医学界新聞

 

第10回日本緩和医療学会・
第18回日本サイコオンコロジー学会合同大会


 第10回日本緩和医療学会・第18回日本サイコオンコロジー学会の合同大会が6月30日-7月2日の3日間,垣添忠生大会長(国立がんセンター総長)のもと,パシフィコ横浜(横浜市)において開催された。合同開催となった今回は,「緩和医療とサイコオンコロジーの原点 患者家族と歩む」をテーマに,両学会の完全混成プログラムとなった。両学会とも演題数が年々増加しており,医師,看護師,臨床心理士,ソーシャルワーカーなど多職種の熱気ある議論がみられた。本紙では会長講演と,ワークショップ「ギアチェンジ:治療・延命目的から症状緩和中心の治療・ケアへと移行する時」の模様を報告する。


死亡退院の7割は 発見時のステージIII,IV

 会長講演「346名の軌跡」では,2001-02年の1年間に,国立がんセンター中央病院にて死亡した346人の患者の紹介から死亡までの経過が解析された。死亡退院した346名の平均年齢は59歳と若く,中でも注目されるのは「死亡患者の7割は発見時すでにIII,IV期に進行している」という事実だ。垣添氏はがん検診の重要性を繰り返し強調。がん死を減らすため,がん検査の課題として(1)受診率60%以上(現状では15-20%),(2)精度管理の2点をあげた。

 また,同調査における終末期医療に関しては,終末期患者の65%に緩和医療チームが介入し,呼吸困難と疼痛が重要な治療項目であった。末期療養生活におけるニーズ調査結果も紹介し,緩和医療・サイコオンコロジーへの期待を語り,講演を閉じた。

多職種で関わるギアチェンジ

 積極的治療から症状緩和中心の治療へと移行せざるを得ない場合,患者や家族は「見捨てられた」という思いが生じやすく,医療者の関わり方も難しい。ワークショップ「ギアチェンジ:治療・延命目的から症状緩和中心の治療・ケアへと移行する時」(司会=静岡県立がんセンター・栗原幸江氏,国立がんセンター中央病院・梅澤志乃氏)では,こういった「ギアチェンジ」の時期における看護師・コメディカルスタッフの役割が議論された。

 がん看護専門看護師の千崎美登子氏(北里大東病院)は,「治療が病棟から外来・在宅へと移行する中,継続看護が重要な課題になる」と指摘し,現在進めている在宅ホスピスのシステム化(レスパイト入院,緊急時の受け入れ体制)を説明した。ソーシャルワーカーの立場から田村里子氏(東札幌病院)は,転院相談におけるギアチェンジの局面で「医療者に見放された」と感じる患者の苦悩を説明した。

 田尻寿子氏(静岡県立がんセンター)は,作業療法士の役割を説明。能動的作業から受動的作業に形を変えながらも,リハビリを続けて希望をつなげる,などの事例を報告した。Nessa Coyle氏(Memorial Sloan Kettering Cancer Center)は,多職種が患者と家族を交えて課題を検討する「家族ミーティング」を紹介。これまでの経過を説明し,「延命目的の治療が可能な限り行われたこと」「緩和ケアも同様に大切であること」を患者家族に確認し,今後の方針を話し合うプロセスを示した。

 会場からは医師・放射線技師からも課題が提示された。ギアチェンジにおいては,多職種がお互いの専門性を理解し,話し合うことが重要であると感じるディスカッションとなった。