医学界新聞

 

薬物治療に精通した外科医に

第49回日本リウマチ学会(JCR2005)開催


 さる4月17-20日,第49回日本リウマチ学会が西岡久寿樹会長(聖マリアンナ医大教授)のもと,パシフィコ横浜(横浜市)において開催された。リウマチ治療では近年,TNF-αなどの生物学的製剤の臨床的効果が検証されつつあり,今学会でも複数のシンポジウムでこれらの生物学的製剤の臨床効果が検証された。一方,そうした薬物治療の発展は,従来の外科的治療のあり方にも影響を与えつつある。本紙では,リウマチ手術適応の臨床的ガイドラインを議論したシンポジウムを取材した。


早期の手術が必要なケースも

 シンポジウム「リウマチ手術適応のガイドライン――いつどんな手術が必要」(座長=東女医大 井上和彦氏,東邦大 勝呂徹氏)では,部位別にリウマチの外科的治療のガイドラインを提唱した。

 徳橋泰明氏(日大)は頸椎について概説。頸椎病変は進行性であり,その重症度はリウマチ重症度に依存する。重症頸椎病変にまで進行するのは3分の1程度だが,重症化したものについての手術成績は不良であり,早期の手術が重要となると述べた。

 肩について述べた高岸憲二氏(群大)は,肩は膝・頸椎などに比べると患者からの要望も後回しになりがちで,手術となるケースそのものはさほど多くないと報告。ただし,非常に痛みが強い症例などでは人工骨頭置換術による除痛効果は高く,JOAスコアも高いものが見られたと述べた。また,高岸氏はリウマチの進行度がGradeIIまでであれば,人工関節を用いず,滑膜切除術で良好な成績をあげることができることも指摘。滑膜切除術は近年手術件数が減っているが,リウマチの進行状況や患者ニーズによっては選択肢となりうるとした。この点については肘について述べた西田圭一郎氏(岡山大)も同様に,GradeIIまでの患者に対する滑膜切除術,GradeIIIかつ高齢患者に対する人工骨頭置換術を推奨した。

トータルマネジメントの重要性

 一方,手指の手術適応について述べた水関隆也氏(広島県身障者リハセンター)は,「痛みがない症例では手術に踏み切らない」と述べ,患者のADL,QOLの向上を考慮した選択が必要であることを示唆した。

 ADL,QOLという観点からみた場合,もっとも焦点となるのが股関節,膝関節だろう。股関節の手術適応について述べた飯田寛和氏(関西医大)は「人工股関節の進歩に伴い,現在では股関節に他の手術が適応されることは皆無」と述べたうえで,強い疼痛,歩行障害などが生じた場合には早期の手術を検討すべきだと述べた。一方,膝関節について述べた山本純己氏(松山日赤)は,抗リウマチ薬の選択とタイミング,適切なリハビリテーション,ケアなどすべての要素を取り入れたトータルマネジメントの中で,手術を選択肢の1つとして捉える視点を強調。そのうえでなお関節破壊を生じ,ADL,QOL低下をきたした症例には人工膝関節が適応となるが,生物学的治療薬が発達し,リハビリテーション技法が進歩してきた現在,人工膝関節の適応もトータルマネジメントの中でその有用性を検討すべきものであると指摘した。

 薬物治療の重要性に関しては,前足部病変について述べた山本晴康氏(愛媛大)も強調。DMARDsを術後の再発予防に用いるなど,薬物を有効に活用した外科的治療のあり方が重要であると述べた。

 ディスカッションでは,勝呂氏が「例えば肘と肩は別個に議論できるものではない」と発言。部位別ではなくトータルで患者の生活をとらえ,手術適応を考える視点の必要性が確認された。また,山本氏が指摘した,薬物,リハビリなどとのトータルマネジメントの中で手術を捉える視点についても出席者は同意。「リウマチ外科医は薬にも精通せよ」を合い言葉に,シンポジウムは終了した。

■「明るい学会」――サイエンスランド

 今学会の目玉の1つがパシフィコ横浜の展示ホールに開かれた「サイエンスランド。広大な吹き抜けホールの中にパネルブースを設置,約700題の演題がここで発表された。同じホール内には各企業のプロモーションブースはもちろんのこと,患者会関連のブースも併設。各ブースには椅子とテーブルが用意され,ゆったりと議論を交わせるよう配慮されていた。明るいスペースでの議論は参加者の好評を博した。

西岡久寿樹氏(左),黒川清氏(右)
 サイエンスランドでのイベントで注目を集めたのが4月18日に行われた「特別対談 日本医学会は鎖国状況を打破できるか」。黒川清氏(日本学術会議会長)と学会長,西岡氏の議論は,まさに歯に衣着せぬ痛快さで,聴衆を魅了した。