医学界新聞

 

座談会

NSTを成功に導く

岡田晋吾氏=司会
 (北美原クリニック院長・函館五稜郭病院客員診療部長/医師)
矢吹浩子氏
 (兵庫医科大学病院/看護師)
伊東七奈子氏
 (前橋赤十字病院/看護師)
田中弥生氏
 (南大和病院/管理栄養士)


 NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)稼動病院が急増している。日本医療機能評価機構の評価項目にNSTが盛り込まれたことから,今後もこの傾向が続くのは確実だ。爆発的な増加の中,今後は質の確保が重要となってくる。特に最大のマンパワーで,患者にいちばん近い存在の看護職の関わりは,NST成功のカギを握ると言える。

 本座談会では,看護が栄養管理に関わるうえでの「カベ」を看護の立場から明らかにし,医師・栄養士からの提言も踏まえ,NSTを成功に導くためのポイントを探った。


知識不足は解消できる
まずは栄養に興味を

岡田 兵庫医大病院は現在NSTの立ち上げ準備中とのことですが,NSTを成功させるうえでの「カベ」は何だと思いますか?

矢吹 NSTはチーム医療ですから,まず難しいと感じるのは,主治医である医師との関係です。NST回診で看護師からリコメンデーションがあった時,これまで自身の知識と経験から栄養管理を行ってきた医師がその意見を受け入れるかどうか。

 あとは,栄養管理に対する看護師自身の知識不足です。栄養に関しては,学生時代の講義が少なく,臨床の経験から少しずつ学んでいるのが現状です。そこでどうNST活動に啓発していけるか。いまはこれらの問題を整理しながら,立ち上げ準備をしている段階です。

岡田 まず,医師と看護師の関係についてですが,いまはクリニカルパスがかなり普及していますよね。ですから,チーム医療の風土は整いつつあるとは思います。もちろん,新しいものを始める時には抵抗する人も必ず出てくるので,NSTの立ち上げに協力的な医師を見つけることが大事じゃないでしょうか。

矢吹 たしかに職種間のカベはなくなってきて,看護師の意見を聞いてくれる医師もたくさんいます。ただ,話し合えない時にその理由を考えると,やはり「看護師の知識不足」は否めない。基づく根拠が弱ければ議論になりませんから。

岡田 JSPEN(日本静脈経腸栄養学会)で井上善文先生(川崎病院)らが調査したものによると,栄養に自信のある医師は,2-3割です。だから,そんなにナースが後れているわけではないと思います。実際にNSTが稼動している病院ではどうですか?

伊東 私も最初の頃は,医師と栄養について話す時に,自分の知識不足で意見を言えないことがありました。でもNSTを進めていくうちに,医師も経験で話していることが多いのに気づきました。

 栄養に関して看護師がひどく劣っていることはないし,自分の知識を相手にきちんと伝えて,話し合うことが大事だと思えるようになりました。

田中 南大和病院では,各職種の役割分担を決めて,看護師が栄養のケアプランを書くようになってから,職種間の連携がよくなりました。

 最初,看護職の間では「栄養管理はすべて栄養士の役割だ」と思っていたようですが,「そうではない,自分たち看護職が患者さんの日常生活をいちばん見ている」という意識を栄養管理においても持ってくれました。私もそれは同感で,日常生活から問題点を見つけるのは看護師だし,その役割はすごく大きいと思っています。

岡田 栄養は,身体計測の値とかだけでなく,その人の社会的背景や嗜好も加味する必要があります。そうやって,どんなチーム医療でも必ず看護師が中心になるはずです。圧倒的な勢力を持っていますしね(笑)。

 まずは栄養に興味を持ってもらうことが大事で,知識面はいまから勉強すれば問題ないと思います。

“日常生活の観察者”としての看護の役割

矢吹 患者の生活を考えた看護師の意見はたしかに重要と思いますが,そうは言っても,ある程度の基本的な知識があったほうが議論もしやすいですよね。ですから,NST立ち上げの前段階として,2005年6月から月2回くらいのペースで,興味のある人に向けて勉強会をやってきました。看護師だけでなく,医師,栄養士,薬剤師なども参加しています。

岡田 NST立ち上げとほぼ同時に勉強会をスタートするところもあるし,勉強会を先にやるところもありますね。各職種が講師をやってお互いの知識を出し合ったり,栄養メーカーの人に講師をお願いしたり。医師もそんなに難しいことは知らないわけだから,それほど焦る必要もないですね。

