医学界新聞

 

看護職の「副」のポストに焦点

第8回日本看護管理学会開催


 第8回日本看護管理学会が中西睦子大会長(国際医療福祉大)のもと,さる8月20-21日に宇都宮市の栃木県総合文化センターにて開催された。「しくみを変える知識を築く――副というポストの働きに焦点をおいて」をメインテーマにした今回は,シンポジウム「組織の決定と看護職」やディベート「看護職の副院長は定着するか」が企画された。また,啓発ドラマ「ザ・ネゴシエーション」では,看護部長が病院幹部に外来化学療法室の必要性を説くという設定で芝居が行われ,看護部長の軽妙かつ説得力のある話術に,会場の参加者たちが聞き入った。

 このほか,総会では学会事務センター破産に伴う対応が協議され,財政立て直しのための緊急策が練られた。


学会事務センター破産で波紋

 文科省所管の(財)日本学会事務センターが学会からの預かり金を不正流用していた問題で,東京地裁は8月17日,同センターに対して破産を宣告した。同日,学会関係者への説明会が開かれ,預かり金約16億円が返済困難であるとの見通しが明らかになった。約270の学会が同センターに業務委託しており,波紋が広がっている。

 日本看護管理学会では,21日の総会でこの問題への対応を協議。学会事務センター破産の経過を説明するとともに,学会予算の6割を占める900万円近くの預かり金があったことを報告した。財政の立て直しが急務となったため,債権回収不能額を盛り込んだ補正予算案を提示。旅費等の節約や学会誌の販売促進に努めるほか,会員に寄付を呼びかけて欠損金額を補てんすることで承認された。

 また,「(看護管理学会は)任意団体で法人団体ではないといえ,理事会の道義的な責任は免れるわけではない」(井部俊子理事長)として,学会事務センターに委託していた業務を看護管理学会の事務局が請け負うことによる新たな経費(約150万円)については,役員の寄付で補てんすることが明らかにされた。

 このほか,医療系では60近くの学会・研究会が学会事務センターに業務委託しているとみられ,会費納入や会誌の発行にも支障が出ており,対応に追われている。今後は,学会事務センターならびに所管の文科省に対し,法的措置を含めた責任の追及を求める声があがっている。

看護職副院長は定着するか

 本学会恒例のディベートは,「看護職の副院長は定着するか」をテーマに,河野順子氏(大田原赤十字病院),佐藤紀子氏(東京女子医大)の司会のもとで行われた。

 看護職の副院長が最初に誕生したのが1987年。現在は全国で50人程度の看護師が副院長として活躍しているが,病院数に占める割合ではわずかに過ぎないのが現状だ。本ディベートでは,看護職副院長の経験者や,医師以外の立場で副院長体験を持つPT・OT,看護大学の教員が演者となり,肯定側・否定側に分かれて論じ合った。なお,ディベートは議論内容・根拠に対する議論であり,肯定・否定の役割を与えられた演者の発言は本当の自分の意思に反する場合もある。

 肯定側(町田市民病院 山嵜絆氏,NPO法人夢の湖舎 藤原茂氏,東大 菅田勝也氏)は,看護職副院長が中心となってクリニカルパスの導入や病床利用率の向上などの実績を残してきた例を示し,患者主体の多職種によるチーム医療に変化する中では看護職の副院長が最適であると主張した。一方,否定側(関西労災病院 大森綏子氏,ボバース記念病院 大橋知行氏,自治医大成田伸氏)は,看護職副院長が退職した場合,後任が医師に戻るケースをあげるなどして,人材育成の立ち遅れを強調。また,「組織のために看護職をきることができるのか」と,看護職が副院長となった場合に労使関係の緊張を伴うことを指摘した。

 判定は会場の参加者全員で行われ,407対227で肯定側の勝利。司会の河野氏は「否定側の数字227を無視してはいけない」として,看護職が副院長職として定着するために看護管理者の自助努力を求めつつ,ディベートを閉じた。