医学界新聞

 

チームで育てる新人ナース

がんばれノート
国立がんセンター東病院7A病棟

[第6回]はじめての夜勤
主な登場人物 ●大久保千智(新人ナース)
●末松あずさ(3年目ナース。大久保のプリセプター)


前回よりつづく

 右も左もわからない新人が悩みや不安を書き込み,プリセプターや先輩ナースたちがそれに答える「がんばれノート」。国立がんセンター東病院7A病棟では,数年前から,新人1人ひとりにそんなノートを配布し,ナースステーションに常備しています。

 当病棟では50人の患者様を準夜勤3人,深夜勤2人で看ていきます。新人には,これまでの成長をみて夜勤を任せられると判断した上で夜勤を組み込んでもらえるよう病棟師長に相談します。3回のトレーニング(1,2回目はプリセプターと,3回目はプリセプター以外の先輩と一緒)を終えて初めて,一人立ちです。大久保さんは初めての夜勤を通じて学んだことをノートに記入しました。その大久保さんの思いに対してみんながノートに記入することで,全スタッフが彼女を見守り,成長を認めていることを伝えてくれています。


今回の登場人物
大久保千智,末松あずさ,白幡友子(6年目),大塚和恵(4年目)。

5/8 ●白幡
 5月に入りGWも終わりました。がんばれノート初記入です。昨日の深夜はどうでしたか? 日勤とは違いたくさんの患者さんを看なければならないので,大変だったでしょう。緊張もかなりのものだったのではないかと思います。4月からこのノートを見ていると,大久保さんはいろんなことを感じ,たくさんのことを学んできているなと感じます。これからもまだまだたくさん感じること,学ぶこともあるので,どんどん吸収していってください。

5/9 ●大久保
 初めて夜勤を経験しました。日勤で申し送りを聞いたりして,夜勤さんがどのようなことをしているのか何となくイメージしていたけど,実際に働いてみて一度にたくさんの患者様を受け持つ大変さ,忙しさがよくわかりました。今までも少しは意識していたけれど,なるべく日勤でできることは日勤でするように心がけたいと思いました。患者様のことでも,「夜の痛みが強い」と日勤で情報を得ていても実際どんな痛みなのか,どのくらい眠れているのか想像できなかったけど夜の患者様を看てとても勉強になりました。これからは一日を通して患者様のことを考えていけるようになりたいです。

 夜勤は体力的にもつらいけど早く慣れて一人前になれるようにがんばります。

5/12 ●大塚
 今日は2回目の夜勤ですよね。……あいさつが遅れましたが,大塚です。よろしくお願いします。チームが違うので,日々の大久保さんの様子はよくわかりませんが,このノートを読ませてもらって,いろいろ考えていることや思っていることが伝わります。

 1か月と少し経ちましたが,毎日がんばってますね。時々疲れを癒していますか? 毎日の仕事でたくさん注意されて,嫌になることもあるかもしれません。でも,忘れないでください!どんなに厳しく教えられても,末松さんをはじめとする先輩方は,大久保さんをあたたかく見守っていることを。まだまだ学ぶことはたくさんあります。それは,この仕事を続ける限り,ずっとだと思います。お互い頑張りましょう。とりあえず,今日も夜勤Fight!

5/13 ●末松
 本日2回目の深夜勤務です。朝日が昇るのと同時に緊張も高まりつつあるのだと思います。大久保さんは焦りとかが表情に出ないけど,初25人を相手に気持ちもワサワサしているのでしょうね。

 自分の2年前はてんてこまいすぎて覚えていません。きっとものすごくフォローしてもらって,自分以上に先輩が手伝ってくださっていたと思うのですが,よくもまわせたものだと奇跡すら感じます。大久保さんもきっと心中ジタバタしていると思いますが,確実に成長しているし,側にいる私はそれを実感しているし,だからこそ,伝えたいこともでてくるし,(→そうすると口やかましくなってしまうし……(反省しています))1回1回の勤務でしっかりと学んでください。そして,寝る前にもう一度,明日はこうしてみよう,あれはまずかったかなと反省をして次につなげてください。

 夜勤をやると,あー,日勤で仕事をもらしたらすごく迷惑をかけるなぁとか,わかると思います。私の1年目はすごく仕事が中途半端でいつも本当に迷惑をかけていました。今でも雑な所が多々残っているので,丁寧で思いやりのある仕事をしなければならないと反省しています。自分の不十分なところがみえると,同時に周囲スタッフがいかにサポートしてくれているかがわかり,またスムーズかつ丁寧な仕事をするために他の人はどういう所を大切にしているか見えると思います。そういう技を盗んでいってください。それに気づくのは探求心や感性だと思います。がんばろう。

 今の目標:とにかく判断材料が身につく(知識が深まってくる)までは異常を異常だと判断して先輩に相談,報告すること!! 「こんなもんだろう」で流さないこと!!

白幡 深夜勤はかなりの緊張で臨んだと思われ,お疲れさまの意味でがんばれノートに初記入しました。同じチームで働いていますが,プリセプターほど近い関係ではないので日々の業務では大久保さんの気持ちを知る機会が少ないです。でもこのがんばれノートで大久保さんの素直な思いなどが伝わってきます。それに私たちが応えることで大久保さんがどんどんがんばれノートに記入していければいいなと思い記入しました。

大塚 入職して1か月,大久保さんのがんばりもさることながら,初プリセプターとしての役割を果たそうという末松さんの必死な思いも伝わってきていました。夜勤という重い責任を新人が背負う以上,指導も日々厳しくなります。大久保さんは疲れているところに厳しい指導をされて,辛いこともあったと思います。だからこそその厳しさの中には必ず愛情があることを伝えたかったのです。その愛情を感じつつ,これからも学び成長し続けてほしいと思いました。

次回につづく


病棟紹介
国立がんセンター東病院7A病棟は,病床数50床,上腹部外科・肝胆膵内科・内視鏡内科の領域を担当している。病床利用率は常に100%に近く,平日は毎日2-3件の手術,抗がん剤治療・放射線治療,腹部血管造影・生検・エタノール注入などが入る。終末期の患者に対する疼痛コントロールなど,新人にとっては右を見ても左を見ても,学生時代にかかわることがない治療・処置ばかりの現場である。

関連書籍紹介
『はじめてのプリセプター 新人とともに学ぶ12か月』(川島みどり,陣田泰子編集)
 本連載に登場するプリセプター,末松あずささんの新人時代のがんばれノートが収録。がんセンター東病院の新人教育が学べる,プリセプター,プリセプティ,看護管理者必携の一冊。