田中 勉強会で数字だけ追っていくと,看護師さんはつまらなくなってしまうようです。栄養士や薬剤師はどうしても数字を追ってしまうのですが,そこに“日常生活の観察者”としての看護サイドからの問題提起が加わると,本当にいいNSTができてきます。

岡田 看護師はやはり患者さんをいちばんよく見ている。それこそがNSTの活動の中で看護師に求められていることであり,そこから得た情報を的確に伝えて,必要なことを皆で相談して栄養ケアプランを立てることが大切ですね。

実はある「看護師間のカベ」
師長とリンクナースがカギ

岡田 前橋赤十字病院はNSTを始めて3年が過ぎますね。立ち上げからこれまでを振り返って,どんな課題がありましたか?

伊東 看護師と医師とのカベが最も大きかったのですが,看護師間のカベも感じました。勉強会に参加するのは特定の人で,参加者はどんどん知識を吸収していくのですが,それ以外の人は医師と同様,新しいものを受け入れるのが難しいのです。

 例えば,「IVHを入れて管理する」という環境で何年も働くと,経腸栄養による栄養管理に移行できない。感染などの危険性をまったく無視すれば,IVHのほうが管理は楽です。一方,経腸栄養による栄養管理は,こまめな患者さんのケアやチューブ管理が必要になる。24時間以内に経腸栄養を始めようとしても,これまでとのギャップに,「わざわざそんなことまでする必要があるの?」と抵抗が大きいのです。摂食嚥下障害でも,必ず評価をしてから経口摂取に段階的に進めていくことに抵抗がありました。

岡田 函館五稜郭病院は褥瘡回診をチーム医療で始めた“はしり”の病院ですが,最初は病棟の看護師がやはり抵抗勢力でした。3-4か月経てば「あの人たちに頼めば楽だ」という感じを持ってくれますが,専門チームが回診する最初の頃は,どうしても看護のセクショナリズムが出ます。「うちの病棟のやり方」とか,「IVHの固定の仕方はうちではこう」とか。

田中 けっこうありますね。

岡田 回診で何か言われることが半分恐いし,半分ムカついてる(笑)。「自分たちが長年やってきて何も問題がなかったのに,あの人たちは急に来て変えろと言う」と……。

矢吹 それは医師も同じですよね。きっとNSTにチェックされるという感覚がある。

岡田 同じですね。でも,いまは患者中心の,透明な医療が求められています。患者に開示しなければいけないんだから,いっしょに働く医療者同士のカベをまずなくしていかなければいけない。そういう面では,リンクナースの活用が重要になってくるんじゃないでしょうか。

伊東 各病棟の中で核となりNSTを広げていく人が弱いと,部署間の温度差が出てきますね。

田中 わかります。外科と内科とで言うと,外科はNSTを入れることで目に見えてよくなっていくのがわかるので,力が入ります。でも,内科はどうしても時間をかけて治していくので,やる気が萎えることもあります。

伊東 その時,師長や幹部の理解は大きいですね。

田中 当院のNSTは,師長が必ずNSTの勉強会に参加しています。そして勉強会の成果を病棟に持ち帰って,議事録をスタッフにまわし,NSTの方針を全員に広めています。

矢吹 NST回診にも師長は参加するのですか?

田中 回診もそうですし,NST委員会にも必ず参加しています。「いちばん最初に自分たちが参加しないと,部下に伝わらない」という意識が師長の間で非常に強くあるので,NSTにおける看護教育はうまくいっていると思います。

矢吹 ICT(院内感染対策チーム)を立ち上げた時も,最初は師長から入り,リンクナースをつくって起動しました。その時のように,NSTの活動でも病棟師長がリーダーシップをとることが大切ですね。

■NSTを院内に広めるステップ

栄養管理で患者は満足,看護は楽に

岡田 栄養管理は,患者にも自分たち看護職にもどれだけのメリットがあるのかを知る必要がありますね。

 褥瘡管理ができている病院は,褥瘡が減って楽になったと皆が実感しているはずです。それと同じことで,入院時からSGA(subjective global assessment:主観的包括的栄養評価)をやるなどして早めに栄養管理を行うことによって,点滴の日数も減るし,看護師にとって大きな仕事であるTPNの管理もなくなる。栄養状態が改善されれば褥瘡も防げるし,術後の合併症も予防できる。パスどおりに経過して管理が楽になる。患者さんも満足されます。

