医学界新聞

 

病院の枠を超えたネットワークの必要性

第1回循環器専門医を志す研修医セミナー開催


 さる7月10日,日本循環器学会主催の「循環器専門医を志す研修医のための卒後セミナー」が大手町サンケイプラザ(東京都)にて開催された。初のセミナーにも関わらず定員を上回る参加申込みがあり,各講演の最後には実例を用いた問題が出題され,参加者がアナライザーを用い回答するなど聴衆参加形式で進められた。また「症例から学ぶ究極の心不全管理」と題したチューターを交えたグループ討論では,研修医たちが熱意にあふれた意見を交わした。


 木原康樹氏(神戸市立中央市民病院)は「大学や研修先のみではなく,こういったセミナーで知り合った他の病院の仲間とのネットワークを大切にしてほしい。それは先々の将来,さまざまな決断をする場面で役に立ってくるはずです」と語りセミナーが始まった。

 はじめに登壇した副島京子氏(慶大)は,心室細動(VF)に対し,除細動器(AED)の緊急処置の有用性と一般へのAEDの普及について言及し講演をはじめた。VFの患者に植込み型除細動器(ICD)を使用する際,初めて作動した時にショックの大きさからうつになる方がいることなど,患者への十分な説明が必要と語った。また,ICDは年数回の発作に対してなら患者にとって非常に有用であるが,連日作動してしまうような状態では,その痛みにより自殺に追い込まれてしまう方もいると述べ,ICDは埋め込んだら終わりでなく,埋め込んだ後,精神的ケアを含め,不整脈のコントロールが重要であると述べた。

 続いて沢謙二氏(東医大)は,冠動脈疾患治療の基本的考え方を,前下行枝75%狭窄の実例を用いて講演。血管造影では,一見,狭窄が見られないものでも奥行きがほとんどないことや,狭窄と疑われる部位は1つとは限らないことからも,注意深くみることが大切と語った。

 最後に,EBMについて理論と仕組み・実例と臨床効果の限界を探ることをテーマに山崎力氏(東大)と北風政史氏(国循)が登壇。その中で山崎氏は,医療の目標として「生命の尊厳(SOL)」「生命の質(QOL)」が大切であり,いかに質調整生存年(QALY=QOLで調整した生存年数)増加となるかを見極めることが必要と語った。そのためにも治療薬の統計を取る際,条件設定をきちんと行われなければならないとまとめた。

 北風氏は,心血管を例に大規模研究を解説。わが国主導で大規模研究を行い,日本から世界へ向けたエビデンスを発信する必要があると強調。そのためにも大規模臨床研究による検証・解析が必須であり,基幹施設をつなぐネットワークの創生,システムの構築が必要であると述べ講演を閉じた。

究極の心不全管理を求めて

 グループ討論(モデレーター=北里研究所病院・赤石誠氏,京大・中川義久氏)では,はじめに症例の経過と心電図等の検査結果,2グループごとに発表課題(心不全・心房細動・左室機能低下・心室頻脈)を提示。その後,病態の理解,薬剤の選択など,今後の心不全管理についてチューターを中心に討論された。40分と短い時間ではあったが,各参加者が意見を出し合い作成した治療方針を発表。同課題が並列してスクリーンに投射され,どこに焦点が当てられたかがわかる形にされた。最後に赤石氏が名前のあがった薬剤から,最終的な処方薬を決定し,熱気溢れたグループ討論をまとめた。