医学界新聞

 

小児臨床試験の課題を議論

第31回日本小児臨床薬理学会の話題から


 9月17日に開催されたシンポジウム「小児臨床試験:インフラ整備の建前から本音まで」(座長=大阪府立母子保健総合医療センター・藤村正哲氏,東女医大・林北見氏)では,成人に比べ対応が遅れている小児の臨床試験に携わる,さまざまな立場の演者が口演した。

被験者である小児にも説明を

 柳原恵子氏(大阪府立母子保健総合医療センター)は医師の立場から,臨床試験に対する医師の関心の低さを指摘。小児科医に対するアンケート結果でも,「忙しい臨床医が片手間にできる仕事ではない」という声が多く,人材の確保や臨床試験支援室の整備が課題であるとした。

 治験コーディネーターとして被験者とかかわる清水裕子氏(国立成育医療センター)は,小児での臨床試験が困難な理由の1つである同意取得の問題について,「法的には保護者の同意があればよいが,実際には祖父母や学校など,子どもを取り巻く環境すべての理解が必要」と指摘。また,子どもの理解力で治験参加の意思決定をすることは難しいが,理解可能な範囲で子どもが考えたうえで治験に参加できるように“インフォームドアセント”の必要性を強調した。

ガイドラインの整備が課題

 秋山裕一氏(日本製薬工業協会)は,製薬企業に対して小児臨床試験に関するアンケート調査を実施。試験デザインが立案しやすいよう,ガイドラインや成人・海外データとの比較方法の確立が望まれていることを紹介し,さらに積極的な小児臨床試験の推進には,小児臨床試験実施予定医薬品の早期承認や薬価の引き上げなど,公正に企業利益の確保につながるものが必要であると述べた。

 牧本敦氏(国立がんセンター中央病院)は小児がんデータセンターでの取り組みを報告。治療方針に対する適正な「エンドポイント=評価項目」を設定し,正確なデータに基づいて正確に評価することが重要であると指摘し,データセンターの意義として「プロトコールの科学性確保」,「データの収集,管理,統計考察など専門知識の提供」をあげた。

 シンポジウムの最後には,世界的な小児臨床薬理学者であるジョン・バンデンアンカー氏(ジョージワシントン大)が登壇,小児臨床試験のためには小児薬理学研究のネットワーク,倫理ガイドラインづくりといった国家的基盤の整備が必要であると強調した。