医学界新聞

 

南裕子氏が日本人初のICN会長に

第23回国際看護師協会4年毎大会/台湾開催


 さる5月23-26日,国際看護師協会(ICN)第23回4年毎大会が「Nursing on the Move:Knowledge, Innovation and Vitality(歩みつづける看護:知識・革新・みなぎる力)」をテーマにChristine Hancock会長(英国)のもと,台湾の首都台北市で開催された。今回は,148の国と地域から4000名を超える参加者が一堂に会した。


知識の共有が看護を 革新する力に

 前日の開会式は3000名収容のホールで行われ,きらびやかな民族衣装に身を包む参加者も多く,場内は華やいだ雰囲気だった。中でも,ICN会長に立候補した南裕子氏(前・日本看護協会長/現・兵庫県立大副学長)を応援するために駆けつけた各都道府県看護協会の代表が,石川県看護協会提供の黄色い浴衣を揃って身につけ日本の勢いをアピール。対立候補のGinette Lemire Rodger氏を擁するカナダ陣営も,メープルリーフの小旗を打ち振り,大いに盛り上がっていた。

 翌日の大会はICNが「HIV/AIDS」対策に力を入れていることを象徴するかのように,国連のHIV/AIDS全権大使としてアフリカで活動するStephen Lewis氏による講演で幕を開けた。続くセッションやシンポジウムでは,「HIV/AIDS」をはじめ「国家間の看護師の移動」「災害支援」など,先進国と途上国とが手を携えて解決すべき課題が大きく取り扱われていたのが印象的であった。

 その一方で,「人的資源」「継続教育」などの演題発表では盛んな情報交換が行われ,国や地域が異なっても看護が直面する課題は共通していることをうかがわせた。ICNは,互いの知識を共有することが看護の発展を促進するとして,ウェブ上で公開される“Nursing Database”の開始を発表した(http://www.icn.ch/innovations/)。

日本からの発信に世界が注目

 同時期開催のICN会員協会代表者会議(the Council of National Representatives;CNR)では,23日の夕刻に新役員の改選結果が発表された。最後に61票対37票の大差で南氏が第25代会長に決まったと報告されると,会場の緊張は一気にほぐれ,笑顔と拍手が広がった。場内の拍手がひときわ大きくなったと見れば,対立候補であったRodger氏が南氏の席まで祝福に訪れるという感動の場面。南氏の隣では,1995年から1999年までICNの第2副会長を務めた片田範子氏(兵庫県立大)が微笑む姿も。壇上に並んだ副会長をはじめとする14名の新役員も誇らしげな笑顔をたたえていた。

 その夜に開催された日本看護協会主催のジャパンナイトパーティは,2007年に横浜で開催されるCNRおよびICN学術集会への参加を呼びかける場として設定されていたが,Hancock氏をはじめ各国の参加者も数多く駆けつけ,さながら南氏の当選祝賀会の様相を呈していた。

 翌日行われた記者会見の席で,南氏は重点課題として,ICNの従来路線を踏襲しつつ,「メンタルヘルス」「患者安全」「HIV/AIDS」「災害看護」をあげた。また,その前提として何よりも優先されるべきものとして「人的資源の確保」を強調。患者安全と看護師の労働環境という両側面から,看護師対患者比率を改善したいと抱負を語った。

 日本のみならず各国の看護師不足は深刻であり,国家間の看護師の移動はもはや止められない。しかし,それに伴い先進国へ就職する途上国の看護師の搾取や,出身国の看護師不足の拡大が国際的な問題となっている。ICNは“International Center on Nurse Migration”を設立するなど,看護サービスは製品の自由貿易と同じレベルで議論するべきではないという立場を明確に打ち出しており,日本-フィリピン間のFTA協定は注目を集めているようだ。

 閉会式に行われた会長交代のスピーチで,南氏は合言葉として「harmony(調和)」を掲げ,2007年に横浜で開催されるCNRおよびICN学術集会と,2009年に南アフリカのダーバンで開催される第24回ICN4年毎大会への参加を呼びかけた。

 日本の看護がこれから何を発信していくのか,世界の注目を浴びる4年間となりそうだ。


(ICN大会の模様については『看護学雑誌』9月号,南氏へのインタビューは同誌10月号に掲載予定です)