医学界新聞

 

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2004年WONCA/AAFPに参加して
WONCAアジア大会日本開催に寄せて

伊藤かおる(亀田メディカルセンター家庭医診療科・シニアレジデント)


 昨年10月13-17日,われわれは当院の関係各科の協力のもと,岡田唯男部長とレジデント6名でアメリカ・フロリダ州のオーランドで開催されたWONCA/AAFPに参加しました。WONCAとはthe World Organization of National Colleges, Academies and Academic Associations of General Practitioners/Family Physicians(世界家庭医機構)の略です。

 WONCAの世界大会は3年に1度しか開催されず,今回の米国開催に合わせて,アメリカ家庭医学会(AAFP:American Academy of Family Physicians)の年次学術集会,北アメリカプライマリケア研究グループ(NAPCRG:North American Primary Care Research Group)の年次集会が同時開催されました。そのため今回のWONCA/AAFP/NAPCRGは歴史上最大の家庭医の集会になると言われていました。実際,医師だけで約7000人が世界78か国から集い,家族やスタッフなどもあわせると約2万人の参加者があったそうです。ちなみに一昨年に行われた日本の家庭医療学会の参加者は約400人でした。とはいえ,日本でも家庭医療学は昨今非常に盛り上がってきており,今年は初めてWONCAアジア大会が,日本の京都で開催されることになっています(詳細はMedical Informationを参照のこと)。

歴史上最大の家庭医の集会へ

 ホテルから専用のシャトルバスに乗って会場に到着。海外の学会に初参加のわれわれはとにかくその大きさに驚きと感動で,とりあえず記念撮影。ちなみにオプションのウエルカムパーティーはユニバーサルスタジオを夜間WONCA/AAFPで貸し切りにして行れました。

 もちろん学会内容も大変充実しており,発表や講演,ワークショップやレクチャーなど,そのプログラムも多彩で,そしてそのどれもがぜひ参加したいと思う内容で,どれに参加しようかと本当に迷ってしまいました。すべてのプログラムに参加することは体がいくつあっても足りないくらいなので,それぞれのプログラムに参加したレジデントからのコメントも交えて報告したいと思います。

「Family Doctors in Training」
 世界各国で実際に研修を行っているレジデントからの,自国の家庭医研修プログラムについての紹介や将来への展望についての発表が行われました。アメリカ,ポルトガルなどではすでに完成されたプログラムがあり,どうすればさらによいものにすることができるのかが問題となっているのに対し,ブラジルなどでは今まさにプログラムを作成しているところで,さまざまな困難に直面しているという点で,日本の現状によく似ていました。実際に家庭医研修を行っているレジデントの生の声を聞くことができ,世界には,同じ目的を持ったたくさんの仲間がいることを実感しました。

「Puzzling Physical Complaints:From Chaos to Care Plans」
 普段の診療で直面する「ずっと痛い。だるい」といった,われわれが診断に悩む症状を持った患者様にどのように対応するか,線維筋痛症・慢性疲労症候群・身体表現性障害・慢性疼痛症候群などの病気をどう診断し治療するかという内容で,実例を交えながら3時間みっちり講義が行われました。

 内容が盛りだくさんで,しかも英語での講義だったので理解するのに大変骨が折れましたが,非常に勉強になり明日からの診療に役立つ有意義なものでした。

 普段からわれわれが心がけていることですが,まず患者様の話をじっくり聞き,患者様が生活するうえでどのようなことに支障があり,そのことをどのように考えているかを理解することで,患者様との関係をつくっていくことがいかに大切であるかを改めて認識しました。

「Family Medicine in Japan」
 海外に比べ家庭医療学が一般化していないわが国において,家庭医療学の発展に何が必要なのかを話し合う場が設けられ,そこには日本人参加者が40人余りも集まっていました。前回のWONCAでは十数人だったことを考えると,家庭医療への関心は確実に高まっているように思います。若手医師を中心とした日本人参加者と数人の海外参加者が「卒前教育」「卒後教育」「臨床」「研究」をテーマに,それぞれの課題とその解決策について議論しました。さまざまな観点から意見が出されましたが,すべてのグループで共通していたことは,家庭医への認知(他科の医師を含めた医療関係者・一般市民)がまだ低いということ,そのためには家庭医専門医制度・家庭医専門研修プログラムが不可欠であるという点でした。この結果はKyoto WONCAで発表される予定だそうです。

「Family Medicine in Japan: Kameda Medical Center」
 以前亀田メディカルセンターに在職されていたMadelyn Pollock先生,貝塚幸子先生,田頭弘子先生のポスター発表もありました。Pollock先生が亀田にいらした時に見聞きした日米の医療システムの違いと日本における家庭医療学の変遷,日本の診療所や患者様の特徴,日本の医学教育の特色などを簡単にリストアップした内容に加え,亀田の家庭医診療科で今まで撮った診療風景や皆の集合写真などを「和風スクラップブック」をテーマに散りばめたものでした。

 発表を見た各国の参加者からは「日本はこうなっているのか」,「うちの国はこんな風にやっている」などと感想を述べられたり,日本の医療の歴史をさらに突っ込んで聞いてくる方がいたりと,多くの方の注目を集めました。

「京都で会いましょう」

 世界各国の家庭医や同じ夢を持つ仲間から多くのことを学ぶことができ,とても有意義な学会でした。先述したように,今年5月にはWONCAアジア大会が初めて日本で開催されることになっています。ぜひみなさんで,Kyoto WONCAに参加し学会を盛り上げましょう。