医学界新聞

 

第9回慶應医学賞授賞式開催

受賞者はカリフォルニア大Tsien氏


 さる11月29日に,第9回慶應医学賞授賞式が,東京都新宿区の慶應義塾大学医学部北里講堂において開催された。同賞は故坂口光洋氏の寄付により設立された慶應義塾医学振興基金によって,医学・生命科学の領域において世界的な業績をあげた研究者に授与されている。

 今年度の受賞者は「生きた細胞内のシグナル伝達の可視化と計測技術の開発」というテーマで,Roger Y. Tsien氏(カリフォルニア大)に決定した。生きた細胞内での分子の動態や相互作用を解析することは,細胞生理学や疾患研究において必須となっている。氏は細胞内のカルシウムイオンの動態を可視化できる「Fura-2」をはじめ,細胞内分子の可視化と定量化を可能にする数々の独創的なレポーター分子を設計し,その成果は多くの研究者に恩恵を与えている。

 受賞記念講演では,これまでの研究を概説するとともに「こうしたレポーター分子をデザインし,合成することは生物学において大きなインパクトとなる」と指摘。そのためには今後さらに生物学と化学の統合,また解析に用いる測定機器の開発など,多分野での密接な連携を推進していく必要があるとし,「主要な生化学シグナルのほとんどは,近いうちに生きた細胞内で視覚化されるようになるだろう」と今後の研究への期待を語った。