医学界新聞

 

寄稿

海外44か国から1200名が参加
――第6回国際胃癌学会が盛会裡に開催

大谷 吉秀(慶應義塾大学専任講師・外科)


 第6回国際胃癌学会(International Gastric Cancer Congress:IGCC)が,北島政樹会長(慶應義塾大学医学部長・外科学教授)のもと,5月4-7日に,神奈川県のパシフィコ横浜で開催された。国際胃癌学会は,1995年3月に設立され,第1回が同年京都で,故西満正会長のもとで開催された。その後,ドイツ,韓国,米国,イタリアで2年ごとに開催されたが,2001年,ニューヨークでの理事会の席上,第6回学会を2005年に日本で開催することが決定された。

演者の約半数が海外から

 わが国では,悪性新生物による死亡が増え続けており,とくに胃癌が原因で年間約5万人が死亡していることから,胃癌の新しい治療法の開発や基礎研究の推進は国民福祉の面からもきわめて重要な位置を占める。歴史的にもわが国の胃癌の臨床や研究のレベルは,世界的に高い評価を受けてきたが,今回の国際胃癌学会には,44か国から約1200名の参加者を数え,800題を超える発表が行われた。約半数を海外演者が占めたため,すべてのセッションの座長は日本人と外国人が2人で務めた。英語で熱のこもった活発な討論が行われ,2日半の会期中は,真に質の高い国際学会の雰囲気であった。

 学会前日に開催された開会式では,歴代の会長経験者のみならず,高久史麿日本医学会会長をはじめ,日本医師会櫻井秀也副会長,関係各省庁,神奈川県,横浜市から来賓の方々が登壇し,祝辞が述べられた。

 学術プログラム初日の会長講演では,北島会長のライフワークである消化管の微小循環,虚血再灌流障害から始まり,教室でテーマとして取り組んで来た低侵襲外科手術,ロボット手術,ヘリコバクター・ピロリ,抗癌剤感受性試験,さらに最新の細胞免疫療法,化学放射線療法におよぶ幅広い内容が紹介され,講演終了後,満席の会場から惜しみない拍手が送られた。

迫力あるハイビジョンによる ライブ中継

 学会2日目には,会場と手術室をつないでライブ中継が行われた。午前中は藤田保健衛生大学手術室から,宇山一朗助教授による腹腔鏡下胃切除術のデモンストレーションが行われた。会場からの質問に対する落合正宏教授の巧みな回答が雰囲気を盛り上げた。午後には慶應義塾大学病院の手術室から,北川雄光講師,熊井浩一郎助教授らにより,センチネルリンパ節生検下の胃切除術のデモが行われた。胃癌手術におけるセンチネルリンパ節生検のハイビジョンによるライブ中継は世界で初めての試みであった。放射線科・杉野吉則助教授,病理・向井萬起男助教授からも厳粛な中にもユーモアのあるコメントが披露された。迫力のあるハイビジョン映像が大きなスクリーンに映され,海外のみならず国内の参加者からも感嘆の声が上がっていた。

早期胃癌に対するセンチネルリンパ節生検のハイビジョンによるライブ中継(慶應義塾大学病院と会場)。

 その他,一般口演145題,特別講演5題,招請講演6題,シンポジウム61題,ワークショップ23題,ビデオ39題,ポスターセッション532題の発表が行われた。

次回は2年後にブラジルで

 海外から来日した多くの参加者から,わが国の胃癌の診断治療に向けた熱意と先見性,実行力,さらには基礎研究における底力を実感したとの感想が聞かれた。次回は,2007年5月,サンパウロ大学外科Gama-Rodrigues教授の主催で,ブラジルで開催される予定である。

閉会式の席上,北島政樹教授にイタリアのEugenio Santro前会長(左)からメダルの継承が行われた。北島教授は今後2年間,国際胃癌学会会長を務める。右はJoaquim Gama-Rodrigues次期会長(ブラジル)。