医学界新聞

 

解剖生理から理解する心電図

第3回医学書院スキルアップセミナー
「高階經和先生の心電図道場」開催


 さる9月11日,18日の両日,東京・日本青年館において,医学書院主催のスキルアップセミナー「高階經和先生の心電図道場」が開催された。10-17時という長丁場のセミナーながら,76歳という年齢を感じさせないエネルギッシュな高階氏の講演に,各回約70名の聴衆は熱心に聴き入っていた。


 高階氏は,1958年にアメリカ・ニューオリンズのチューレン大学に留学,臨床心臓病学のエキスパートであるドクター・バーチの薫陶を受け,この分野を一生の専門にしようと決意したという。以来約半世紀にわたって,新大阪駅にほどちかい開業クリニックで診療を続ける傍ら,医学・看護の臨床家の育成に熱い情熱を注ぎ続けている。1979年に医学書院から発行した『心電図を学ぶ人のために』は,当時から出色の心電図トレーニングブックとして絶大な支持を集め,2004年の第4版まで四半世紀にわたり版を重ねている。

 今回のセミナーは,氏が著した最新刊『心電図道場』(医学書院刊)をテキストとして行われた。この本は,心電図を読むための13チェック項目を教える「門前」,6人の入門者ナースが12誘導心電図事例のリーディングに挑む「入門」,文献紹介などの「門の後」からなっている。

段階的に積み上げる 「人をひきつける」講義

 セミナーは,世界的テノール歌手であるホセ・カレーラスの独唱CDをバックにはじまった。「第1部 心電図の理解に臨床で必要な解剖生理」を2時間みっちり講義したあと,昼食をはさみ「第2部 正常心電図の読み方」,「第3部 実際の症例から心電図を読んでみましょう」と続いた。

 第1部では,心臓の重さや全血液量など,臨床家が意外と忘れている基礎的事項を押さえたあと,心電図を読むための13のチェックポイント((1)較正曲線,(2)心拍数,(3)リズム,(4)PR間隔,(5)P波,(6)QRS群,(7)QT間隔,(8)平均電気軸,(9)胸部誘導におけるR波の増高,(10)異常Q波,(11)ST部分,(12)T波,(13)U波)の解説に入った。氏はここで,心臓の模型や,手作りのマグネット付心電図波形,自作の短歌,ジョークなどを交えてわかりやすく解説。それはあたかも医学教育というステージに立つマジシャンのようであり,聴衆をひきつけて離さなかった。

 第2部では,あらかじめ配布された6つの典型例の12誘導心電図を,13チェック項目に従ってゆっくり読んでいった。そのうえで,第3部で『心電図道場』に掲載されている異常心電図事例に挑戦。初心者から復習目的の人まで,異なるレベルの聴衆がそれぞれに満足できる段階的な組み立てとなっていた。

 休憩時間には,氏が開発した心臓病患者シミュレータ「イチロー」(京都科学)のデモンストレーションも行われ,参加者の興味を引いていた。さらに休憩時間を削ってサイン会が行われ,サービス精神旺盛な氏の前には聴衆の長い列ができた。