矢吹 成功症例があると,モチベーションがあがりますよね。

田中 すごくあがります。

伊東 症例を重ねて,病院独自のエビデンスをつくっていって,医師に認めてもらい,看護師にも協力を求める。それがNSTを成功に導く,大きな要因になると思います。

岡田 たとえベテラン医師が抵抗勢力であっても,「この人はNSTに頼んだら?」と師長が若い医師を騙す(笑)。その結果が出れば,カンファレンスでその若い医師が「NSTに相談して,タンパクをいっぱい入れたら,こんなにアルブミンが上がりました」と発表する。新しいことをやる時には必ず抵抗勢力があるから,そうやってコツコツ結果を出していくことが大事です。

「委員会活動で拘束時間増」のカベ

矢吹 NSTの活動は,専任でなければ時間外がどうしても多くなりますよね。そこを嫌がる人は?

伊東 いっぱいいます(笑)。回診に出るための資料作り,患者さんの情報収集は,どうしても仕事が終わったあとになりますから。

 実はメンバーの中にはそれほど負担を感じていない人も多いのですが,まわりから「NSTに入ると大変」と言われてしまうのも原因です。だからNSTは人気がない(笑)。

矢吹 仕事に見合った報酬を求めますよね,いまどきは特に……。拘束時間の長さも,大きなカベかもしれません。

岡田 そこはパスも褥瘡も同じだと思いますが,栄養管理によって患者さんが早く退院できるのだし,それを自分の喜びにすることです。学会などで新しい知識を得て,病院で広めるのも非常に楽しいことです。なおかつ人事考課で,委員会活動をやっている人たちを評価することです。

矢吹 五稜郭病院では評価していますよね。栄養管理の成果として,患者さんの合併症が予防できて,経過もよくて退院が早くなれば,結果的には病院の利益になりますよね。

岡田 そこは病院幹部に強くアピールしていいでしょう。JSPENでは,NST稼動施設の認定に院長の許可が必要になっています。なぜ病院にとってNSTが必要なのか,院長や病院幹部が自ら各職員に話すことは,とても大切です。

田中 あと,全部を看護で背負ってしまうよりは,コメディカルと役割分担していけばいいと思います。アセスメントは皆ができる必要がありますが,当院では身体計測は栄養士か検査技師,ADLの評価はPT,問題点の抽出を看護師……というように分けています。

岡田 SGAは看護の仕事だとしても,詳しいアセスメントは栄養士に任せたほうが早いですね。それぞれ得意分野があるし,分担したほうがいいでしょう。

伊東 当院は,各病棟24-28人のうち,3-4人の看護師がNSTとなっています。最初は1-2人だったのですが,毎週8-12人がNST対象者となると作業も膨大になるので,メンバーを徐々に増やしている状況です。

岡田 NSTの対象患者数は,病院によってまったく違います。それぞれのやり方があるし,部署も,まずは協力的なところから始めればいいんです。

矢吹 そうですね。勉強会で参加してくれる部署はだいたい限られてきますし,全部一斉に開始しようとは考えていません。

岡田 五稜郭病院も呼吸器と消化器外科から始めました。まずはやれるところからやって,少しずつ増やしていく。「がんばらないけど,あきらめない」です。

リンクナースと病棟ナースで持つべき知識を分ける

岡田 看護の教育でいつも疑問なのは,褥瘡治療も,人工肛門の管理も,皆が同じように教育されて「同じ知識を持ちなさい」となることです。でもそれはとても無理なことで,リンクナースが持つべき知識と一般の病棟ナースが持つべき知識とは,分けるべきです。一般のナースは,少なくともSGAをやる意味を知って,栄養管理の重要性まではわかる必要があるけど,ハイリスク群へのアプローチまで知る必要ない。そこは分けてやらないと,アップアップになりますよね。

矢吹 たしかに,看護師は横並びの同じレベルを求めることが多いですよね。

岡田 それは無理だし,リンクナースも面白くない。専門性がなくなるわけだから。一般のナースはそれほど詳しく知らなくてもいいし,“詳しい人を知っていれば”いいのです。「これはあの人たちが詳しいから頼もう」と判断できるような教育の仕方がいいですね。

伊東 私も「皆で一緒にがんばりなさい」,「全体のレベルを底上げしなさい」と上の人たちからよく言われます。

矢吹 ドキッ!(笑)。

岡田 NST委員会で,「リンクナースはここまで,一般のナースはここまで」と役割を話し合って,「一般のナースもSGAと体重測定はやってください」などと決めていくといいと思います。ただ,その時に「何キロ減ったら報告する」ということも決めておかないと,「体重はマイナス5kg」と書いて何も報告しないということが起こったりします(笑)。

