍以上の紙数になっている。
 本書は,前著にも増して多くの国際的な専門家の助言も含め,実に周到な準備と各方面の協力の下に 作られている。初めに材料の吟味(1人の脳の特徴と多数例の測定)や画像診断のための目印構造の検討 が述べられている。ことに三次元的理解に注意が払われている。頭蓋構造あるいは脳切断面ごとのシリー ズが詳しく,実に有用である。前著になかった冠状断,矢状断はあらためて重要である。
 本書の主要部である各画面は,特別に工夫された灰白彩色の灰白質部分,動静脈の彩色などが,実に 美麗でわかりやすい。各部分の名称と番号は正確かつ合理的で,解説本文と対照しやすい。髄液腔や血管 系も模式図を併用しつつ,位置関係を示している。また前著になかった主要局所の詳細図は,機能や症状 を考えるうえで貴重な参考になる。
 精神科医など機能的な面に関心を有する臨床家にとって特に有用なのは,さまざまな神経機能系や神 経伝達物質系が,各系ごとの全体像と切断面双方から図示されていることである。動物に関しては,こう いう化学解剖図は出版されているが,これが人の画像図譜に示されるのは実に便利である。本文と対比し つつ読むと楽しささえ加わる。
 また本書の索引(和英両方)と文献の詳細さは驚くべきものである。
 訳者は,前書と同様,放射線,脳外科の本邦有数の権威で,今回の改訂に貴重な助言もされている。 訳も正確を期され,平易で,訳者自身の注も添えられている。
 現代の脳に関わる臨床医として,本書は通覧し,さらに座右におくべき必携の書である。
(A4変・頁408 定価19,570 円 (税込) 医学書院刊) 


神経病理学を学ぶための最良の入門書

神経病理学アトラス
H. Okazaki, B.W. Scheithauer著/岡崎春雄,今津 修 訳

《書 評》長嶋和郎(北大教授・病理学)

Mayo Clinicの症例アトラス

 Okazaki & Scheithauerによる名著『Atlas of Neuropathology』の翻訳版が出版された。かの有名なMayo Clinicの宝物ともいうべき症例のアトラスであり,日本語版の出版に当たり再度目を通してみた。私自身 も組織病理アトラスで神経病理の部門を担当したことがあり,また同じ医学書院から以前に出版された平 野朝雄先生の不朽の名著「カラーアトラス神経病理」を熟読した経験があるので,これらを念頭に比較し てみたい。
 書評といえば本が売れることを念頭に誉めることが大切であるが,今どきの学者や研究者はそれでは 納得しないと思うので,具体的に図の番号やページを記載してこの本の見どころを記載するので,ぜひこ の書評を片手に実物を見て勉強して頂きたい。

 1.大きな図による説得力:判型が大きいために一度に多数の所見を比較検討できる点が有利であり, その特典が随所で生かされている。見開き2ページにわたる頭蓋内後部循環の病理,高血圧性脳出血,脳 塞栓症,嚢状動脈瘤,動静脈奇形,髄膜腫,Schwann細胞腫などは圧巻である。中でもasrtrocytomaの細分 類をHE―PTAH―GFAP染色で4段抜きで示した図3.4や,膠芽腫の多態性を示した図3.16~3.24は多数の症 例を実際に顕微鏡で見ているようで,これは素晴らしいの一言に尽きる。

脳の疾患に関連する一般臓器も多数提示

 2.画像を含めた広範な紹介:画像所見とマクロ所見あるいはミクロ所見とを対比させたアトラスは この本がはじめてと思う。さらに造影剤を注入して示した循環障害の所見はこの本の特徴と思われ,病変 を理解するうえで大変役に立つ試みと思う。画像はどんどん新しいものが開発されており,その筋の専門 家にとっては不十分と思われるかもしれないが,神経病理学を学ぶ人にとってはまずは十分な提示と思う。 それより嬉しいことは脳の疾患に関連する一般臓器の写真も多数載せている点である。脳梗塞の原因とな る心臓の非細菌性血栓性心内膜炎(図1.85)や心の壁在性血栓(図1.92)などはぜひ見ておいてほしい図 の1つである。他にも母斑症の項目での多数の皮膚所見や腎臓(図3.521,3.523)や膵臓(図3.534)の写真 も勉強になる。眼底写真も勉強になり,図3.530のvon Hippel―Lindau病の異常は明瞭である。ただ,図 3.551のSturge―Weber病の眼底写真ではどこが病変なのかわからないので,どなたか教えていただければ 幸いである。

