医学界新聞

 

患者をチームの一員に

公開シンポジウム「がん――医と心を考える」開催


 公開シンポジウム「がん――医と心を考える」が11月17日,東京都千代田区の読売ホールにて開催された(主催:がん――医と心を考える会)。テーマは「患者さんを支える家族の役割とは」。これまであまり議論されることのなかった,「患者家族」に焦点をあて,家族の役割を問い直した。

 基調講演はキム・シボー氏(米国がん患者支援グループ“ウェルネス・コミュニティー・ナショナル”CEO)と上野直人氏(M.D.アンダーソンがんセンター)。シボー氏はアメリカにおけるケアの現状や,ケア提供者へのサポートについて口演。ケアが必要な人の数が増加する中,ケアする人の数は不足している現状を指摘したうえで,ケア提供者自身のケアの重要性を述べた。シボー氏は「『しなければ』ではなく『やりたい』という心構えでケアすることが大切」と語った。

 次に上野氏はM.D.アンダーソンで行われている「チームオンコロジーABC」を紹介。一人の患者を中心として,A:Active careチーム(医師・看護師・薬剤師など)は問題解決を,B:Base supportチーム(臨床心理士,ソーシャルワーカー,図書館など)は患者の主観的考えへの共感や,QOLの改善を,C:Community Resourceチーム(家族,製薬メーカー,政府など)は患者およびチームA・Bの包括的サポートを行う。各チームの課題は,A:評価的ではない傾聴をこころがける,問題解決を急がない,B:チームAの基本的医学知識を身につける,C:包括的な知識・情報を身につける,と説明。

 また,家族の役割については,解決する問題(生活に直接かかわる行為・QOL向上可能な行為)と解決しない問題(体の症状・心の症状)を認識し,後者に対しては患者の気持ちを「認識」することが肝要で,必ずしも同意は必要ないと述べた。上野氏は最後に「医療体制を変えるのは簡単ではないが,自分(患者)あるいはその家族を変えるのは可能である」と語った。