一同 ありがちですね(笑)。

岡田 そうした最低限の知識をまず教えていくことが大事だし,一般のナースは別にそこまでの教育でも構わないと思います。

新人研修とITを院内教育に活用

矢吹 看護師全体への教育は難しいですね。3交替だと全員に1つのことを伝達するのに3-4日かかります。そういうシフトの中での教育は,時間とエネルギーが要ると感じます。

田中 当院はNST稼動4年目ですが,やっと全体にNSTの意義が浸透してきた感じです。

岡田 病院の新人教育で,NSTの教育はないのですか?

伊東 今度からやろう,と話し合っています。

岡田 新人は最初からNSTがあると思って病院に入るわけですよね。いまはパスがあるのは当たり前だから,五稜郭病院に来る医師は「パスがある病院に勤める」と思って入ってくるし,抵抗感がないんです。だから,新人教育の際,パスやNST,褥瘡治療への取り組みを伝えていれば,5年もすれば当たり前になりますよ。

矢吹 特に大学は職員がすごく入れ替わるから,それはいいかもしれない。

岡田 大事なのは,その時に「全職種で聴く」ということです。もちろん,看護師向けの教育は必要だろうけれども,病院のシステムや方針,委員会活動など最低限のことは全職員で聴いてもらうことです。

矢吹 最近はチーム医療が問われるようになっているから,すごく大事なことですよね。

田中 全職員が集まれるのは,新人研修など限られた機会しかないので,当院では運営マニュアルのCD-ROMをつくっている最中です。院長の運営方針や委員会活動の紹介,職員食堂の使い方まで記録して,できあがったら各部署に渡すことになっています。

岡田 五稜郭病院は,褥瘡委員会とNST委員会のリンクナースが共通なんです。それで,例えばスキンケアで新しいことを始めた時には,リンクナースだけを集めてパワーポイントで教育する,そのデータをCD-ROMに入れてリンクナースに渡すんです。そして,リンクナースが病棟に帰って,同じパワーポイントを使って,病棟の先生になるわけです。

矢吹 なるほど。いまはみんなPCが使えるし,効率的な方法ですね。

■NST成功の秘訣=興味×満足×結果

NSTで深まる看護師と栄養士の関係

岡田 NSTの立ち上げで,看護師と栄養士の関係は変わりましたか?

矢吹 正直言って,栄養士の専門知識や仕事内容をよくわかっていなかったと実感しました。いままでは,病棟では栄養士との関わりが少なくて,見えなかったんです。

田中 大病院ほど見えないですね。

矢吹 当院は栄養士の絶対数が少ないこともあって,特定の患者さんの栄養指導を依頼するぐらいしか関わりがなかったのです。それが,NSTの立ち上げ準備を通してネットワークができました。そうすると,例えば嚥下で困った時には,栄養士に「この食事形態だけど,ほかにゼリーやプリン,経口栄養剤はないですか?」とか,「飲みやすいのはどれ?」という相談ができるようになりました。

岡田 NST立ち上げの前後を比べると,看護師は,栄養士にやってもらうことが増えたのではないでしょうか。栄養指導だけじゃなく,「PEGを使って下痢があった時に栄養士に栄養剤の固形化の相談をする」とか,そういう手段を知ったように思うんです。

矢吹 そうなんです。以前は,わからないから本を探してきて「これがいいか,あれがいいか」と看護師だけで議論していたのが,栄養士に相談できるようになりました。

田中 当院は逆です。もともと栄養科が病棟に入っていたから看護師が頼ってくれていました。それで「NSTは栄養科がやればいい,看護の仕事ではない」という雰囲気があったんですね。

 でも,「NSTはいっしょにやらないと駄目です。総合的な部分は看護の判断が大事なのです」と言って,やっとNSTができました。いまは看護師が栄養のことを勉強して,ますますチーム医療ができるようになりました。だから,大規模病院と中小規模の病院では,順序が逆になるかもしれないですね。

伊東 当院は薬剤師や栄養士がベッドサイドに行くことがほとんどなかったのです。昔は患者さんの手を触ることもできなかった,と言っていました。でも,いまは患者さんの肌を見たり,触れたり,「食事を変更してもらったら,すごく食べやすかった」という生の声を聞いたりできるので,すごく喜んでいます。

