医学界新聞

 

褥瘡認定士制度発足に向けて議論

第8回日本褥瘡学会開催


 さる9月1日,大宮ソニックシティ(埼玉県)において,徳永惠子会長(宮城大)のもと,第8回日本褥瘡学会が開催された。「褥瘡対策へのコラボレーション」をテーマとした今回は,キネステティクの第一人者であるハイジバウダー・ミスバッハ氏(Viv-Arte)をドイツから招くなど,さまざまな側面からの褥瘡ケアが議論された。また,理事会からは褥瘡学会の新たな活動として,褥瘡認定士制度発足が提案された。


DESIGNスコアリングシステムの改定に向けて議論

 褥瘡治療・ケアにおいて,その重傷度や治療経過を観察する際のスケールは欠かせない。2002年,日本褥瘡学会が開発したDESIGNツールは従来のツールに比べて介入評価が容易で,より臨床的な評価ツールとして高い評価を得てきた。

 今学会のコンセンサスシンポジウム「DESIGNスコアリングシステムの改良(重み付け)について」(司会=九大・古江増隆氏,東大・真田弘美氏)では,このDESIGNツールのさらなる精度・利便性向上が議論された。

 冒頭に開発者の1人である真田氏がDESIGNツール開発の経緯を概説。従来のツールの利点・欠点に注目し,介入を容易にすることを目指した結果,現在のDESIGNツールの形式となったことを紹介したうえで,現行ツールの問題点として,重傷度判定のツールとしては必ずしも適当でないことを説明した。

 DESIGNツールは開発から4年を経て,これまでさまざまな検証の中で,評定者間一致率などの数値ではツールの信頼度として一定のレベルに達しているものの,例えば創が深い褥瘡と,ポケットの大きい褥瘡ではいずれの重傷度が高いのかなど,異なるタイプの褥瘡の重傷度を比較するのには適切ではなく,その信頼度も未検証であると述べた。

 もともと,DESIGNの開発当初から,重傷度の重み付けについてはエキスパートオピニオンを採用していたこともあり,いずれ重み付けについては検討しなければならなかったとしたうえで真田氏は,従来のDESIGNを全面的に見直すわけではなく,あくまでも各項目間の重み付けを行い,さらに臨床・研究面で有用なツールにしていきたいと述べ,議論を促した。

 重み付けを加え,新たな体系として整理されたDESIGNツールは,今回のコンセンサスシンポジウムでの議論を踏まえ,学会の学術委員会を経て,改定されていく模様。

褥瘡認定士制度発足に向け理事会が提言

 近年,褥瘡ケアに対する注目度が高まる中,医療保険制度の中でも従来の褥瘡対策未実施減算に加え,2006年からは「褥瘡患者管理加算」および「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」という診療報酬上のプラス加算が認められるようになった。このうち,「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」については所定の研修を終えた褥瘡管理者の配置が算定用件となっており,褥瘡治療への高い能力を持つスタッフの育成が求められている。

 このような背景のもと,日本褥瘡学会理事会は「褥瘡認定士」制度の発足に向けた提案を行った。理事長講演でこの案件に触れた森口隆彦氏(川崎医大)は,褥瘡認定士制度について,前記の褥瘡管理者との違いを中心に,その構想を説明した。

 褥瘡認定士制度は,国家資格ではなくあくまでも学会認定制度であること,また,「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」などの診療報酬制度とは今のところ無関係であることを強調したうえで,設立の意義について「褥瘡ケアでは多職種の協働が重要となるため,今回の認定制度は看護師だけでなく,医師,薬剤師,栄養士,理学療法士,作業療法士等,多くの職種に門戸を開いた」とし,「活動領域も病院内外を限定せず,今後ニーズが高まるであろう在宅での褥瘡ケアも射程に入れ」た活動を推進していくことに寄与させたいと述べた。