医学界新聞

 

インタビュー

「糖尿病患者へのエンパワーメント」
という理念が浸透してきたことを実感

石井均氏(天理よろづ相談所病院内分泌内科・栄養部部部長)に聞く


 近年,患者の「治したい」という意欲を引き出す「エンパワーメントアプローチ」に注目が集まっている。そのエンパワーメントの理念を,日本で先駆的に糖尿病治療に取り入れてきたのが石井均氏だ。昨年東京で好評を博したセミナーに続いて,来る3月に京都で糖尿病患者へのエンパワーメントアプローチに関するセミナーを行う石井氏に,今回のセミナーの抱負を聞いた。


――前回の東京でのセミナーには500人近くの参加者が集まりました。

石井 今までになく盛り上がった,大成功のセミナーだったと感じています。参加者の皆さんの何人かから,終了後メールをいただきましたが,「今まで参加したセミナーの中でも一番おもしろかった」といった声を聴くことができ,うれしかったですね。

――終了後も多くの問い合わせがありました。どのあたりが,参加者の関心を集めたと感じられていますか。

石井 1つには,私どもが進めている,糖尿病患者さんへのエンパワーメントという考え方,理念が一般の方にも浸透してきた,ということがあるでしょう。例えば10年ほど前なら,こういったセミナーに人が集まるということはなかったと思います。

 講演をしていただいた看護師,管理栄養士,理学療法士の方々の間で,患者さんと向き合う際の態度,方向性がかなり一致していたというのが私の実感で,そのことが安心感や信頼感を持って参加者の方に聞いていただけた大きな理由ではないでしょうか。

 また,前回のセミナーの大きな特徴の1つとして,事例検討のディスカッションに大きな時間を割いたということがありますが,これも,エンパワーメントの理念は理解できたが,具体的な援助にどう結びつけていけばよいのかわからない,という現場の看護師さんのニーズに応えたかったという思いがありました。それがある程度実現できたセミナーだったと考えています。

「実感」を持ち帰ってもらいたい

――今回も,事例検討に大きな時間をとっていますが,前回との違いはどのあたりにあるのでしょうか。

石井 今回は,より具体的,現場的な内容に触れていきたいと考えています。実際に患者さんとどのような言葉を交わすのかという,コミュニケーションの技術がメインテーマです。私の講演では,そうした技術に具体的に触れていきたいと思いますし,事例検討では,神奈川県の看護師お2人にお越しいただき,ロールプレイをやっていただきたいと考えています。

――事例検討に登場される桐生さんと米田さんは,どういった方なのでしょうか。

石井 彼女らはおもしろいですよ(笑)。神奈川の療養指導士会に講演に行った時に知り合ったのですが,彼女らはそこで「寸劇」をやっていたんです。患者役と看護師役にわかれて,ちゃんと衣装まで用意して,演技をやっていました。その時,私は単にコメンテーターとして呼ばれたのですが,あんまりおもしろかったので,私もそこに参加して,「医師役」として,実際にカウンセリングをやったんです。

 今回も,その時と同じように,彼女らに患者・看護師役をやってもらい,実際に私の行うカウンセリングを会場の皆さんに見ていただきたいと考えています。私のカウンセリングがお手本というわけではありませんが,方法論を頭で理解するだけではなく,実際の雰囲気,イメージをつかみとって,臨床に持ち帰っていただきたいという思いから,こういったプログラムを用意しました。

――先生が実際にどのように診療,エンパワーメントを行っておられるか,ということを体験できるということですね。