医学界新聞

 

女性医師への支援充実をめざして

フォーラム「女子医学生のキャリア支援を考える」


 さる11月6日,京都市の京都府立医科大学において,フォーラム「女子医学生のキャリア支援を考える-女性医師が豊かな医療の担い手になるために」(司会=北野病院・武曾恵理氏)が開催された。このフォーラムは,NPO法人「女性医師のキャリア形成・維持・向上をめざす会」(ejnet)が,京都府立医科大学,京都大学医学部,滋賀医科大学と共催したもの。

 ejnet代表理事を務める瀧野敏子氏(ラ・クォール本町クリニック院長)は冒頭でejnetの目的を「医療の担い手である女性医師の就労継続を支援すること」であると述べ,育児支援や就労形態の柔軟化,キャリア・復職の支援を課題とした。

 氏は,「人口が減少を続ける日本では,新しい労働力として女性の力が必要とされている。感受性と繊細さは弱点ではなく,長所になる時代」と女性医師の強みを強調。今後の活動展開として,女性医師にやさしい医療機関の認証などを進めていくとした。

環境整備が課題

 続いて登壇した外園千恵氏(京府医大)は,自身が子育てをしながら医師を続けられた理由として,(1)延長保育にも対応した,信頼できる保育所,(2)職場の理解と協力,(3)家庭での夫や実家の協力,をあげた。

 子どもを持つ女性医師にとっては,当直や学会への参加も問題となる。この点について氏は勤務体制の柔軟化,多様化といった環境整備が必要であるとし,「産前・産後は1年間当直を免除」という医局マニュアルがあったことを述べた。また女性医師の増加に伴い,今後は託児所を設置する学会が増えるのではないかとの見方を示した。

 冨樫かおり氏(京大)は「仕事を辞めることは個人の問題のようだが,公費教育を受けてきた者であれば,社会への貢献は責務」と前置きし,「とにかく辞めないこと」,そして「完璧主義を捨てること」を強調した。

 そのためには迷惑をかけることを気にしすぎず,夫や家族,家事代行サービスを積極的に利用することも必要と述べ,「女性医師に関する問題は,とにかく忙しい病院の勤務状況に原因がある」と指摘。女性医師を支援するだけでは解決にならず,男性医師のQOL改善も必要不可欠であるとした。

 陳若富氏(大阪医療センター)は,国立病院機構近畿ブロックで導入されている「ママさん医師登録システム」について紹介した。これは育児等の理由で在宅している女性医師に対して,希望する勤務形態にマッチングした病院を紹介するというシステム。特定曜日や時間帯での外来勤務,パートタイムでの当直など,柔軟な対応が可能となっている。

科を選ぶ条件とは

 口演後のパネルディスカッションでは,辻有希子氏(京府医大)が同級生へのアンケートから,女子医学生が科を選ぶ際に重視しているのは「産休・育休が取れるか」「理解のある医師がいるか」といった項目であることを述べた。

 橋本悟氏(京府医大)は,「麻酔科はベッドフリーの科なので,仕事と家庭を切り替えられる点は女性に有利。ペインクリニックなど,患者と対話する機会もある」と麻酔科の特徴を説明。

 また,田村秀子氏(田村秀子クリニック)は「女性として持っているものをどう活かすかという視点で科を選んでほしい。インフラが整備されれば,どの科でもやっていくことはできると思う」と考えを述べた。

 最後に登壇した成宮周氏(京大医学部長)は「現状では,女性医師にかかわる諸問題は,女性医師個人の努力によって解決しているケースが多い」と指摘したうえで,ejnetのような活動が今後より拡大していくことを期待。また,「ロールモデルはキュリー夫人のような人ではなく,身近な人でなければいけない」と述べ,距離に関係なくコミュニケーションができるインターネット上での情報発信などの重要性を強調した。

 第2回シンポジウムは2006年6月4日に,東京女子医科大学において「女性医師の道を極める」をテーマに開催予定。