医学界新聞

 

安心して過ごせる地域作りに向け

アルツハイマー型認知症セミナー


 さる6月3日,東京都港区の六本木ヒルズにおいて,本間昭氏(都老人研)および平野美紀氏(都精神研)が座長を務め,アルツハイマー型認知症に関するセミナーが行われた。痴呆から認知症への呼称の変更と,認知症に対する理解と地域への取り組みが議論された。

認知症への理解と取り組み

 赤坂浩氏(厚労省)が,「痴呆」から「認知症」への名称変更に合わせ,認知症の周知と,認知症になっても安心して暮らせる地域社会の実現に向けた10か年計画について口演。

 続いて長谷川和夫氏(聖マリアンナ医大名誉教授)が登壇し,「認知症の基礎知識」を口演。認知症の有病率は,65歳以上の高齢者を5歳ごとに区切ると,倍々に増加する。このことから後期高齢者の人口増加にともない,今後,認知症患者が増加するのは必至と語った。

 また,軽度認識障害(Mild Cognitive Impairment : MCI)ケアの重要性を強調。MCIは正常と認知症の間にあり,MCI期のケアが認知症予防の1つの手掛かりになるのではないか。ただし「いつからMCIになるか」の判定は,日常生活の支障の項目を含むため容易ではないとも述べた。

 最後に荒井裕美子氏(長寿医療センター研)が,全国の20歳以上の一般生活者2000人以上を対象に行った,高齢社会に対する意識に関する研究を発表。

 結果,高齢者になることを不安に感じる人は全体の80%超(性別・年齢に特に有意な差は見られない),不安よりも希望が大きい人は8%程度と報告。また長生きすれば寝たきりや認知症など要介護状態になる,という認識が多数を占めた。現状では,要介護高齢者は約16%であり,「高齢者=要介護者」という認識の払拭が必要である。「認知症など疾患について正しい理解を促すこと,介護保険サービスの更なる充実など,安心して暮らせるシステムの構築が,“長生きしたい社会”の実現にむけて必要ではないか」と荒井氏は説いた。