豊富な内容から新しい知識を得る

 3.初めて納得した所見:30年も一応病理をやっているつもりであるが,このアトラスを見てやっと 納得した知見が幾つかある。まず,時々脳外科の先生が話題にするが,脳には肝臓で見るようなcavernous hemangiomaが存在するのかと疑問に思っていた。図1.115を見て理解した。このように大切片で紹介して いただいて初めて理解できたのである。Hypothalamic neuronal hamartomaという疾患がhypothalamusより余 分にぶら下がった神経組織の塊であることが図3.150,3.151で初めて納得。またponsの前面に付着した半 透明の塊(図3.291)を昔標本にして,meningiomaの亜型かと思っていたが,これがecchordosisと呼ばれる 一種のchordomaと考えられている疾患であることを知った。Neurofibromatosis type Iの所見の1つとして Lesch noduleという言葉が記載されているが,図3.487,3.488を見てその実体を初めて知った。おそらく若 い人々にとっては初めて聞く名前や知っていた知識を図解により納得する所見がたくさんあるものと思う し,まだまだ見たこともない知らない病変が多数あることも実感できると思う。

 4.英文用語の組織像:今まで書いたコメントでは英文原書でも翻訳本でも同じである。たとえば chickenwireという言葉(p.89)はalcoholic hepatitisの所見として読んだことがあり,ニワトリの首でも結ぶ wireのことかと思っていたが,その訳語を読み図3.91を見て初めて理解することができた。同じように英 語独特の組織構築を表現する用語は図を見ながら覚えられるので大変便利である。思いついた言葉を参考 までにあげると,乳腺のlobular carcinomaやcarcinoidなどで見られるIndian file(図3.167),美しいfleurette (図3.191),streaming pattern(図3.228),staghorn(図3.261,3.262),bags of worms(図3.439)など多 数あるが,顕微鏡を見ながらこれらの言葉がスムーズに使えるようになりたいものである。

日本語訳の問題

 5.日本語訳の問題点:pseudopalisadingを偽観兵式配列と訳してあるが,確かにそのほうが雰囲気を 感じるし,昔我々もそのように習った。日本神経学会用語委員会が作成した用語集ではpalisadeは柵状配列 となっている。Gangliogliomaを神経細胞膠腫と訳し(p.102),さらにganglion cell=neuronとして注書き を入れ,ganglioを神経節と訳すのは誤りであるとしたのは大賛成である。ちなみに前記用語集では ganglioneuromaを神経節神経腫と訳しており,このほうが間違っている。「脳腫瘍取り扱い規約」を作成 するときganglioglioma, ganglioneuromaのganglioを「神経節」と訳すのはまずいと提言したのであるが,用 語集の大勢に押されて断念した。そうしたいきさつからこの訳者のほうに軍配を上げたい。ところがこの 本では,その後でganglioneuromaを神経節細胞腫と訳しているのは残念である。ついでにdysembryoplastic neuroepithelial tumor(DNT)を何と訳したのかと調べてみたが,この病変は掲載されていなかった。 Scheithauer等が提唱する以前に本書が執筆されたためかもしれない。またcentral neurocytomaも記載されて ないが,これはcerebral neuroblastomaとして含めてあるようである。
 全ての疾患を網羅することは無理であり,日本人に多い循環障害moyamoya disease,変性疾患 dentatorubral―pallidoluysian atrophy(DRPLA),HAM, micropolygyriaに関する福山型の記載などは日本の 本で補えば十分な疾患と思われる。感想ではあるが図2.70のCJDの小脳にはKuru斑が欲しいし,図3.485の 表情は少し悲しい気がした。
 以上,本書は多数の疾患を非常にわかりやすくかつ美しい写真で紹介したアトラスで,神経病理学を 学ぼうとする人々にとって最良の入門書であり,神経内科や脳外科,あるいは病理の専門医(認定医)に なろうとする人々にとっては必読書であり,そして一応病理をやってきた人々にとっては全てを再度勉強 するための楽しい教科書であると思われた。
(B4変・頁336 定価28,840円 (税込) 医学書院刊)


