医学界新聞

 

臨床研修の歩き方
Think Globally, Act Locally

〔新連載 第1回〕
「臨床研修審査専門官」をご存じですか?

全国7か所の厚労省地方厚生局で働く臨床研修審査専門官が,
全国各地の臨床研修の様子を交代でレポートします。


 こんにちは! 読者の皆さまに新しい医師臨床研修制度をより良く理解していただくため,今回より『臨床研修の歩き方』と題して連載を開始することになりました。でも,そもそも「臨床研修審査専門官」ってどんな職業なのでしょうか? そして医師臨床研修に関する行政の仕組みは? 今回は,あまり世間に知られることのない(?)臨床研修行政の実態についてご紹介したいと思います。

臨床研修病院と行政の橋渡し

 まず,医師臨床研修に関わる行政組織について説明しましょう。図を見てください。医師臨床研修の大本締めは厚生労働省医政局医事課にある医師臨床研修推進室です。しかし,これだけのスタッフで約2300を数える全国の臨床研修病院に対してきめ細かな対応をすることは難しく,実務の多くを地方厚生局(九州,中国四国,近畿,東海北陸,関東信越,東北,北海道の7か所)に移譲しています。

 一方,各地方厚生局の内部で医師臨床研修を担当するのは健康福祉部医事課です。ここに所属する審査専門官は事務官である臨床研修係長とペアを組んで,臨床研修病院と行政との間の橋渡しの役目を担っています。この臨床研修審査専門官制度は新研修制度が始まる前年の2003年4月に「臨床研修審査官」として発足し,研修制度の一層の充実を図るため,2006年4月より現在の役職名に改められました。

 研修審査専門官は,臨床研修病院や大学病院から厚労省へリクルートされた現役の臨床医です。臨床医としての経験が重要視されているのは,研修病院の指導などにあたって臨床現場の実情を熟知している必要があるからです。審査専門官は臨床医としてのバックグラウンドを生かして,臨床研修を行う病院や研修医に対して行政からの情報や意図を伝え,一方では臨床研修の現場における生の情報を行政にフィードバックして制度を改善するという重要な役割を担っています。

 実は私もそうでしたが,医師というのは行政経験のない人がほとんどなので,最初は臨床と勝手の違うことばかり。右も左もわからず,ずいぶん苦労しました。このあたりの話は,連載の中で各審査官の口から直接聞くことができると思います。

 臨床研修審査専門官の主な仕事は以下のとおりです。

1)臨床研修病院の新規指定や研修プログラム変更等に関する審査・指導
2)適正な臨床研修実施体制の確保・維持に関する調査・指導
3)臨床研修制度を正しく理解していただくための啓発活動や各種相談の窓口
4)指導医講習会等臨床研修の指導者養成にかかわる指導や講演
5)臨床研修の中断,再開,修了等に関する指導および相談窓口

 この他にも,行政と臨床研修病院の間との調整はすべて業務の対象となるので,守備範囲は広く,内容もバラエティーに富んでいます。思いもよらない現場からの難問に遭遇し,現場の方々と行政(法令)との間で板挟みとなり,どうしたらよいのか四苦八苦することもしばしば起こります。

 それでは,次回から,日夜奮闘している臨床研修審査専門官の目線で見た,各地の臨床研修の様子を皆さまにお届けすることにいたしましょう。乞うご期待ください。

つづく


村岡亮
1980年筑波大医学専門学群卒。2003年厚労省関東信越厚生局臨床研修審査官。06年同臨床研修審査専門官(本省医師臨床研修推進室併任)。専門は医学教育,消化器内科,国際保健医療。