田中 栄養士は嬉しくて仕方ないと思います。いままでの栄養士は給食管理業務が主で,言われるままに料理を提供しているだけという場合が多かったのですが,もうそういう時代ではないし,患者さんの顔色を見て声を聴きながら,個々の栄養管理を行うことが大切になっています。ですから,それは本当にありがたいことです。

重症例の改善ではなく,「早期発見・対応」を喜びに

岡田 栄養を学ぶのは,「患者に興味を持つ」ということです。そういう意味でも,NSTは看護師にあっている仕事じゃないかと思います。ぜひ早くから介入してほしいし,そして早く介入したら早くよくなりますが,達成感は少ないかもしれません。

田中 そうですね。

岡田 栄養状態の悪い患者さんにPEGをつくって管理したり,ひどい褥瘡を治したり,そうやって重症例の改善にやりがいを求める人がいます。

 でも栄養管理の究極は,アルブミンが少し落ちているとか,体重減少がこの1か月ひどいとか,そういう患者さんを早く見つけて対処し,“何ごともなかったかのように帰す”ことです。そういう愉しみも覚えないと駄目だろうと思います。

田中 疲れている看護師さんが多いので,ある時サンプルの栄養剤を差し上げたんです。そしたら,ご自身がすごく元気になって,「やっぱり栄養は大事ですね」と実感してくれました(笑)。

矢吹 栄養剤やゼリーの購入は,栄養部が決めているんですか?

伊東 当院はNSTが小委員会をつくって,そこで決めるように変わりました。

田中 当院もNSTですが,患者ごとに決まるので,サンプルはどんどん出しています。それで皆で味見して,「これがおいしい」とか味の評価までしています。そういう意味でも,NSTはとても面白いんです(笑)。

岡田 NSTが入って,皆が肌の艶がよくなって若返ったというのも,モチベーションをあげるでしょうね(笑)。

――これまでのお話を踏まえ,「NSTの成功=○×○×○」とした時に,○に入る要因は何でしょうか?

岡田 「NSTの成功=興味×満足×結果」でしょう。「興味」というのは,栄養に対する興味。「満足」は,患者さんの満足とスタッフの満足です。成功するためには「結果」を出して,NSTに対する評価を院内で得る必要もある。そして,患者がよくなって,医療の質を向上させるということにつながっていく。興味・満足・結果の全部が揃わないとうまくいかないということですね。

 NSTの成功に向けて,看護師さんに期待しています。本日はありがとうございました。


岡田晋吾氏
1986年防衛医大卒。防衛医大病院などを経て,96年に函館五稜郭病院外科医長。2003年に同院外科科長,04年より同院客員診療部長。パスや褥瘡対策,NSTを,函館五稜郭病院はじめ多数の病院で普及・推進してきた。現在は開業し,在宅NSTなど地域連携に尽力する。著書に『そこが知りたい!クリニカルパス』(医学書院;共著)『胃ろうのケアQ&A』(照林社)『栄養管理のためのクリニカルパス』(医歯薬出版;共著)など。

矢吹浩子氏
1981年慶大医学部附属厚生女子学院卒。慶大病院勤務の後,84年より兵庫医大病院勤務。92年同病院CCU看護師長,96年より消化器外科病棟看護師長。今年度中のNST設立をめざし,看護師長の立場で,ゼロの時点から立ち上げに関与。大学病院におけるNST設立のカベを日々実感しながらも,NST活動の道を拓いていくことに手応えも感じている。

伊東七奈子氏
1994年前橋赤十字看護専門学校卒後,前橋赤十字病院に勤務。脳外科病棟での嚥下・摂食障害患者に対しての取り組みから栄養管理に興味を持ち始め,2002年のNST設立時からアシスタントディレクターとして活動。現在はディレクターに就任している。NSTを始めると栄養管理がますます面白くなり,「休みはあまりとれないけど,NSTは自分のキャリアの中で“ブレークスルー”と感じている」。

田中弥生氏
1981年関東学院女子短大家政科卒後,南大和病院栄養科に勤務。NSTの設立は2001年。入職時から申し送りや回診にもコメディカルが参画していたが,チーム医療の成熟はNST活動がきっかけと感じる。現在,南大和病院グループ統括科長。04年に関東学院大経済学部を卒業し,同大学の健康栄養学科で非常勤講師も務める。全国在宅訪問栄養食事指導研究会・会長。著書に『高齢者の介護 食べさせ術』(講談社)など。