遺伝子解析に関心のある医師・研究者に

The Metabolic Basis and Molecular Basis of Inherited Disease (第7版) 
Charles R. Scriver, Arthur L. Beaudet, William S. Sly, David Valle著

《書 評》繁田幸男(滋賀医科大学名誉教授)

遺伝子疾患の分子異常を強調

 “The Metabolic Basis of Inherited Disease"が,今回表題に“Molecular Basis"という言葉が入り,改訂さ れた。本書では,特に遺伝性疾患の分子異常が,特に強調されている。さらに遺伝性代謝疾患の分子異常 のみならず,癌など非代謝性疾患の遺伝的背景までも分子レベルで検討されていることが,これまでと大 きく異なっている。それに伴い34の新しいトピックスが追加されている。第6版は1989年に出され,2巻の 分冊であったものが6年後の本版では3巻の分冊となり,ページ数もこれまでの3,006ページから1,600ペー ジ増加し,参考文献も新しく,1994年のものも引用されている。
 内容に関して目立った点は,Part1の前に50ページにわたって遺伝性疾患の遺伝様式,頻度,遺伝子座, 遺伝異常が表にまとめられ,極めてわかりやすくなっている。さらにPart1は大幅に改訂され,特に遺伝子 組み替えを用いた,遺伝子解析の戦略および遺伝子治療の可能性が概説されている。さらに圧巻は,ヒト 遺伝子の遺伝子地図が110ページにわたって収録されているが,第6版に比べ約2倍の量となっている。さ らにhuman genome project, genetic imprintingなど新しい項を加え,さらにOncogenesの項は“癌と遺伝”の 表題で新しくPart2にまとめられている。
 私の専門である糖尿病に関しても,内容が23ページから54ページに増加し,最近のインスリン受容体 異常を含む遺伝子異常による糖尿病,最近のインスリン分泌,インスリン作用機構,IDDM発症機構など が,わかりやすく図解されている。さらに第22章に家族性プロインスリン血症を含む異常インスリンによ る糖尿病がまとめられている。高脂血症に関する遺伝子異常に関しては,Lp(a)が新しく付け加えられ, 内容も豊富となっている。
 その他の分野でも内容が充実していて,ミトコンドリア遺伝子異常,リソゾーム酵素に関係する項目 も大幅に増加し,筋疾患に関してはX染色体関連筋ジストロフィー以外に新しく筋緊張性ジストロフィー や肥大型心筋症が取り上げられ,また眼疾患の遺伝子異常も新しく加えられている。遺伝性神経疾患とし てハンチントン病が,またプリオン病の項も取り上げられ,さらに最後の部分には,Kallmann症候群,脊 髄小脳変性症,Charcot-Marie-Tooth病など,新しい遺伝子解析手段を用いて,最近急速に解明されて きた遺伝性疾患についてまとめられている。

遺伝子診断や遺伝子診療の臨床への大きな可能性を示唆

   このように,本書はこれまで遺伝性代謝疾患の聖書であったが,改訂版ではさらに,多くの環境因子 が関与すると思われた疾患の遺伝的背景の解析まで対象が広がり,内容も飛躍的に増加している。これら 種々の遺伝性疾患に関連する遺伝子地図を眺めて,その情報量が急速に拡大することを見るにつけても, 今後遺伝子診断や遺伝子治療が,そう遠くない時期に現実の臨床に飛躍的に導入されることは,疑いのな い事実であるという感を強くした。
 何分大冊であるので,持ち運びは大変だが,座右に本書を備えておくことは,遺伝性代謝疾患や諸疾 患の遺伝子解析に関心のある医師や研究者にとって大変便利な存在であるといえる。
(in 3 vols. 頁4,624 ¥39,800 McGraw‐Hill刊 日本総代理店 医学書院洋書部)