医学界新聞

 

まずは強い意志を持つこと
―― 自分で留学先を探したい人へ

清水彰彦(東京大学医学部6年生)


 2005年1月,私は中国山東省で短期留学(公衆衛生学)をした。臨床留学でアメリカへという話は,さまざまな媒体から情報を得ることができるが,公衆衛生を学びに中国へという「奇特」な留学情報は,皆無に近かった。ここでは,私が中国への留学を思い立ってから実現させるまでを書いてみたい。

 以前より私は中国に興味を持ち,旅行などで訪れるたびに,この国の姿を知りたいと考えるようになった。そして,可能ならばある程度の期間,この国にとどまって,勉強したいと考えるようになった。

 しかし,事は簡単には進まない。中国の大学は,語学留学生は多く受け入れるが,本科生(専門分野)は日中友好協会などがわずかに募集しているのみである。中には漢方や鍼灸などを英語で短期間実習させてくれる大学もあるが,私が見たかったのは中国の地方における住民の健康や衛生であり,それは外国人にとって非常に壁が高かった。

 そんな折,たまたま公衆衛生の大学院に中国人留学生が来ていると聞き相談に行ったところ,彼のかつて所属していた山東省疾病控制中心(Center for disease control and prevention)に交渉してくれることとなった。さっそく自分が興味を持っていること,現地でやりたいこと等をメール(英文と中文)に書いて送り,数回のやり取りを経て留学できることになった。

 現地では,JICAが進める予防接種事業に参加し,伝染病サーベイランスや病院見学などが実現できた。1か月にもわたって外国人が勉強に来るのは非常に珍しいことで,お世辞にも現地の受け入れは万全ではなかったが,自由度の高い留学になった。

 現在,中国などの発展途上国への留学を考えている人にとって,最大の問題は受け入れ先を探すことと,言葉の壁であると思う。まず大学などでつてを探してみるといい。中国人の先生の紹介があると非常にスムーズに進む(逆にこういった紹介がないと,受け入れてくれる可能性は低い)。また,自分の大学の先生が中国の先生と知り合い,あるいは共同研究をしている可能性もあるので,聞いてみる価値はあると思う。

 言葉の壁に関しては,留学先のスタッフとの会話は英語だけで十分だと思う。しかし,たどたどしくても現地の言葉を話す(話そうとする)ことで,より充実した留学になる。

 自分で留学先を探すには,自分からアクションを起こさなくては何も始まらない。いちばん必要なのは,まず強い意志なのかもしれない。