【印象記】
第9回日本難病看護学会の話題から
石井英子(藤田保健衛生大学・衛生学部教授)さる8月27-28日,第9回日本難病看護学会が渋谷優子会長(藤田保衛大)のもと,愛知県の「ウィルあいち」において開催されました。「難病者の社会参加を支えるケア」をテーマとした今回は,一般演題からは52題の発表があり,ALSによる人工呼吸器装着者を含む療養者13名,のべ500人の学術集会となりました。このたび,開催を担当した事務局の立場から,今回の学術集会を振り返ってみたいと思います。
難病患者の生活支援をめざして

また,ALS患者や市民の参加をねらいとした「尊厳ある新たな生活構築とその支援」の公開シンポジウムも開催されました。
藤本栄氏(日本ALS協会愛知県支部長)は,37歳でALSと診断され43歳の現在に至るまで,難病患者の介護支援事業所の社長として,24時間365日の援助体制の整備に取り組まれています。壇上では,顔面の頬にあるわずか3mmの筋肉から発信するオートナビと文字盤を自由に操作して,地域ケアネットワークを構築した実生活を紹介しました。
続いて愛知県内で先駆的に人工呼吸器装着者の訪問看護を実施している当間麻子氏(偕行会訪問看護ステーション)は,訪問看護指導対象だったALS患者13名の事例について報告しました。
小倉千恵子氏(名古屋市熱田保健所)は,2003年に施行された支援費制度の導入によって,患者の在宅療養に対する意思決定にどのような効果がみられたか,さらに医師の立場から村上信之氏(刈谷総合病院)はALS患者のターミナルケア期における看護の要点として,特にコミュニケーションの工夫,地域連携をいかに上手に生かせるかが課題となってくるだろう,と強調しました。
最後に登壇した結城美智子氏(厚労省)は,難病対策要綱の策定から30年,人工呼吸器装着患者の受け入れ病院の確保と在宅療養における適切な支援が課題となっていることを述べました。氏はより安定した療養生活の確保と難病患者の家族を含めたQOLの向上に寄与できるのは,看護師だけでなく難病患者とかかわるすべての人の協力が必要であることを強調しました。
患者も積極的に参加した学術集会
これまで日本難病看護学会は,わが国の難病看護対策を先駆的に実践し,難病者の自立とQOL向上のための実践研究や学術理論を構築してきました。今回の学術集会においては,愛知県行政担当理事,名古屋市健康部長にも参加していただき,愛知県看護協会との共催など,民と官の一体化と,難病患者会との共生を実現することができました。また,学会ロビーでは患者同士のアイ・コンタクトや文字盤による会話に花が咲き,交流会でも笑顔があふれていました。患者さんの側から,心と心をつなげることの大切さを看護職者側にエンパワメントさせる学会でした。
今回の学術集会を担当して,「難病患者の尊厳ある新たな生活構築とその支援を具体化する」という学術集会の目的を達成できたのではないかと実感しています。皆で再会を約束し,大きく手をふり笑顔で解散した情景が印象的でした。最後に,学会運営に協力してくれた衛生看護学科のすべての先生方と学生ボランティアの皆さんに御礼申し上げます。