医学界新聞

 

「理学療法の可能性」を追い求めて

第41回日本理学療法学術大会開催


 第41回日本理学療法学術大会が5月25-27日の3日間,内山靖大会長(群馬大)のもと,前橋市のグリーンドーム前橋において開催された。

 「理学療法の可能性」をメインテーマとした今回は,各日で研究・教育,臨床実践,職能・職域と3つのサブテーマが設けられ,それぞれに沿うプログラムを企画。学術大会の原点である一般演題が重視され,講演は脳研究の世界的権威,伊藤正男氏(理化学研究所)など,精選された。また,会期中に群馬県出身の画家,星野富弘氏の詩画展が開催されるなど,意欲的な試みがなされた。


 大会長講演では内山氏が,臨床実践・研究・教育の3要素から「理学療法の可能性」を提示した。臨床実践においては,理学療法における臨床思考過程として「症候障害学」の重要性を強調。動作の観察を基軸として,機能不全の要因とともに活動の適応を究明することを求めた。研究面では,臨床評価指標の開発や多施設間比較対照試験の推進を課題にあげた。教育面では,「臨床教育協議会」を提唱。養成校に対しては外部評価やカリキュラム支援,医療機関や福祉施設に対しては卒後研修支援やSV(実習指導者)の登録・研修を行うことを役割として提示した。

臨床教育のあり方を議論

 ラウンドテーブルディスカッション「臨床教育はいかに行うべきか?」(座長=国際医療福祉大・潮見泰藏氏,大阪リハビリテーション専門学校・西村敦氏)では,養成校の急増など環境が大きく変わりつつあるなかで,今日的な臨床教育のあり方が問われた。

 最初に医師の立場から中野隆氏(愛知医大)が,コアカリキュラム(以下,コアカリ)の作成や共用試験(CBTとOSCEで構成)など,医学教育の潮流を説明した。理学療法の臨床実習はマンツーマン指導が基本となるため「医学よりもむしろ進んでいる」と評価しながらも,学外のSV任せの実習では臨床実習の格差が拡大すると危惧。コアカリを定めるなどして,実習内容の標準化を図るべきであるとした。

 続いて,佐藤房郎氏(東北大病院)と中山恭秀氏(慈恵医大第三病院)が,実習受け入れ側の立場から,金田嘉清氏(藤田保衛大)と伊藤恭子氏(川崎リハビリテーション学院)が,養成校の立場から,課題を提示。その後,これまで演者らから示された論点をもとに,会場へのアンケートと双方向型のディスカッションが実施された。主なアンケート項目は次のとおり。

1)教員自らが臨床実習教育に積極的に参加すべきか
2)複数の学生が同時期に1ケースを担当する実習形態を取るべきか
3)臨床実習で学ぶのは症例報告書の作成ではない
4)教育ガイドライン(コアカリ)に基づいて教育が行われるべきか
5)全国の養成校において,統一的にOSCEを実施すべきか

 1)は概ね「参加すべき」との回答が多かったが,「病院を持っていないと厳しい」など留保の声もあった。2)は意見が分かれたが,「すべてをこの実習形態で賄うわけではなく,利点と欠点を把握して使い分けるべき」ということで一致した。3)では「書いたものにフィードバックがない」と現状に対して厳しい意見が聞かれた。

 4)では「理学療法は保健・医療・福祉に広がり,コアな面の幅が広い」との意見もあった。5)では会場から,「“客観的”に固執せず,理学療法士にとって重要な“人間的”側面を忘れない評価にしてほしい」との指摘がなされ,中野氏も「医師のOSCEはマニュアル的」と同調した。最後に座長からは,理学療法士の専門性に基づいた変革の重要性が確認された。