医学界新聞

 

視点

開発途上国への医療技術移転
(財)国際医療技術交流財団の活動

河合 忠((財)国際医療技術交流財団理事長)


どのような組織か

 国際医療技術交流財団(JIMTEF)は,開発途上国の医療技術の振興と交流を促進し,医療技術分野の国際協力を推進する事業を行い,国際保健医療協力の振興と人類の福祉に寄与することを目的とし,故渡辺美智雄元副総理が初代理事長として,1987年に創立された。その後,中山正暉前衆議院議員,織田敏次日本赤十字社医療センター名誉院長に引き継がれてきた。本財団は,外務省,文部科学省,厚生労働省の3省が主管し,1991年より財務省により特定公益増進法人の認定を受けており,本財団への寄付金・賛助会費は税法上の優遇措置の対象となっている。

何をしているか

 主な事業は,医師と看護師を除く医療関連技術者()を開発途上国から招き,日本の医療機関等において数か月間技術研修を終えた後自国に帰国して技術移転を推進するものである。現在まで,84か国から合計846名を受け入れ,それぞれの母国の保健医療で主導的な活動をしている。特に受け入れ実績の大きいのは臨床検査技師,診療放射線技師,病院薬剤師である。

 帰国後の研修生の活動状況および現地のニーズを調査するため2,3年毎に調査団を開発途上国に派遣したり,さらに必要に応じてわが国の技術専門家を現地に派遣したり,また現地において医療セミナーの開催などの活動を進めてきた。また,国内では,毎年,2泊3日程度の国際医療協力学生セミナーを開催し,日本滞在中の外国留学生と日本学生がともに学び,意見交換する場を提供している。本学生セミナーに参加した諸君が自発的にネットワークを作り,国際医療協力のための理解を深めるよう努めている。

 上記の国内外の事業を支援し,国際医療協力への理解を深めていただくため医療関連職種23団体協議会を開催しており,これらの団体の会長が本財団の理事または評議員に加わって財団運営の指導・支援をいただいている。

どのような資金で運営されているか

 (独法)経済協力機構(JICA)からの委託事業の他,民間諸団体と協力して上記の諸事業を推進している。本財団自身による収入は,基金による果実のみであり,低金利時代の現在はきわめて小額である。したがって,独自の事業と財団運営のための費用は特別賛助会員(企業・団体;年会費一口10万円以上)と個人正会員(年会費一口1万円以上)に全面的に依存している。近年ODA予算の削減とJICA改革によって,研修員の受入数が減少している。多くの方々のご支援を心からお待ちしています(詳細はhttp://www.jimtef.or.jp)。

どのように改革するのか

 過去15年余の実績が認められ,2000年,財団として第52回保健文化賞を受賞し,代表者が天皇・皇后両陛下のご拝謁を賜った。しかし,日本国を含めて世界が大きく変革している現状を勘案し,本財団も新しいニーズに対応するべく,関係省庁・団体と協議を進めている。既に850名に近い研修修了者が開発途上国で指導的な役割を果たしていることから,それらの人材を活用した途上国近隣地域での研修の導入,アジア地域重点(全体の65%)からアフリカ,中近東地域への協力加重,そして医療技術職の専門学校教育に対する支援,などが検討されている。


:研修員受け入れ対象領域は以下の通り
臨床検査技師,診療放射線技師,薬剤師,理学療法士,作業療法士,栄養士,視能訓練士,医療機器保守管理担当者,歯科技工士,臨床工学技士,臨床心理士,柔道整復師,歯科衛生士,医薬品品質管理担当者,鍼灸・あん摩・マッサージ・指圧師,医療ソーシャルワーカー,介護福祉士,義肢装具士,言語聴覚士

略歴/1955年北大卒。6年半の米国留学で解剖病理・臨床病理専門医取得後帰国。国鉄中央鉄道病院(現・JR東京総合病院),日大助教授/同教授,自治医大主任教授を経て,99年より自治医大名誉教授・国際臨床病理センター所長,2005年6月(財)国際医療技術交流財団理事長就任。