医学界新聞

 

MEDICAL LIBRARY 書評特集


PCIにいかす
IVUS読影テクニック

小林 欣夫,園田 信成,森野 禎浩,小谷 順一,前原 晶子,藤井 健一 著

《評 者》山岸 正和(国立循環器病センター内科心臓血管部門・医長)

第一線の臨床医による充実した内容の実践書

 このたび,『PCIにいかすIVUS読影テクニック』が医学書院から上梓された。著者は小林欣夫博士を筆頭として,わが国はもとより,アメリカ合衆国で実際IVUSを駆使しながらPCIに携わってきた実臨床家の面々であり,彼(彼女)らが実際経験した事実に基づく記述であるので,実に理解しやすい内容に仕上がっている。

 PCIの治療戦略を立てるのに重要なことは,血管の狭窄度のみならず,病変の進展を知ることであるのは言うまでもないが,冠動脈造影検査ではわからない血管壁の性状,粥腫量などを実時間で評価し得ることができ,適切なデバイスの選択やエンドポイントの決定を行ううえで,今なおIVUSを上回るものはない。むしろ,従来のPCIから薬剤溶出性ステント(Drug-eluting Stent:DES)の時代に突入した現在,ますますIVUSによる術前・術後検査の必要性が増した感がある。

 さて本書についてであるが,全文わずか115頁でありながら,IVUSの基本画像はもとより単なるIVUSの読影テクニックにとどまらず,IVUSの有用性を示すエビデンス,さらに再狭窄のメカニズムなど,なんとも多岐にわたった内容で構成されていることに驚かされる。

 本書の構成はI-IX章から成り立っているが,I章では基本的なIVUSの画像がページの大部分を占め,ページを開いた瞬間に,その内容がわかるといった次第である。しかも各IVUS画像に対する定義を記載し,理解を助けるための補足説明を追記している。これが平易な言葉で書かれており,実に読みやすく,理解しやすい。

 II章は「IVUSの準備と使用法」,III章は「計測の基本」で,IVUSにおける計測の基本的な事項について,日常的なIVUSの計測に加えて,現在スタチンによるプラークの退縮などで注目されている定量評価についても,計算式を記載している。

 IV章ではPCI治療戦略決定のためのIVUS観察や,エビデンスに基づくIVUSの活用法を記述している。また,V章はIVUSの有用性を示すエビデンスと題して,IVUSガイド下PCIの有用性を示すエビデンスとなった試験を紹介し,さらにその試験の問題点についても記述しており,読者に臨床上有用な情報を提供している。

 VI章では「PCIによるlumen enlargementのメカニズム,再狭窄のメカニズム」について,VII章で「Positive and Negative remodeling」について記述している。さらにVIII章の「急性冠症候群(ACS)とIVUS」の章ではACS発症のメカニズムからACSに対する治療の変遷にいたるまで,臨床試験に基づいた成績を紹介している。

 最後のIX章では16頁にわたってDESを用いたPCIを行う際の,IVUSにおいて重要なチェック項目について,細かく記述している。以上の各章を読み終えた時,IVUS画像とPCIを施行する際の知識のバランスが,どちらにも偏らず,両方をこの本で得ることができるようになっている。

 冒頭で紹介したように,臨床の最前線で活躍する先生たちによって執筆されており,日常診療に密着した内容であるところが,すぐに使える書としての本書の価値を高めていると思われる。本書はこれからPCIを行おうとする若手の医師からベテランの医師まで広く活用可能なテキストになると思われる。

 これからIVUSを学ぼうとする医師だけでなくベテランの医師,さらにこの分野に携わる機会の多いコメディカルの方々にも,広くお勧めできる著書である。

B5・頁128 定価5,040円(税5%込)医学書院


心臓インターベンションハンドブック
第2版

高橋 利之,河本 修身 監訳

《評 者》永井 良三(東大大学院教授・循環器内科学/東大病院長)

時代の変化に対応した実践的な指南書

 かつて心臓カテーテルは重要な診断手段であったが,近年,カテーテル技術とデバイスの進歩により治療の道具に変容した。冠動脈だけでなく,最近は心房中隔欠損症などもインターベンションの対象となりつつある。心臓手術の適応を変化させるほどに,心臓インターベンションは循環器診療の主流となった。しかしながら適応が拡大し,患者数が増加するほどに,インフォームドコンセント,適応基準,実践的な技術,合併症の防止,さらにインターベンションの長期予後などを検証し続けなければならない。時代の変化に対応しつつこれらの課題に答えてくれる指南書は,常に求められてきた。

 原著は1996年に発行されたセントルイス大学のMorton J. Kern教授による初版の改訂版で,米国の一線のインターベンション専門医が執筆している。日本語版初版(1998年発行)は多くの読者に好評であったが,その後の7年間に心臓インターベンションの発展は目覚ましく,内容も大きく変貌してきた。特に薬剤溶出性ステントや血栓吸引カテーテルなど,新たな器具も次々と導入された一方で,現場から消えた技術やデバイスも多くみられる。これらの変化を考慮して初版の改訂が読者から強く要望されていた。翻訳は東大病院をはじめとする専門病院で学んだ医師が担当したが,訳はよくこなれており読みやすい。

 本書は512ページから構成され,インターベンション心臓病学や放射線血管生物学,資格認定などの基本事項が最初にまとめられている。技術解説も詳細におよび,PCIデバイスの扱い方や困難な病変へのアプローチ,ハイリスクPCI,IVUSによる評価,閉塞性肥大型心筋症に対する中隔アブレーションなど新たな項目も多く含まれており,記載もきわめて実践的である。このように,インターベンション全体を俯瞰できるハンドブックは,インターベンション専門医にとっては待望されていたものである。

 高齢者の増加によって循環器臨床も大きく変化している。多くの患者が経過中に心臓インターベンションの世話になる可能性が高い。このことはインターベンション専門医でなくとも心臓インターベンションに精通していることが,循環器臨床で必須になったことを意味している。その意味で本書は循環器医にとって必携の書であり,研修医からベテラン医師までのあらゆる世代にわたって活用されることを期待したい。

A5変・頁512 定価7,875円(税5%込)MEDSi