医学界新聞

 

シシリー・ソンダース博士追悼講演


 さる2月26日,柏木哲夫氏(金城学院大学長)のもと,笹川記念会館国際ホール(東京都港区)にて,2005年7月14日に亡くなったシシリー・ソンダース博士を偲ぶ追悼記念講演・シンポジウムが開催された。

 シシリー博士の冥福を祈る黙祷が行われ,厳かにはじめられた。

 ソンダース博士は第二次世界大戦時,親の反対を押し切り看護師として働いていたが,持病の脊椎障害が悪化し看護師を続けることができなくなった。しかしメディカル・ソーシャルワーカーの資格を取得し,病院で病者のために献身的に働き続けた後,1人のがん患者との出会いをきっかけに医師となり,聖ジョセフ・ホスピスの勤務を経て,1967年にロンドン郊外に聖クリストファー・ホスピスを創設した。

 博士は末期患者の苦痛についてモルヒネの積極的使用によるコントロールをすすめ,また精神的痛みを重視するとともに,全人的苦痛(Total pain)としてとらえることの必要性を強調。医療のあり方をcure systemからcare systemへ変更する必要を説き,ケアの実践を述べるとともに,ホスピス運動の中心的存在であり,今日では近代ホスピスの母と呼ばれている。

私の人生を決めた人-ソンダース博士

 柏木氏はソンダース博士が1997年の来日時に,ホスピスに携わりこの仕事をどう考え,実行するかの1つの方法として講演した「架け橋としての緩和ケア」の7つの架け橋(1)「聴く」という橋をかける,(2)痛みの基礎研究に橋をかける,(3)地域に橋をかける,(4)家族に橋をかける,(5)急性期医療に橋をかける,(6)スピリチュアル的側面に橋をかける,(7)喪失を乗り越えて成長するための橋をかける,を紹介。

 また,ソンダース博士の次の言葉を紹介した。「もし私ががんの末期になって強い痛みのために入院した時,私がまず望むのは牧師が早く痛みが取れるように祈ってくれることでも,経験深い精神科医が私の悩みに耳を傾けてくれることでもなく,私の痛みの原因をしっかりと診断し,痛みを軽減する薬剤の種類・量・投与間隔・投与法を判断し,それを直ちに実行してくれる医師が来てくれることです」と,内科的・腫瘍学的知識などを包括的に勉強・研修する必要性を間接的に説かれたことを回想した。