医学界新聞

 

心臓リハを取り上げた基調講演

第3回日本リハビリテーション看護学会開催


 第3回日本リハビリテーション看護学会学術大会が10月2日,守山伸子会長(鶴巻温泉病院)のもと,グリーンホール相模大野(相模原市)にて開催された。今回はメインテーマを「リハビリテーション看護のSpecialityの確立を求めて」として,基調講演では近年取り組みが進んできた循環器疾患に対するリハビリテーションが取り上げられた。また,公開講座ではフリーアナウンサーの玉置宏氏が「心のリハビリテーション」と題して講演し,軽妙な語り口で会場に詰めかけた大勢の市民を魅了した。


欧米に比べ遅れた日本の心臓リハビリテーション

 欧米では,心疾患の治療に際し安静臥床が勧められた時代を経て,1949年に長期臥床がかえって有害であることが確認され,52年には心臓リハビリテーションが初めて実践された。

 一方の日本は循環器リハビリテーションの確立が遅れた。78年に心臓リハビリテーション研究会が発足したあと,保険給付の対象として認められたのは98年(現在算定できるのは,急性心筋梗塞,狭心症または開心術後の患者であって医師が個別に心疾患リハビリテーションが必要であると認められる者)。対応できる施設もまだ少ない。しかし,今年度からは施設基準が一部緩和され,さる6月の日本リハビリテーション学会では心臓リハビリテーションを題材としたパネルディスカッションが企画されるなど,近年認識が高まってきた領域だ。

 基調講演「循環器疾患とリハビリテーション」では,松尾史朗氏(鶴巻温泉病院)が登壇。こうした経過を概説したうえで,循環器の中でも特に心臓のリハビリテーションに関して,対象疾患やその効果,循環器疾患を合併した脳血管障害の患者へのアプローチなどを説明した。

 なぜ日本で心臓リハビリテーションが普及していないのかに関して,氏は診療報酬算定に必要となる施設基準の厳しさをあげた。現行では緊急の手術や検査を行える体制が求められており,「それは心臓リハビリテーションに対して“危険な治療”という認識があるから」と指摘。急性期病院の在院日数が短縮化する中で,慢性期病院が循環器リハビリテーションに対応していかなければならないという点でも,この施設基準が現状に即していないとの考えを示した。

有効性と安全性は確立
あとは医療者の意識改革

 その後は,心筋梗塞後の運動療法を例に心臓リハビリテーションの実際を紹介した。また,科学的に確認されている効果として運動耐容能の改善や冠状動脈病変の進展抑制などをあげ,海外の研究成果も示しつつ「運動療法は心筋梗塞の治療においてステント療法に決して劣るものではないことを覚えておいてほしい」と訴えた。また,運動療法禁忌の状態を提示して「これ以外は運動療法の対象と考えてほしい」と述べ,適切な監視下での運動療法は安全性が高いことを強調した。最後に,「心臓リハビリテーション,あるいは循環器疾患を合併した脳血管障害の患者さんへのリハビリテーションを妨げている最大の要因は,1930年代から続く医療者の漠然とした思い込み」と語り,関係者の意識改革を求めて講演を終えた。