医学界新聞

 

福島県の産婦人科医逮捕に抗議

「周産期医療の崩壊をくい止める会」が緊急会見


 帝王切開中の大量出血により患者が死亡した件(2004年12月17日死亡)において,福島県立大野病院に勤務していた産婦人科医が,「業務上過失致死罪」および「異状死の届出義務違反」(医師法違反)で2月18日に逮捕された(3月10日には,福島地裁に起訴)。

 この事件を巡っては当初から,疑問や今後の診療への不安の声が全国の医療者・関係団体からあがっており,日本産科婦人科学会と日本産科婦人科医会も3月10日に抗議声明を出している。

 3月17日には,「周産期医療の崩壊をくい止める会」(代表=福島県立医大産婦人科教授・佐藤章氏,日本医学会会長・高久史麿氏,日本学術会議会長・黒川清氏)が,6520人もの賛同署名とともに,陳情書を厚労大臣・川崎二郎氏に提出。同会による緊急記者会見が同日,衆議院議員会館にて行われた。

 会見では,代表の佐藤氏が陳情書の概要を説明した。今回は,前置胎盤に癒着胎盤が合併するという稀有なケース(癒着胎盤は全分娩の0.01-0.04%)であることや,産婦人科医が1人しかいない僻地病院で起きたことを指摘。一定の確率で起こり得る不可避な出来事に対し,専門医として全力を施した医師ですら刑事責任を問われる事態に対し,「ハイリスク患者の“たらい回し”が全国各地で一挙に広がることにならざるをえない」とした。

 さらに,事故を個人の責任ではなくシステムの問題として捉えることが重要であるとして,(1)分娩の安全性確保のための総合的対策,(2)周産期医療に携わる産科医・小児科医の過酷な勤務条件の改善,(3)医療事故審査のための新たな機関の設立,の3点を提案したことを明らかにした。

 なお,1週間で集まった6520人の署名のうち,医師は5560人。その中で産婦人科医は1250人と,全体の2割程度。産婦人科に限らず,多くの診療科の医師・看護師らがリスクを伴う診療を日夜続けており,“刑事事件”という異例の事態に,全国の医療者が危機感を募らせた結果と思われる。

 「周産期医療の崩壊をくい止める会」では,当該医師の無罪実現に向け,今後も署名・陳情などの活動を続ける予定だ。陳情書の内容や署名方法は,同会が作成した下記HPを参照されたい。

 URL=http://www006.upp.so-net.ne.jp/drkato/

周産期医療の崩壊をくい止める会