寄稿
わが国にも子どものホスピス開設をカナダ・Canuck Place Children's Hospice視察報告
上別府 圭子(東京大学大学院助教授・家族看護学分野)
さる6月1-4日に,カナダのブリティッシュコロンビア州(以下,BC州)ビクトリア市で開催された第7回国際家族看護学会に出席するに先立ち,5月30日,森山美知子広島大学大学院教授以下日本家族看護学会有志40余名は,バンクーバーにある子どものホスピスを視察する機会を得た。先方の方針で施設内視察は叶わなかったが,写真やビデオをふんだんに使ったvirtual tourを含む講義と,庭園内からの視察による情報収集の成果を報告する。
施設の成立基盤

北米の医療保健活動の中で,わが国との違いを強く感じることの一つに,寄付行為の層の厚さがあるが,この視察でも大いにそれを感じた。BC州在住の家族は,無料でこの施設のサービスを受けることができるという。施設の維持や運営資金は,20%をBC州政府が負担し,80%をCanuckというホッケーチームなどの寄付でまかなっているという説明であった。
family-centered care

Canuck Placeは,進行性で生命を脅かす病を持つ子どもと家族のquality of lifeの向上,family-centered care,そして介護者やサービス提供者へのサポートをめざしているという。スタッフは,看護師,医師,グリーフカウンセラー,教師,ソーシャルワーカー,チャプレン,レクリエーションセラピスト,アートセラピスト,ミュージックセラピスト等と多職種で,学際的ケアを実践している。医師は市民病院との兼任で,夜間は看護師のみということであった。簡易ベッドでの「付き添い」ではなく,このようなfamily suite roomであれば,family-centered careと言われて納得がいく。さらに病児のきょうだいも,この施設内スクールに通学できるというシステムには驚いた。わが国では,病児のきょうだいは,置いてきぼりをくらいがちなのだ。
end of life careとしての利用は一部

Volcano roomは,ブルーの天井,床,壁に赤と黄で噴火した火山が描かれ,カラフルな軽量大型積み木や大玉などが備えられた部屋である。ごく小さな窓があるだけなので,誰にも気兼ねなく,泣いたりわめいたり大暴れしたりできる。「時々,職員も使っています」講義をしてくださったクリニカルナーススペシャリストのKristina Boyerさんは,さらっと言った。
子どもの場合,患者自身やきょうだいの個別性が高いばかりでなく,家族の抱える責任がいっそう重いことを考える時,わが国にも,このようなfamily-centered careを提供する子どものホスピスの開設が望まれる。