医学界新聞

 

女性のQOL向上をめざして

第5回日本ウーマンズヘルス学会開催


 さる7月22日,第5回日本ウーマンズヘルス学会が,久米美代子会長(東女医大)のもと,リーガロイヤルホテル早稲田(新宿区)にて開催された。テーマは「個人化時代における『ウイメンズヘルス』への挑戦」。特別講演,一般演題のほか,今年度は新しい試みとして「開発途上国のウーマンズヘルス」と題し,ミャンマーの公衆衛生医師によるポスターセッションが設けられ,国際的にウーマンズヘルスを考える第一歩となった。

 開会に際し,久米氏は「5回目の節目を迎え,今後学会の独自性と専門性の確立を図りながら,新しい領域への進歩とそれらの統合をめざしていきたい」と挨拶。また,医療者だけでなく,女性の健康に関心のある多くの方々に参加していただきたいと述べた。

 特別講演では,太田博明氏と加茂登志子氏(ともに東女医大)が登壇。太田氏は「性差医療の現状とウイメンズヘルス」と題し,心筋梗塞における男女の喫煙リスクの差(女性は男性の約2倍)など,疾病における性差の例を挙げ,性差を考慮した医療の重要性を述べた。太田氏は,「男性の細胞はX染色体とY染色体から構成されるのに対し,女性の細胞はX染色体が二つある。構成する細胞が異なれば,臓器やそこに起こる疾病・症状に性差があって然るべき。それを考慮した女性医療は個別的医療――テーラーメード医療の原点でもある」と強調した。

 加茂氏は「女性のメンタルヘルス」と題し,生殖期(reproductive phase)の過ごし方の性差が,女性のメンタルヘルスに大きく影響を及ぼすことを指摘。長寿化によるライフステージの延長を始め,女性の高学歴化や就業率の増加,結婚離れなどの要因によって女性の生き方が多様化し,それに伴ってそれぞれのライフコースでさまざまな問題が起きていると述べた。加茂氏は女性における生殖期とは,「“女性である自分”と“私である自分”がひとりの人間の中で統合されていく過程」であり,これは男性とは大きく異なると指摘。この過程の中で,要所要所で起こる心理的な問題が女性のうつ病の背景となっていると述べた。

 また,市民参加公開公演として,東女医大非常勤講師でフェイシャルセラピストのかづきれいこ氏が,更年期におけるリハビリメイクの有効性について講演。更年期障害を持つ女性を対象にリハビリメイクを行った結果,クッパーマン指数などの生理的指標を含む更年期障害指数が改善したことを示した。また,かづき氏はその場で実際に会場から参加者を募り,リハビリメイクを実演した。