医学界新聞

 

「援助することと充実感」

第34回薬師祭(自治医大学園祭)で春日武彦氏が講演


 さる10月9日,自治医科大学において行われた学園祭「第34回薬師祭」において,春日武彦氏(都立墨東病院神経科部長)が講演した。「援助することと充実感」と題されたこの講演会は学園祭実行委員の企画によるもの。『援助者必携 はじめての精神科』(医学書院)など多数の著書を持つ春日氏の講演会に学内外から多くの参加者がつめかけた。

臨床の葛藤に触れる

 「援助することと,援助者の充実感は一致しません」

 冒頭にこのように語った春日氏は,自身の経験談をまじえながら,「援助」という仕事と,「援助者の充実感」の関係について掘り下げた。

 昨今主流となっている強制入院,パターナリズムへの否定的な評価について春日氏は自明のものではないとしたうえで,葛藤の末にそうした選択肢をとる現場の状況と,その後の意外な展開を紹介した。

 春日氏の生々しく,判断の難しい体験談を聞き,ある参加者は「臨床が簡単に割り切れないものだと頭で想像してはいたけれど,講演を聞いて実感としてよくわかった」と感想を語った。

 講演会終了後は,同会場において講師を囲んでの茶話会が行われ,本紙において「答えのない悩み相談室」を連載中の春日氏による「実況・悩み相談室」が開催された。

■講演会を企画して

宮前了輔(自治医科大学医学部5年)

 学園祭をより盛大なものとするため,アカデミックで面白い企画をどうしても成功させたいと思いました。また,アカデミックな企画といっても,著名人を招いて生のお話を聞くことに止まらず,学生が知的興味を心から傾けていることを間接的にアピールするような講演会にしたいと考えました。

 知的情熱というものは,いくら科学が進み標準化と客観化の流れが深まろうとも,医学の修得や研究において根底を支えるものに違いないと思います。そして,そのような学問に対する態度を学生がアピールすることは,学園全体の雰囲気に資することが大きいのではと期待しています。

 企画運営に際しては最初不安なことも多かったですが,学内や駅前の本屋さんの温かい協力を得て春日先生のフェアーを開催したりすることで,当日は大きな反響を戴くことができました。今後も学生が積極的に知的好奇心をアピールする企画が学園祭で行われれば素敵だなと思う次第です。

 最後に,素晴らしい御講演をいただいた春日先生に心から感謝致します。


※自治医科大学図書館のホームページ(http://lib.jichi.ac.jp/)上のビデオオンデマンドにおいて本講演会の全記録が配信されております。どうぞご覧ください。